見出し画像

映画レビュー『ペイルライダー』(1985年)

なぜ「ペイルライダー」の感想をnoteで書くのか?…というと、特に深い意味もないんですが、この映画自体がなぜ作られたのかよくわからない映画なので、そこの所を解説したいと思います。

本作は1985年公開の西部劇なんですが、作品として特になんの特徴もなく、また可もなく不可もなく、作品としてあまりに必然性がないので逆に不思議に思えてくるような感じがする作品です。

ハリウッドで西部劇が量産されなくなって久しい80年代になっても、イーストウッドというスター俳優にとってだけは、西部劇の主人公役が定番となっていたので、その後1992年には名作の「許されざる者」が制作されるに至るまで西部劇の制作は続いています。
しかし1985年時点では、70年代が全盛期であるイーストウッド自身は世代交代が激しさを増してスター俳優としての存在感が薄れてきていた時期ですし、それまで様々なシチュエーションでのマカロニウエスタン風の作品に主演し続けていましたが、本作「ペイルライダー」は、それらと比較してもあまりに内容が単純で工夫がありません。弱き者を救う流れ者の主人公というだけの内容です。この作品はよく「"シェーン"と"荒野のストレンジャー"を掛け合わせたような内容だ」と言われていますが、それは裏を返せば「ありきたりな内容だ」という事です。それでもしっかり往年のファンを呼ぶ事には成功しているようで、ちゃんとヒットはしたようですが。それにしてもなぜまたこんなベタな内容のものを、自分が落ち目になってる80年代半ばに制作したのか、さっぱりわかりません。更にまた1985年といえば、シルベスター・スタローンの「ランボー2」が公開されて、アクション映画に革命が起こった時期にあたりますが、その事もあって、この「ペイルライダー」という古風な作品は、一体何の意図があって企画されたものなのか更によくわからない、という印象が強まります。その後制作される「許されざる者」と比較しても、本作はあまりに存在感も特徴もありません。とはいえ映画作品としてはまとまりがよく、ぜんぜん悪い作品でもありません。

これは想像するに、80年代の新世代の若い観客に、西部劇入門用の作品を提示して見せようという意図があったものなのかも知れません。今までのイーストウッド主演の西部劇と比べても、対象年齢が低く感じられます。敵役には当時アイドル俳優として一定の認知があったクリス・ペンが出演していたりもしますから。作風にアンチヒーロー感はなく、ベッタベタなヒーローです。

しかしイーストウッドの西部劇か嫌いでない者としては、本作「ペイルライダー」はベッタベタでとても観やすく、あっても邪魔にならない存在感の作品ではあります。大作でありながら、セットに金をかけず、よく見ると画面はチープなのが特徴であるイーストウッドの西部劇は、いいものです。

「カッコいいとはこういうものさ」

この記事が参加している募集

映画感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?