奈良県は橿原神宮前に、

ニュー喫茶ポルカドット

という名店がありまして、そこは面白い人たちが集まる橿原のアンテナ基地と言える面白い場所なのです。今はたくさんの飲食店を経営する《Pグループ》の第一号店として誕生しました。

　僕が最初にここを訪れたのは2008年で、8年間の東京生活を終え、2007年に奈良に戻って翌年の事だった。赤目自然農塾という所に行って自然農を学んだり、この頃は仕事をしてなかったので、春に出した自身のアルバム《まほろば》の《まほろば発売記念全国ツアー》と銘打って、ライブ活動をしていたりした。お金にはほとんどならなかったけど、ストレスなく過ごせてたので幸福度は高かったと言えるでしょうか（当社比較）。
　多分ポルカドットが出来てから2年、という頃で、ちょうど現店長のタコちゃんがここで働き出した頃だったんじゃないかと思う。

　そして僕の誕生日でもある2008年4月26日に、お店の18回目のライブイベントとしてライブをさせてもらったのでした。その頃知り合ったシタール奏者のVeena Ayakaちゃんと、パーカッション奏者の山浦庸平くんと一緒だった。

　あれから15年が経ち、未だにこのお店でイベントをさせてもらったり、休業日にタコちゃん含め明日香村の仲間たちと河内音頭、江州音頭を中心にしたフリーセッションバンド、もしくはアヴァンギャルドおもしろ即興バンド《あすか一座》で音遊びをしたり、毎年年末には同じく明日香村の愉快な仲間たちで《大感謝祭》という、年々面白さのボルテージが上がって来ている貸し切りパーティーをしたり、本当にお世話になってる場所なのだ。
　今やイベントをさせてもらってる、と言う感覚は無くなりつつあり、お店との距離感は縮まり、一緒になって楽しんでるという感じ。もはや家族のような、気を使わない関係性。こんなお店は他に無い。それも店長のタコちゃんあっての事だと思う。

タコちゃんは、なんだか不思議な雰囲気の人だ。

　ギター弾きでもあり、ミュージシャン特有の雰囲気を纏っている。シャイで、もの静かだけれど、自分の好きなものをちゃんと知っている、そんな感じの人だ。ルックスはまるで若き日の細野晴臣で、まさにミュージシャンのやってる喫茶店という感じ。そしてタコちゃんはとにかくノリが良い。僕や仲間が面白い事を思いつくと、すぐに『いいっすね！それやりましょ！』と言ってくれる。なんと軽いフットワーク。いつもあまりに早い返しだから、もしやなんにも考えてないのか？と、逆にこっちが不安になる程だ。いや、たぶん実際に考えてないのだろう。きっとお店としての儲けの心配などもあるだろうが、それより彼の中では楽しいか楽しくないか、なのだろうと思う。なにより僕らを信頼してくれてるのもありがたい。

　そしてこの2023年から、Pグループの社員であり店長だったそのタコちゃんが、思いもしない展開でお店を譲り受け、会社から独立して本当に自分の店にしてしまった。そしてこの2月からついに店主、オーナーとしてリニューアルオープンしたという訳なのだ。

　そんなタイミングで、僕はお店でラジオ番組をしたい！とやりたい事を思いついたところ、タコちゃんや仲間もすぐに『それやろう！』と言ってくれ、あっと言う間にすぐに実現してしまった。

　という訳で、新たな試みとして、月一ぐらいでお店でいい音楽をお届けする、《Polkadot RADIO》をはじめた。お店の通常営業中に日曜の午後から良質の音楽をかけトークをする、電波には乗らない、ここでしか聴けないラジオ。それがPolkadot RADIO。

　つい先日その第一回放送をしたが、これがやっぱり楽しかった。自分で音楽をかけながら喋る訳だから、なかなか忙しいし難しいのだけど、細かい改善点はさておき、楽しいの一言だった。

思いついた事に忠実に、わくわくに正直に、とにかくやってみよう。が、最近の僕のモットーだ。

　人間損得勘定で動くと、ろくな事はない。何十年も音楽をやってきて、それは実感しているし、僕は音楽で儲からないという、ある意味あきらめの境地に立ったのだ。

　その昔、数々の著書を出されている、今は亡き臨済宗の僧侶、松原泰道さんの《南無の会》の仏教の勉強会に参加したことがある。
そこで師は、

『諦めるとは、ものごとを明らかにする、という事なのです』

と仰っていた。だから何も怖いものはない。明らかにしたら、後先考えず思いついたら即行動。それしかない。結果がどうあれ今を楽しむだけなのだ。公共のFM局なんかでラジオ番組を持ちたい、という夢も無くは無いが、とにかく今やりたいから、待っていてもしょうがない。今の環境の中で出来る事をするしかないのだ。

と言う訳で、新しいこと始めました。

ニュー喫茶ポルカドット、Polkadot RADIOをどうぞよろしくお願い致します。
ぺこり。