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軒下猫とわたし

 結構、猫とのことをネタにしているわたしですが、本当は猫好きは、わたしというより、わたしの姉のほうです。
 軒下猫はもともと、わが家の隣の実家の2世帯住宅に住む(ややこしい)姉が、面倒を見ていた猫でした。はじめてわが家の軒下に現れたとき、まだ少女のような猫でした。
 ふわふわしたハテナ型のしっぽ、ゴージャスなマフラー、愛嬌のある顔つき。
 ヤドカリやタケノコをさえこわがる、警戒心の強い子どもたちも、はじめは窓の内側から、慣れてくると縁側に出て、軒下猫と遊ぶように。


 しばらくして、姉が、
 その猫、他の猫と喧嘩して、餌が食べられなくなってるから、
 雲子のところでしばらく餌をやってくれない?
と、大きなキャットフードの袋を持ってきました。
 それで、軒下猫に、軒下で、はじめてキャットフードをやりました。
 軒下猫は、毎日何度も、軒下にあらわれるようになりました。
 しばらくすると、そのキャットフードがなくなりました。わが家の残り物をあげてみたりしたけれど、軒下猫は半野良なのに好き嫌いが多くて、そんなのは食べたくないと言うので、いつ、実家に帰ってくれるんだろう?と思いつつも新しいキャットフードを買ってきて、食べさせておりました。

 そんな日が続いたある日、キャットフードを切らしてしまいました。悪気のない軒下猫は、かわいい顔をして、軒下に来て、
 餌をくれ~ 餌をくれ~ 餌をくれ~ 餌をくれ~ 餌をくれ~
と言います。
 その頃にはもう、姉と軒下猫の術中にはまってしまっていたわたしは、(どうしよう……キャットフードがないのに、軒下猫がお腹をすかしてる!)
と、自分の飼い猫でもないのに、外にはいくらでも餌となる昆虫や小動物がいそうな田舎に住んでいるのに、何か、軒下猫に与えられる餌はないか、と、台所を探しました。
 鰹節がありました。とりあえずお皿に入れてやりました。軒下猫はとてもとても喜んで、鰹節を食べました。それからの軒下猫は、キャットフードに必ず、鰹節を添えることを要求するようになりました。
 その後、鰹節に飽きたら、出汁を取った後の柔らかくなった煮干し、豚肉の切れ端の茹でたもの、海苔、……などなど、次々に添え物を替えることを要求するようになりました。

 何年かして、軒下猫は赤ちゃん猫を4匹産みました。
 ノラ猫の子育ては、人間にとっては見るに耐えないような、noteに書くと読んだ人が間違いなく不快になるような、(子猫に対して・獲物に対して)厳しく、おそろしいものです。軒下猫はそれをわが家の縁側でやり始め、耐えがたく思ったわたしは、願わくばどこかよそでやってほしいと思い、よく、掃除機をかけました。(軒下猫は掃除機の音がこわいので、一時的に退散してくれたりしました。)
 とりあえず、うち3匹が生き残り、”この3匹も今後どうなるか分からない”と、情が湧くのをおそれた、とある少年が、名前の代わりに、子猫たちの生まれ月と、大きさ順に、4-1、4-2、4-3という非情な呼び番号をつけました。


おっと、
うちのおばあさんが、玄関のほうから呼んでいる!
その後の話は、また今度。
noteを書いているのは、わたしの秘密なので。


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