見出し画像

【ギャラリー冬青 写真展】 2023年1月期 公文健太郎

ギャラリー冬青 1月期 写真展
公文健太郎写真展

耕す人

会期:2023年1月6日(金)~1月28日(土)
11:00~19:00 日曜・月曜・祝日 休廊  入場無料
最寄り駅:東京メトロ丸ノ内線 新中野駅徒歩5分

オリジナルプリント
Copyright (c) Kentaro Kumon All Rights Reserved


<作家の言葉>
「農」の風景を訪ねる旅を始めて10年が過ぎようとしている。旅先で出会った風景は目に焼き付き、交わした農家との会話と、舌で感じた味は僕の記憶にしっかりと残っている。撮った写真以上にその蓄積が今の僕をつくっているように思う。

初めて出会った人には必ず出身地を聞く。その土地の「農」が会話のきっかけをくれるからだ。「宮城ですか。この時期はセリが美味しいですね。霜が溶けるのを待って収穫する。寒い中大変ですよね。でもあれは鍋には欠かせませんね」とか「福井ですか。大野の里芋は日本一ですよ。あの粘り気。ああ、食べたい」とか。その人と僕の頭の中には、朝日をゆっくりと浴び、霜に覆われていたセリが鮮やかな黄緑色に変わる様や、上庄里芋の大きな葉が真っ青な空に揺れる景色がぶわっと広がっている。そして故郷のおいしい野菜を褒められて嫌な思いをする人はどこにもいない。

都会育ちだという人にも父親の実家がとか、先祖がとか、かならずどこかの土地と繋がっていて、思い出の風景の中に必ず「農」がある。僕たち日本人にとって「農」の風景は原風景であることをあらためて感じている。

「土地が人の暮らしをつくり、人の暮らしが風景をつくる」そのことをテーマに写真家として歩いてきた。「農」に始まり「川」「半島」「島」と場所を変えてきたが、どこへ行ってもそこにある風景には人々の工夫や努力が歴史として刻まれていた。一見自然に生えているように見えるりんごの木は、真っ赤な実をならすために農家が日当たりを考え、手をかけてつくった造形美である。小松菜定植を控えた畑は、耕されたあと丁寧にならされて、その土は土というより柔らかな布団のようだった。急峻な斜面に積まれた石垣は、よく見ると一つ一つは歪な形をした石の積み重ねである。石と石が隙間なく見事に噛み合って支えている。それらはみな人が自然から継続的に恵みを享受しつづけるために時間をかけつくり上げてきた風景だった。

山間の農村に人が暮らしを終えて去った民家がひっそりとたっていた。山藤に覆われ、今にも朽ち果てようとしている。そこにあった「農」の風景は終わりを迎えようとしていた。人が営みを止めればその場所はすぐに自然へとかえってく。僕たちの暮らしが自然と常に接していることを感じさせてくれる光景だった。営みと自然。その二つがつくった日本の原風景。

僕たちは、どこからきて、どこへ還っていくのか、この「農」の風景を眺めながら僕はもうすこし考えていきたい。

公文健太郎

<作家略歴> 
公文健太郎 | Kentaro KUMON 
写真家。1981年生まれ。ルポルタージュ、ポートレートを中心に雑誌、書籍、広告で幅広く活動。同時に国内外で「人の営みがつくる風景」をテーマに作品を制作。 近年は日本全国の農風景を撮影した『耕す人』、川と人のつながりを考える『暦川』、半島を旅し日本の風土と暮らしを撮った『光の地形』などを発表。最新作は瀬戸内の島に起こる過疎化をテーマに写真集『眠る島』としてドイツのKehrer社から出版。 
2012年『ゴマの洋品店』で日本写真協会賞新人賞受賞。 http://www.k-kumon.net 

○主な写真展
2004年1月 写真展「幸せと幸せの間に」 世田谷文化情報センター生活工房2009年7月 写真展「グラフィッチ」 EMON PHOTO GALLERY2010年11月 写真展「BANEPA」 72GALLERY 
2011年 写真展「ゴマの洋服店」 全国キヤノンギャラリー巡回 
2012年12月 写真展「March 2011, Rio de Janeiro」      ブラジル大使館
2014年1月 写真展「FÓOTKAT」       ハッセルブラッドジャパンギャラリー
2016年8月-10月 写真展「耕す人」                キヤノンギャラリーS 
2018年1月-4月   展覧会「眠れる慈悲」       ESPACE KUU 空(大正大学)
2019年1月-2月 写真展「地が紡ぐ」           EMON PHOTO GALLERY
2019年9月-10月 写真展「川のある処」             Jam Photo Gallery 
2019年9月-10月 写真展「暦川」            キヤノンギャラリー銀座・大阪
2020年6月 写真展「土よ、光よ」               MYDギャラリー 
2021年9月 写真展「光の地形 − Imaginary Journey」 
2022年 写真展『借景・隣り合うマチエール』 MYDギャラリー
2022年7月 写真展『眠る島』 Spiral Garden 

○出版物
・写真集『大地の花』 - ネパール 人々のくらしと祈り -(2006/東方出版)
・写真絵本『だいすきなもの』 - ネパール・チャウコット村の子どもたち -(2007/ 偕成社) 
・写真集『BANEPA』 - ネパール 邂逅の街 -(2010/青弓社) 
・フォトエッセイ『ゴマの洋品店』 - ネパール・バネパの街から -(2010/偕成社)
・写真絵本『世界のともだち - ネパール -』(2014/偕成社) 
・写真集『耕す人』(2016/平凡社) 
・写真集『英さんのバラ-愛され続けた家と庭-』(2017/伊勢工房)
・写真集『地が紡ぐ』(2019/冬青社) 
・写真集『暦川』(2019/平凡社) 
・写真集『光の地形』(2020年/平凡社) 
・写真集『眠る島』(2022年/Kehrer)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?