なんでそれ、プロダクションが負担するの?


■世界最高のゲーム・麻雀


私は普段、競馬やパチンコなどのギャンブルはしないのですが、
麻雀だけは、高校生の時からずっと好きで続けています。

実は、KEY proには全自動麻雀卓があります。笑
普段は見えないように会議室となっていますが、いつでも麻雀ができるようになっています。(結局、5年間で5回くらいしかやってませんが、、苦笑)

KEY pro 会議室

なにが面白いのかというと、人間性がすごくでるゲームだからです。
ある程度麻雀を知っている人なら分かるのですが、麻雀は、いわゆる自分があがるよりも、相手にあがらせないゲームです。

そのために駆け引きも必要ですが、相手がどんな手牌か予測し、自分が次何をツモったらどうなるかをシミュレーションして、瞬時に決断する。

自分があがりたいけど、グッと我慢して自分の手配を崩す。
勝負の時か、引く時か。

そして、4人が顔を合わせて、くだらない会話もしながら、
実は腹の底で、そういった頭脳戦も行われている。
「世界最高のゲーム」と言われる所以でしょう。

最近は麻雀をやる若い人がめっきり減りましたし、自分もやる機会がかなり減りました。 だれか、誘ってくれないかなあと思います笑


■それって、プロダクションが負担すること?


ここからが本題です。

どの業界にもあると思いますが、納品過程において予期せぬ(予測できない)事柄に対して、新たに発生する費用をどうするか。
ここが揉める要因になることが多々あります。

今回はプロダクションが、作業開始時点では予測できない部分の追加費用に対して、よく負担を強いられがちなケースをいくつか書きたいと思います。

もしかしたら「映像プロダクションあるある」なのかもしれません。
ただ、それをなあなあにしてしまうことで、この業界がダサく見えてしまうと危惧しています。

そして、お金のことは伝え方も非常に重要で、
大概のケースは、プロダクション側が正論になることが多い。
(対応する側の論理として)

先に結論からお伝えしておくと、このプロダクションが理不尽に負担を強いられるケースの大半は、

「クライアントに請求(説明)できない」

という広告会社側の事情が多いと感じます。
クライアントのオーダーで増えてしまうことは、ちゃんと事前に見積もりをだして、やるかやらないかを判断されればよいので、揉めることはそこまでありません。

今回は「クライアントのオーダーではない部分で増えてしまうこと」に対して、 どう対応するか。ということがテーマになります。

基本的には誰も悪くないし、仕方のないことも多い。
でも「仕方ない」で済ませてしまっては、この問題はずっと解決しません。物理的にお金で解決することがある以上は。

最後に、誤解を招かないよう大前提として。

これから書くケースは、自動的に全てプロダクションに負担がいくということではありません。ちゃんと話し合いを行い、少なくとも追加費用がゼロになることは、ほぼありません。

私が担当している案件は特に、広告会社の方々が理解をしてくださり、
一生懸命なんとかしてくれますので、あくまで一例としてみてください。


■CASE1: 広告会社クリエーティブの要望に対する追加費用

仮編集試写の後、広告会社のCRから「家で何度か見返したら、どうしても修正したいところがでてきた」と申し訳なさそうに要望があった。
その後、再度仮編集を組み直し、クライアントへ事情を説明の上、再度試写をした。 クライアントも「前より良くなりましたね!ありがとうございます!」と喜ばれた。

(クライアントのために)企画したCRが強いこだわりを持って、プロダクションへ様々な要望をプロデューサーに出します。
もちろん私たちプロデューサーはそれを叶えるべく、全力で対応します。

当然のことですし、そこを追加費用といっているわけではありません。

特に企画段階や準備初期でのCRからのオーダーで増えた費用は、その後の制作段階で吸収できる余地もありますし、全く問題ありません。

このケースは、仮編集後という段階で物理的に発生した再編集の費用
これはどうしてもかかります。

広告会社のプロデューサーや営業さんに相談はいれますが、一度クライアントがOKしたことを再度やり直すわけで、クライアントは悪くありませんし、クライアントに請求できないというのは、倫理的に当然です。

じゃあこの費用は誰が負担するのか?

