見出し画像

自由詩「落ち葉の会話」

「ねえ、あなた何処から来たの」

「私は、風に舞いながら果てしも無い野原から」

「私はね、水の面を漂って川岸の葦に引っ掛かった所
 強い風に吹き上げられてよ」

「何処に、行くかは風まかせね」

「そう、そして何時か干からびて空中分散して無くなるのよ」


「私達が新芽を出した頃、美しい日だった。
美男のアポロン様のキスで伸び伸びと体を広げた穏やかな朝」

「そう、空は青く冷たく澄んだ川は流れ、私達は空中で揺れていたわ」

「川面に映った自分の姿のしなやかさにウットリ」

「微風の、メロディーに合わせて歌を唄ったわ」

「蝶たちが空中に舞い、恋の道行きに身体を任せて愛の囁きを交わして」


「月夜には、銀色の光の中の影で葉擦れの会話を交わして、フフフ」

「精霊たちは蜘蛛がかけた糸でブランコしたり滑り降りたり、
蜘蛛をからかったりして」

「そうそう、ハンサムな若者がフルートを吹いて優しい曲を聴かせてくれたわ」

「私達、メロディーに身体をゆだねて微風に恋をした」

「私は、感極まって夜露に借りた涙を流したわ」

「嗚呼、私達も直に枯れるのね~。」

「風に吹き払われ、きりきり舞いをして、何処かへ」

「冬の冷たい風が吹き始めるわ」

「其れまでに、虫たちも子孫を残して居なくなる。
旅する小鳥達は其々の地を目指して行ってしまう」

「巡り会いは、終わらないわ。
北風の神ボレアス様が厳しい顔を見せる頃よ。
アラ、噂をすれば...風が吹き出したから一緒に行くわ。
あなた、さようなら!またね」

「じゃあ、私も、さようなら!」

「来年の芽吹き時まで... 

神戸は北区の山々の紅葉です。2021年11月

アルバート・ハモンドAlbert Hammond/
落葉のコンチェルトFor the Peace of All Mankind (1973年)

この時期に聴きたくなる曲です。
50年前の曲なんですね。