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ブラックニッカのアルコール

 思いついたので何となく書きました。2時間クオリティです。   ウィスキーを一口飲んだ。度数37パーセントのブラックニッカだ。喉元をすぎるとすぐむせた。久々に飲んだから、喉がびっくりしたのだ。鼻を炙るようなアルコールの匂いが、私の頭をくらませる。一瞬で、アルコールが頭に回って、わずかに平衡感覚が損なわれた。右手で頭を抱えた。顔をしかめているのがよくわかる。けれども、悪い気はしない。むしろ快いくらいだ。ソー・グッドだ。息を吐くと、アルコールの匂いが漂った。ああ、いい気分だぞ。

    • こんな人に私はなりたい

       町の一隅、それも街はずれの、田園が1キロ弱の場所に見えるような郊外ではなく、ガラスが藍色に泥んでいるようなビル街、大通り沿いのビル街のビルの足元の、日陰になった窪みのところにうずくまり、そこの湿ったような染みと一緒になる。私はそこでみすぼらしく、二日前に握りつぶされたビニール包装みたいな見てくれをして、日なたをよい姿勢で歩くビジネスパーソンを、縊られたニワトリのような目で眺めている。私はかれらを嫌ったりはしないし、嫌悪感も、憎悪感も、羨望も敵意も向けたりしない。ただ、表の世

      • 猫のいる町

        まえがき  潜っているゼミの課題です。あんまり気に入ってはいなかったけれども、思ったより好評でびっくり。  路地裏から猫が出てきた。真っ黒い、大きな金の瞳の猫だ。猫を見たのは久々だった。どれ撫でてみようかと思って近づいたが、僕を避けるように遠ざかっていったので触るのを諦めたのだが、僕は猫の体を見て唖然としてしまった。ビルの角から現れたのは尻尾ではなくまたしても胴体だった。そして後肢が現れ胴体が続き、それが何十回も繰り返された。そして全身が路地裏から出たころには、先頭はもう先

        • まえがき  結構な駄作の自信があります。どうしてこうなった。  私は嚙み砕かれ、血をまき散らして死んだ池原を前にして立ち竦んでいた。想定外も想定外で、ほんの僅か違えば池原ではなく私がこのようになっていたという事実に圧倒され、その可能性が頭に浮かんで離れず、足元のバラバラに砕かれた死体を見ているといつまでも私が池原のかわりに死ぬ画が浮かび続けるのにもかかわらず、私は目を血の海と池原だったものから目を離せないでいた。  逃れようと足を引こうとするとぬるぬるする液体が靴の裏で滑り

        ブラックニッカのアルコール

          事件(井上陽水)

          まえがき  井上陽水「事件」をそのまま小説にしてみました。オリジナリティに欠けててごめんね。  代表理事の元横綱轟こと久山信之をはじめ、元大関宝竜こと山口蓮司ら理事会の3名が、あの花道で起った事件の騒然とした空気の覚めやらぬままで興奮していた報道陣の前に姿を現した。3名は設けられた会見席の後ろに立ち、わきたつフラッシュを受け仏頂面で立っていた。そして彼らが座り、進行役が緊張した様子で始めた。彼は若くて、スーツが不釣り合いに角張っていた。 「えー、では初場所で発生しました事件

          事件(井上陽水)

          自己嫌悪

          まえがき  井上陽水の「自己嫌悪」から。 めくらの男は静かに見てる 自分の似顔絵 描いてもらって (井上陽水『自己嫌悪』) 1  皺の目立つ女性に付き添われ、若いようで、その実若さをもう失う寸前である男が、ショッピングモールの吹き抜けの2階の渡り廊下の中ほどで、女性に正対して座っている。男は赤と緑と黄色、青の布が幾何学模様に縫い合わされている派手な服を着て、もじゃもじゃした髪型をしている。隣の女性は臙脂色のカーディガンに黒いパンツを身につけ、銀縁の眼鏡をかけている。その