① 広告会社の営業からクライアントへ事情を説明し、追加費用の了承をもらった上で再度編集を行う。
② 広告会社の利益からその費用を捻出する。
③ CRに対して、それは追加費用がでないからできないと言って断る。
④ プロダクションが負担する。

① が理想ですが、これは相当クライアントとクリエーティブの関係値が高い場合か、クライアントの予算組みが柔軟であること以外は、ほぼ難しい。
② は同じ広告会社のCRからの要望なので、そこが負担するのは正しい話。
それができない場合は③のように、そのオーダーは断ってくださいという営業さんもいます。それも正論です。

このケースは④を選択するプロダクションがほとんどになると思います。

これは、プロダクションの性(さが)なところです。
やっぱりCRの希望を叶えてあげたいし、今後のことも考えてしまいます。
追加費用がかかっちゃうし、迷惑をかけてしまうことを前提にCRの方も申し訳なさそうに伝えてきます。

そこはプロデューサーの判断です。
が、ビジネス上ではやはり良くないこと。

そのはざまで、自分も葛藤はあります。
(誤解がないように言うと、私はその追加オーダーはよりよくなるための要望なので、むしろ嬉しいことです。やりたくないというプロデューサーはいないと思います。)

私がここで言いたいことは、プロダクションが負担するケースでも、 本来は①や②の方法がビジネス上では正しいし、③のようにどうせ断れないでしょという気持ちがあったりする場合はとても悲しい気持ちになります。

今回は編集の段階のケースでしたが、企画や制作過程においても同じことは起こります。 無条件にプロダクションが負担するものではなく、ちゃんと話し合って決めたいという思いを伝えたいと思いました。


■CASE2:出演者のオーダーによる追加費用

出演タレントの事務所から、撮影直前に「次の日が早いから20時までに現場を出たい」というオーダーがあった。前日のリハーサルをいつもより綿密に行い、カメラの台数を増やして対応した。結果、無事撮影時間を短縮して、最後まで撮り切ることができ、タレント事務所の方からとても感謝された。

このケースは少し誇張しています。
大概はタレントの拘束時間はもっと早くからわかることが多いです。

ただ、タレントが出してくる要望に関しては、ここもクライアントさんが悪いわけではありません。
このケースでは、前日リハや追加で増えたカメラ機材の費用は誰が持つの?という話です。

ここも、本来はクライアントに事情を説明をして、追加費用を承認してもらうことが筋なのですが、ここはケース1と違って、内容を良くするための説明ではなく、後出しの条件の説明になってしまうので、より話し方は慎重になります。

同じような例でいうと、タレント指名のスタイリストのギャラが超高額だったり、「この衣装は着ない」とか「遠いスタジオは無理」などという要望もよくありますが、同じ理由で、それに関わる追加費用は出しにくい。

つまり、キャストの要求は簡単には断れないということ。
(もちろん、制作側の意見を聞いてくれる事務所もたくさんあります。)

こう書くと、タレント事務所が悪いように見えるかもですが、
事務所としても、所属タレントは商品ですので、よく見せるためだったり、守るために色々要望があるのは、とても理解できます。

先に要望がはっきりしている場合は、他の部分(内容変更だったり、機材や人員削減など)を工夫して吸収することもできますが、どうしてもその吸収が難しかったり、スケジュール上、無理なこともあります。

誰が悪いわけでもなく。でも物理的には費用が発生する。

私は、なるべく事前に、撮影条件をタレントに提示してもらうことをお願いしています。

企画の狙いなど、出演者に演じてほしい役柄・役割は当然として、撮影時間が長くなりそうな場合や、物理的な編集スケジュールは早めに伝えておくこと。

それでも、予測できないオーダーが入ることはあります。
結局は、話し合いでどうするかを決めたいのですが、金額が少額の場合はプロダクションが飲み込む場合がほとんどかと思います。


