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テラスハウスメンバーと『デデデデ前章』

 見ていただいてありがとうございます。
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 2日ほど前のバイト先での出来事です。
 


 一緒に働いていた女の子に
「心から笑ってる感じがしない」
と指摘され、ショックを受け、思わず作り笑いしてしまいました。

 作り笑いしながら、
「あ、だから心から笑ってる感じがしないって言われるんだ」
と思いました。


 しかも、上手く作り笑いできていたらまだ良いのでしょうが、苦笑いしてしまいました。


 なにか自分の寂しい部分がバレた気がして冷や汗をかきました。


 情けなかったです。



 情けない奴の記事を今週も見てください。
 マジでお願いします。




 あとは余談です。
 先週書いた記事『理容師の彼女』が、


「今、このnoterが面白い」に追加されてました。


 嬉しいです。先週の記事がこれのおかげか、普段より多く見られてました。ありがたいです。
 


 以上、自慢でした!!




 それでは本文です。





 映画を観に行くのが好きだ。中でもとりわけレイトショーに行くのが好きだ。

 なぜなら、映画を観た後の帰り道が暗いと、映画の余韻に気持ちよく浸ることが出来るからだ。


 どこか憂いを帯びながら余韻に浸る僕の顔は、寝静まり帰った夜の街にまぁ似合う似合う。
 あいしょうばつぐん。


 星空の下を歩きながら、映画の劇中歌でも聴いてしまえばそれはもうエモさの極みで、感傷や余韻や読後感に浸りながら、口角を二ヒヒっと上げる。それがたまらなく悦楽。もはやその悦楽を味わうためにレイトショーを観に行っているまである。夜風が吹く。心地よい。


 最も気持ち良く映画の余韻に浸れるのが夜。
 だから、レイトショーが好きなのだ。



 ただ映画を観終わった後で、気持ち良く余韻に浸るには条件がある。



 それは、ひとりぼっちでいること。




 いくら映画の内容を反芻しながら余韻に浸ろうとしても、近くに声のデカい知り合いがいたら、余韻に浸ることなんて中々出来ない。
 知り合いに話しかけられながら余韻に浸るなんてもはや名人芸の域。


 晴れの日じゃなければオーロラが見えないように、孤独じゃないと余韻には浸れない。



 だからレイトショーは基本ひとりで観たい。




 誰かと観るのも楽しいが、誰かと観る時は誰かと観る用の心のスイッチを入れてから映画館に行かないと、他者と観る気にならない。



 それが、僕。



 ここまでなんかエモい風の文章書けたなと思って、パソコンの前でニヤついているのが僕。
 「エモい」より「えもい」の方がなんかエモいな~と思っているのが僕。
 でも、なんでもかんでもエモくしようとする奴のことは好きになれないのが僕。
 で、語尾に僕をつけることを心から気持ち悪いと思っているのが僕。
 



  そして、そんな僕に、悲劇が起こる─





 4月15日の夜、21時過ぎ頃。

 漫画原作のアニメ映画『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前章』を観に、ひとりで映画館に向かった。
 


 ひとりで向かったのはもちろん、鑑賞後にレイトショーの余韻に浸るため。

 


 しかし映画館内で、上映が始まる15分前、座席の位置をチケット片手に確認していると、僕のバイト先の人達(男女5人。男3女2。そのうちの1組は恋仲らしい。真偽は不明)と、たまたま鉢合わせしてしまった。



 びりりと嫌な予感が走った。


 「え、なにしてんの?」
と声をかけられた。

「あ、いや、ちょっと映画観に来てて」
「え、なに観るの?」
「あぁ、デデデデ・・」
「え、俺たちもデデデデ観るんだよ。あ、そうだ。じゃあ6人で観ようよ」



 嫌な予感が的中。

 ひとりで観たいのに6人で観ようと誘われた。
 


 しかし、わたくし、意外に頑固。


「みんなで一緒に観ようよ!」
「嫌です」
「え」
「ひとりで見たいので」
「え」
「申し訳ないです」
「え」



 ハッキリ断ってやった。



 僕は帰り道、ひとりで映画の余韻に浸りたいから、わざわざレイトショーの回を選んでいる。
 それなのになんでわざわざ、男3女2でそのうち1組恋仲の、性別のバランスが微妙に取れてないテラスハウスみたいなメンバーと『デデデデ』観ないといけないんだよ。そんな布陣で映画に集中出来るか!ふざけんな!