          自己嫌悪

          夕方の爆弾

          まえがき  未校正です。たぶんめちゃくちゃ粗い。  ハヤシライスを夕飯に作ろうとしたものの、マッシュルームが家にないことに気がついたので、七穂がマッシュルームを買いに行った。すると部屋はしんとして、彼が玉ねぎを切る凡庸な音だけが転がるようになった。西日がいい具合に照っていて、カメラワーク次第ではとてもよい映像になるような予感。だけれどもこの日当たりのよさに彼はもう慣れきっていて、いちいち心を揺さぶられることはない。晴れならば毎日巡りあうのに、どうして毎度毎度感動する必要があ

          夕方の爆弾

          縛り首

          まえがき  1万2000字くらいあると思っていたら9000字弱でした。あれ?  4度首吊り自殺に失敗した俺の部屋の窓ぎわに、ある朝、首を括った男の幽霊がいた。カーテンは閉め切られずに10センチ程度空いていて、朝日の輝きがまぶしかった。幽霊は逆光で、容姿ははっきりつかめなかったが、わりあい体格が良かった。身長はそれなりに高いようだったが、寝起きの俺には幽霊の身長を実際よりも高く感じていた。男は吊られたままだったからだ。  幽霊に気づくと俺は一気呵成にはね起きた。寝ぼけ眼は完璧

          事件

          まえがき  書き直しで文章が足されるかもしれません。  午前10時48分、彼の妻が泥棒に、玄関脇に置いてあった金属バットで殴りかかり、それに恐怖した泥棒が護身用に具備していたバールのようなものを振りぬいて妻の頭を強烈に一撃し頭蓋骨を砕き、脳漿を飛び散らせたまさにそのとき、彼は外回りの1件目を辞去するための挨拶をしていたのだった。彼は事業所の担当者と親密な雰囲気を醸すため、一週間前に妻の妊娠が発覚したことを伝えた。担当者は言った、 「そうか、おめでたい! それじゃあ君はこれか

          タンク出現

           そのうち書き直すかもしれない。  朝新聞を取りに行こうとして玄関のドアを押しても何かにぶつかって開かなかったので、庭から回って行くことにしたが、表に出た途端僕は言葉を失って、新聞のことなど吹き飛んでしまった。にわかには信じ難く、一旦庭に戻って伸びをし、塀に沿って咲いている朝顔を眺めた。よく咲いている。鮮やかな紫だ。涼しい朝風にあたってゆらゆら揺れ、蔦と葉がこすれ合ってよい音を立てていた。僕の家の庭だ。そして、サンダル履きの足に背の低い芝が刺さる。夢じゃない、嘘でもない。も

          タンク出現

          昨日

           まえがき 去年の夏くらいにダーッて短時間で、思いつきで書いたやつです。  レジの前に、か細いしなやかな笹が立てられていて、短冊が吊るされている。それを見て初めて、昨日は七夕だったことを思いだした。家と職場を往復しただけで一日が過ぎてしまっていたから気づかなかった。そもそも、七夕だったところで、七月七日はただの平日なのだから、その日が特別になるものでもない。それに加えて、突然の思いつきで、何となしにコンビニに来たりしなければ、私は七夕のことをすっかり忘れて一日一日をものす

          かぶと虫

          まえがき  3年ちょっと前に初めて学校の授業以外で完成させた小説が発掘されたので投稿します。 「まったく、何ともつまらない話だと思わんかね、どれだけ図体が大きいだの、角が反り立っていて立派だというのは。あいつら、この羽の艶の美しさがわかっちゃいないよ。悲しい限りだね、最近の若いのは」  豪奢なタキシードのかぶと虫は言った。丸々と太った体を揺らしながら椅子にもたれているせいで、椅子の背もたれがミチミチと軋んでいる。しかし気にする様子はない。ただ、若いかぶと虫たちへの愚痴を恥

          かぶと虫