■CASE3:撮影現場で発生した追加費用

撮影日、急遽スコールがあって撮影が中断した。その結果、撮影は3時間押して終了。 「天候のことなので、撮影が押したことは仕方ないですね」と現場は和やかに解散。一部のスタッフは深夜タクシーで帰宅。さらに、ロケ地の使用時間が過ぎた3時間の間に一般の方が映りこんでしまったため、編集でその人を消して対応した。

このケースは、撮影時に発生した予期せぬトラブルに関して、追加費用を事後で出すしかないのですが、事前で出した金額よりも上がってしまうため、揉めるケースがあります。

簡単に言うと、撮影が押した場合に発生する費用(スタッフの労働時間や交通費など)はどうするの? ということです。

このケース以外でも、なかなかクライアントのOKが出ず、押した場合。
出演者の演技が上手くいかず、押した場合。
など、スタッフが一生懸命頑張って急いでも、押す時は押してしまいます。

今は、その全責任がプロダクションに降りかかってくることが大半です。
仕切りが悪いからだと。

もちろん、本当にプロダクションの仕切りが悪くて押す場合はこちらの責任なので、追加費用など請求しません。

ただ、現場で起きる突発的なことがあった時、ちゃんと話し合ってその費用をどうするか相談できる環境であるべきだと思っています。

その金額が大きい場合は、広告会社やクライアントにその場で説明しますが、 少額の場合は飲み込むことが多い。もしくは事後で出しても通らないことがあります。

3時間押しただけで、金額ふえるんですか?と思っている方もいます涙。
時給で働いているスタッフも多いですし、それが少額だったとしても増えることはせめて理解できるはずなんですが。。

そして、このケースのように予期せぬバレものが発生した場合、編集で消したり、合成したりすることが昔より簡単にできるようになった結果、
「あとは編集で」と簡単にオーダーをされるパターンもとても多いです。

それでもその作業をやってくださるエディターさんは、追加で労働時間が増えます。 それは、少額かもしれません。

いちいち現場で、じゃあお金は増えますよと言うのも細かい人と思われるから言いにくい。
でも、本来なら、たとえ1円でも言わないといけない。
細かいわけではなく、スタッフを守るために。

結局、そこで増える少額なものは、だいたいプロダクションが負担します。

撮影が押した責任は、プロダクションにあるというベースは自分にもありますので、基本請求しないことがほとんどです。

だから海外の現場では時間の仕切りはもっと厳しいし、もし押したとしてもプロダクションがその追加費用をかぶることは絶対にしません。

撮影現場では、その瞬間の判断が必要な時が多い。
だからこそ、だれか1人に責任を押し付けるのではなく
現場にいる全員の共通認識をもって望めたらいいのかなと思います。


■バッファってなに?


こういった追加費用の話をすると、
「そのくらいの追加費用は、最初からバッファをみておいてくださいよ」
と言われることもあります。

バッファをどれだけみるかはプロデューサー次第です。
それをみすぎると、純粋にクオリティが下がるし、もしバッファでみていた分を使わなかったらラッキー!ってなるのは、見積上の誠実さに欠けます。

そもそも、制作費にキャップがされる案件がほとんどであり、バッファを取れないほど制作費がギリギリの案件が多くなっているなか、それはかなり難しい。

私もバッファは多少みますが、前述したようにその金額は限りなく予測できない数字になります。そのバッファよりも増えたら負けで、減ったら勝ちみたいなことって、ビジネス上まったく正当じゃない。
ギャンブルになってしまいます。