 そう考えて、誘いを断った。


 しかし、テラスハウスメンバーのうちの男の1人とは、実は以前に『映画 プリキュアオールスターズF』を一緒に観に行ったことがあった。



 だからひとりで観たいと主張しても、彼には
「でも前に一緒にプリキュア観たじゃん」
と言い返されてしまった。



 しかし僕は
「関係ないです。ひとりで観たいんで」
と再度強く主張した。



 普段バイト先で良くしてもらっているので、彼の誘いを断る申し訳なさもあった。が、それよりなにより、


・映画の予告中にテラスハウスメンバーとコソコソ喋る煩わしさ
・上映中、横にいるテラスハウスメンバーと目が合う煩わしさ
・上映後、感想トークをテラスハウスメンバーとする煩わしさ


などといった、ありとあらゆる「テラスハウスメンバーと映画を鑑賞すること」への煩わしさが、脳内でぶううわあああと思い浮かんでしまった。


 だから、
「とにかくひとりで観ます!」
そう言い切ってしまった。


 だがその後も、
「え、どこの座席で観るの?」
などとしつこく聞かれたので、本当は「Dー12」の座席で観るのだったが、
「A-1です」
と嘘をついた。


 勝手に隣の席を予約されるのを防ぐために、「Aー1」という、最も観づらくて首が痛くなる席を教えておいた。


 とはいえ彼もそこまで馬鹿じゃなかったのか、
「絶対うそじゃん!A-1で観るわけないじゃん!」
と嘘を見抜いてきた。僕は
「えへへ。すいませんね笑」
とだけ返して、テラスハウスメンバーから逃げるようにスクリーン内に向かった。


 雨の日に、オーロラは見られない。

 だから僕はひとりで『デデデデ』を観る。

 なんとしても帰り道、夜のネオンの中で、作品の余韻にひとりで浸りたい。そのためには、テラスハウスメンバーと映画を観ないことが肝要だ。




 その後「D-12」の席(『デデデデ』を観るから、D(デー)席を選んだ。なんたる遊び心!)に座りながら、スクリーンを見ていて、僕は異変に気づいた。

 それは、映画泥棒の映像が流れているのにも関わらず、テラスハウスメンバーがスクリーン内にいないことだった。


 映画泥棒の映像が流れているということはすなわち、もうすぐ本編が始めるという合図だ。

 しかし、スクリーン内を見渡してもテラスハウスメンバーは誰もいない。

 僕は疑問に思った。


 「え、なんでテラスハウスメンバーいないんだ?もしかして、僕に誘いを断られたから気まずくなって他の作品を見ることにしたのか?だとしたら申し訳ねえぞ。あ、でも普通に何かしらのハプニングが起きた可能性もあるな。でもそれはそれで心配だな。ちっ。もうすぐ本編始まるのに落ち着かねえな。なんだよ。これだからテラスハウスメンバーは嫌だよもう・・・」


 とか思っていたら、本編が始まって5秒ほどで、テラスハウスメンバーがニヤニヤヘラヘラして、スクリーン内に身をかがめて遅れて入って来た。


 「なんだよテラスハウスメンバー!ただただ普通に遅刻かい!二ヤつてんじゃねえ!周りの人達の迷惑だろ。どうせダラダラ喋ってたから遅刻したんだろ。映画に対するリスペクトが感じられないんだよ。で、こういうことを上映中に考えてしまっているということは、俺映画に集中出来てないじゃないか。俺の集中力返せよ。テラスハウスメンバーふざけんなよ」


 とか思っていたら、なんとD-12の席のすぐ後ろ、E列の11、12、13、14、15辺りに、テラスハウスメンバーが座ってきやがった。


 「いや結局座席近いのかよ。ほぼ一緒に映画見てるみたいなもんじゃねえか。うわ。しかも俺と席近いってことに気づいたテラスハウスメンバー達がなんかニヤニヤしてるわ。ニヤニヤしながら俺に目配せしてきてるわ。なにこいつら、2時間も俺の後頭部越しに『デデデデ』観るのかよ。で、俺もテラスハウスメンバーの雰囲気を後頭部に感じながら『デデデデ』観るのかよ。最悪じゃねえかくそっ。ていうか映画始まって2分くらい、俺映画に全く集中出来てないじゃん。俺の集中力返せよ。テラスハウスメンバーふざけんなよ」


