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本当に見えていて本当に聞こえている世界

「悪霊や亡霊とたたかっているんだよ」
「天使と忍者と神の使いと一緒にたたかっているんだ。みんなを守るためにね」


生前、父はよくそんなことをいっていた。


父は統合失調症だった。
「おそらく20代ではすでに発症していたはずです」
父の主治医の言葉だ。


「お父さんの目からビームが出る。だからnontaroの目を焼きつぶすこともできるんだぞ」
つねに父に対して反抗的な態度だったわたしにキレて、そんなことをいわれたことがある。

あまりにも印象的なことだったので、いまでもはっきりと覚えているのだ。

「は?目からビーム?出せるもんなら出してみろや!!」そうわたしにいい返され、「なんで誰もわかってくれないんだ」といいたげな表情で部屋へと去っていった。


そしてそんな父をわたしは「こいつマジで頭おかしい」「イカれたクソおやじ」「本物のクズだ」といつもバカにしていたし、そんな父が大嫌いだった。


父が病気だとわかり、統合失調症の本を読んだことがある。
" ああ~父は光の仕事人なんだ "と思ったことがある。いわゆるライトワーカーというもの。

妙に納得した自分もいたし、それを話題に父と話してみようと思ったことがある。父の家をたずねると、同じ著者の本が父の家の本棚にあり驚いた。


いま思えば、だれからも理解されないこの病気のことを、父ももっと理解したいと思っていたにちがいない。


でもわたしはそれ以上深く理解しようとしていなかった。理解して何になるんだ?という気持ちがあったのも事実。


ただ、よくよく考えてみると、わたしの長男も統合失調症。うつ病も併発している。なんとなく父と同じ病気だからと学ぶことを避けていたのかもしれない。


ふと、あらためて理解しなければならないと感じた。


長男にもっと寄り添いたいと思ったし、わたしにできることは何だろう?と考えたから。


現在就活中のわたしにはそれなりの時間がある。実際に統合失調症のひとの体験記を読み漁った。むさぼるように。


父には本当に見えていたんだ。天使やら忍者やら悪霊や亡者などが。そしてほかの人には聞こえない声も。

長男の病状をしっかり理解するために読んだ本で、父の奇行を理解できた。


この病気は誰にも理解してもらえないと悩んでいる人が多いことも知った。周りにいないと理解することが難しい症状。

わたしのことだ。父のことをイカれたおやじだとバカにしていたし、理解したりましてや寄り添いたいなんて1ミリも思わなかった。できるなら一生かかわりたくないと。


それを長男を通して見せられている気がする。


思考のしくみから考えると、父の病気も長男の病気も、わたしの潜在意識が現実化したということになる。この辺りを深掘りするのが怖いが、向き合わなきゃいけないと強く感じたのだ。


父にはどんな世界が見えていたのだろう。父は勇敢な勇者的な気持ちでいたのだろうか。

生きているうちにもっと聞いておけばよかったな。






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