やはりこの問題は、企画コンテで最初に取り決めた概算費用から、
クライアントオーダーではない限り、増やせない
というふんわりとしたルールが大きい。

ただ、クライアントの立場に立ったら、とても理解できる話です。
企業にとって、広告費が無尽蔵にでるわけではないし、年間の予算組みもあります。

私は、本来バッファを見るのはクライアントであるべきだと思っています。

すべての工程がすんなりスムーズにいくことの方が稀ですし、
予期せぬことが起きた時に、広告である以上、支払い責任はクライアントにあることが一番合理性があると思っています。
広告はそもそもクライアントのために作るものですから。

そして、広告会社の方々も日々苦労されています。
「〇〇円渡したんだから、その中でうまいことやってよ」
という無理強いするクライアントさんも多いと聞きます。

でも、その皺寄せがプロダクションにくるのはおかしい。

そのためには、予期せぬことが起きた時、ちゃんと戻れるスケジュールの確保と、 対等に話せる関係性を作り上げることが大事だと思っています。


■クライアントに請求できない≠プロダクションが負担する


制作費をだすのはクライアント。
それを使うのはプロダクション。
広告会社(特に営業さんやCPのみなさん)はその間にたつ仕事で、これらの問題の中心になります。

追加費用が発生した時にひとつ、言って欲しくない言葉があります。
きっとその通りの正直な言葉だと思うのですが、、

「クライアントから、もらえないんですよ〜」

同じことがうちらにも言えます。
プロダクションがスタッフに対して、

「広告会社から、もらえなかったんですよ〜」

といって、事後でお金を値引きすること。
そんなのスタッフにとっては関係ないですし、死活問題です。

つまり、正直なところで言うと、
実際に稼働した分をどうするかと、支払い側の事情は関係なく、
その言葉は、心情に訴えることでしかない。
少なくとも誰が負担するかの一端から逃げないでほしい。

私は追加費用が発生した場合、広告会社に対して「そんなの関係ないから、かかったものはくれ」と、強気で言うことはしません。
その事情は重々わかっています。きっとどうしようもない状況だろうし、広告会社の方々も本当に苦しいんだなと。

一方で、クライアントさんの立場に立った時に、 予算も年間で決まってるし、うちらはなにも悪くないのになんで?っていう気持ちも重々わかります。(クライアントさんの追加オーダーで増えている場合は除きます苦笑)

なので、私はなるべく「追加=費用増」という考え方はせず、なんとか工夫できるところはして、予期せぬ事態がおきても、費用が増えずにできることを提案します。 それはバッファの中でとかではなく。

それでも、費用が増えてしまった場合。
そしてどうしようもない場合、「今回はわかりました」と飲み込むこともたくさんあります。

でも、ビジネス上では正しくないことです。

その時、であればプロダクション、そしてスタッフの代表として
おそらく正論であろう予期せぬ費用増のプロセスは、せめてクライアントへ説明だけでもしてほしい。 そうお願いしています。


■おわりに


CM制作は完全にオーダーメイドです。
プロデューサーはそのために、リスクヘッジとクオリティを天秤にかけて、
様々なことに対して予測(シミュレーション)
して、見積をつくります。

日本において、プロデューサーの責任で抱える部分があまりにも大きい。
プロデューサーは神様ではないので、100%予測はできません。

その時に、どうしたらいいのか。
費用というビジネスの側面において、最も受発注の関係がわかりやすい部分であるだけに、パートナーシップが試される問題です。

クライアントも広告会社もプロダクションも、
それぞれの立場で葛藤が起きている共通の問題
でもあると思います。

広告制作に関わる全員が、利益をちゃんと生み出すべき。
でも、みんなお金で揉めたくないんですよね。

具体的に解決する方法があるのか…
日々、試行錯誤しながら、うーんと頭を抱えています。

愚痴っぽくもなってしまいましたが、、
根深い問題だけに、今回も長くなってしまいました。

ここまで読んで頂き、ありがとうございました。

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