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高齢な親の介護日記⑨

2024年3月15日 金曜日 晴れ

今日はとてもよい天気。寒さもだいぶと和らいできた午後、春の日差しのなか父といつもの喫茶店へと向かう。
真っ青な空がずっと遠くまで広がっているものの、遠くの山々はぼやっと白く霞んで見えた。
「春霞だね、お父さん」
そう話しかけると、父は俳句を一句詠みあげた。
「春がすみ俺の頭も春がすみ どうだ?上手いだろ」
ひとしきり笑った後、父は更につけくわえた。
「春霞ならまだいいんだけどな、たまに闇夜になるんだよ。闇夜は怖いぞ。」

父がサービス付高齢者住宅に引っ越してきて、もうすぐ1年が経とうとしている。今日が金曜日なのか月曜日なのか、はたまた3月なのか2月なのか、既にだいぶと前からわからなくなってきているものの、洗濯だけはきっちりと続けることができていて本当に感心する。父がサラリーマンだった頃、家で洗濯をしている姿なんて全く見た事がなかったので、それは本当に不思議だった。
「厳しくしつけられたから」と言うので、てっきり父が定年退職後に私の母から教えられたのだと思っていたが、父が言うには、父が小学生だった頃に父の母、つまり私の祖母から教えられたのだそうだ。
「あの頃は貧乏で両親も姉達も外に働きに行っていたから俺はひとり家でラジオを聴きながら洗濯をして皆の帰りを待ってたんだ」

いや、おかしい。父が小学生だった頃に洗濯機はまだないはずだけれど…

母はもう亡くなってしまったので、母の幼少の頃の思い出話なんてもう聞く事はできない。
父は今のところまだ話すことができるので、真実なのかどうかはさておき、今のうちにいろいろと聞いておこうと思った。




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