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「本好きの下克上」感想文~その3(4巻は神巻でした。)

(※本好きの下克上(4巻)までのネタバレを書いています。ご注意を。)


「ディードは私の救世主でした。」


本音を言うと嫉妬だ。
マインの信頼を一身に受けるルッツへの嫉妬だ。

あれだけマインに頼りにされて常に一緒に行動していたら恋心の一つも発生するでしょと思うのだが、それについての描写は特になく、物語は淡々と進んで行き、ルッツのマインに対する気持ちはほぼ書かれずに、かといってマイン専用機としてのルッツの立場は着々と完成していく現状に対する嫉妬だ。


・・・。

・・・はい。
子供相手に何を語っているのでしょう。

申し訳ありません。

しかしながら上の意見は妄言か?
と言えばそうでもなく、嘘偽りのない私の本心でもあります。

物語の舞台が神殿に移った為「あ~これでルッツとベンノとはお別れか」「当分出てこなくて良いよ」と安心した私の思いとは裏腹に、相も変わらずこの二人がマインに付きまとう姿に苛立ちすら感じる有り様だったのですが、「では具体的になにが気に入らなかったの?」と問われたら、以前の記事ぐらいの理由しか思い付かず、「このままベンノとルッツがマインの保護者として付きまとうのなら嫌だな~」何て考えていたのであります。


(”以前の記事”です)


兎に角、私の中でルッツ(とベンノ)の印象がかなり悪くなっていたのですが、ルッツの印象を180度変えてしまったのは、他でもない彼の父親ディードでした。

「泣き事をぬかして、孤児院に逃げ込むな。」

神殿でのやりとりでのこの一言。
作者は私がルッツに感じていた思いをディードに語らせました。
そして、本気で商人になりたいと願うルッツの気持ちは家族と向き合えた事でやっと読者(私)にも伝わったのです。
この対話でルッツはマイン離れ(マイン依存症からの脱却)が出来たのではないかと勝手に思っています。

更にディードの追求はベンノにも向けられます。

「養子にする理由の一番に店の利益を上げるようなヤツが親にはなれん。」

ああ、そうか。
私が感じたベンノに対する違和感はここでした。

ベンノは普段からマインに「考えて行動しろ」と説教していましたが、この説教にどうにも違和感を感じていたのですが、ディードの言葉で分かった気がします。

ベンノの説教はあくまで彼の利益の為にとどまり、マイン本人の為の言葉では無かったのではないか?

私の解釈は間違っているかもしれません。
しかし、新しく登場した神官長もマインに対する説教キャラですが、ベンノの説教と根本の目的が違う気がするのです。(気のせいかも・・・)


ともかくルッツがディードと対話した事により、私の中のルッツへのわだかまりが完全に氷解したのは間違いなく、巻末でのギルとのやり取りを読んでいても微笑ましい気持ちしか沸いてこず、ディード登場前と後ではルッツの印象が完全に変わったのでした。


素晴らしい家族会議でした。


ルッツとベンノのお陰でダダ下がりだった「本好きの下克上」の評価を一気に盛り返してくれたディードは私の救世主であり、今回の4巻は神巻でありました。

そして神官長のツンデレ(?)ぶりは本当に好き。


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