 と思った。
 思いながら、作品の世界観に没入していった。



 上映が終わり、エンドロールが流れた。



 内容は素晴らしかった。
 個人的に好みな作品だった。
 結局映画はめちゃくちゃ集中して観れた。
 テラスハウスハウスメンバーの存在が上映中にただの1度も頭によぎらなかった。
 没入感が高かった証拠。
 



 ネタバレになるので具体的な感想は言わないが、原作未読でも楽しめる内容だった。



 また、映像と音のハメ込み方がめっちゃ気持ちよかったり、今の世相とリンクしているところが多くあったり、ポップカルチャーをたくさんリミックスしているところに愛を感じたり、日常と非日常のコントラストがパキッと鮮やかに描かれていたりして、最高だった。



 後章が楽しみになる作りで、前章として傑作だなぁと感じた。
 

 そこまでアニメを見ない僕でも楽しめた。


 そしてなにより!
 こんな素晴らしい映画を観た後に待っている帰りの夜道は、きっと余韻に浸るにあたって最高のロケーションだぞ!と確信した。


 だから、
「早く余韻に浸らせてくれ!脳内で映画の内容を反芻しながら、自分の過去と今と未来と映画の内容をリンクさせて、なんかエモい気分にさせてくれよ!頼むぜ帰りの夜風!」


 と考えながら、エンドロールで流れる、痺れるような音楽を聴いていた。


 そして上映が終わった。
 スクリーン内が明転した。


 素敵な作品だったなと改めて感じたその刹那、僕は後ろから何者かに、素手で頭をはたかれた。


 パシッ!


 僕は瞬間的に思い出した。
 後ろにテラスハウスメンバーが居たことを。


 そして僕は、
 

・テラスハウスメンバーの誰かが頭をはたいてきやがったこと。
・かまってちゃんムーブしてきやがったこと。


 それらを瞬時に理解した。


 まじで最高にめんどくせぇ奴が後ろにいる!
 鑑賞後の余韻の邪魔をしないでくれぇ!


 そう思った。
 だから僕は、2回も頭をはたかれたのに、その行為に気づかないふりをして、スクリーン内を出る準備をした。



 けれど無駄だった。



 後ろをちらりと振り返ると、「プリキュアを一緒に見た」でお馴染みの彼が、
「ちょっとちょっと!ひとりで見るとか言ってたのに俺らの前にいるじゃん!一緒に観たようなもんじゃん!」
と笑いながら僕に話しかけてきた。
 そしてオマケにもう1発頭をはたいてきた。



 あやうくキレそうになった。

 頭をはたかれた怒りが、サウナでととのってる時に限って、阿呆みたいに喋りかけてくる連れに対する怒りに酷似していた。


 エンドロールの余韻ぶち壊してくれんなよ!

 オイ頭叩いた奴。お前とシフト被ってる日を、これからはハズレの日って呼ぶからな!


 怒りが胸の中に充満。もう僕はその場から一刻も早く離れたくて、テラスハウスメンバーフルシカトで、ほとんどダッシュみたいな早歩きで、映画館を後にした。 



 帰り道、吸い込まれそうなほど綺麗な夜空に目を向けながら、僕は一生懸命『デデデデ』の余韻に浸ろうとした。しかし結局それよりも、テラスハウスメンバーに鑑賞を邪魔されたことに対する苛立ちに、脳内メモリを使ってしまった。


 要は、うまく余韻に浸れなかった。


 腹が立ったので思わず月に向かって
「ふざけんなよテラスハウスメンバー!」
と叫んだら、近くにいた巡回中のおまわりさんに、不審者を見つけたような目で睨まれた。


 怖くてその場から走って逃げた。
 おまわりさんが見えなくなるまで走って、急に立ち止まったら汗がどばりと出た。
 夜なのに、交感神経入れまくり。
 もはや映画の余韻に浸るどころじゃなかった。




 テラスハウスメンバーのせいでオーロラが見えなかった。


 
 でも、それでも、『デデデデ前章』が文句なく面白かった。
 


 早く後章を、絶対ひとりで観たい。

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