【作家志望】とある出版社に言われた衝撃の一言で本気で作家を目指すようになった話♯2
♯2「作家志望なんだから黙って書いてなよ」
前回のはなし
それから三日後、資料が届き、二回目の電話が編集者から来ました
編集者「アベさん、資料はどうでしたか」
アベ 「うーん……まだちょっと、決められません」
編集者「そうですか。ご不明な点でもありますか?」
アベ 「いや、そういう訳ではないんですけど…」
アベ 「なんか色々と、挑戦する前に自費出版に決めてしまっていいのかなって思いがあって…」
編集者「気持ちはわかります。じゃあ、改めて聞くんですけど……」
編集者「アベさんって、どうして本を出したいと思ったんですか?」
アベ 「え?」
編集者「自費出版を選ぶ方って、色々理由があるんですよ……自分の人生を本に出して残したいとか……コアな人向けの専門誌を出したいとか」
編集者「結局、本を出したい気持ちに嘘はなくても根本が違う場合があって……芯の部分が違うなら本の出し方が色々あってもおかしくはないじゃないですか」
アベ 「はい…自費出版を否定する訳ではないんですが…」
編集者「アベさんは、どうして本が出したいんですか?」
私が本を出したいと思った理由は、もちろん本が好きだからです。
多くの作家が同じ理由だったと思います。
でも「本を出したい理由」となると、私にあるのは漠然としたものでした。
「本屋に作家となった自分の本が並んでいるのが見たい」
しかも、できれば平積みで。
編集者「なるほど」
編集者「アベさん、本って結局商品なんですよ」
アベ 「はい」
編集者「つまり…」
編集者「本にも需要と供給があるんです」
編集者「需要がないのに、自分が書きたいからって理由だけで本屋に本は並べられないんです。この前言った本を出版する三つありますよね……」
アベ「
① 賞をとること
② 作家自身に魅力があること
③ 自費で出版すること
ですよね」
編集者「はい。つまり『〇〇賞をとった作家の本が読みたい』『〇〇さんの書いた小説が読みたい』みたいな…需要があるから読者は買うんです」
アベ 「需要がないのに本を並べられない…ってことですよね」
編集者「需要に応えるという意味で、例外として読者の困りに答えるような本…いわゆる料理本みたいな専門書もありますが…アベさんはこっちじゃないですよね」
アベ 「はい。考えてませんでした」
編集者「そういったニーズにも自費出版は応えられるんです。アベさんの希望をウチならできるんですよ」
アベ 「はい…」
編集者「今度、そちらに行く予定があるので、ちょっと話しましょう」
結局、いつの間にか自費出版することで話が進んでいました。
編集者の方が話していた内容に間違いはありません。
ただ、モヤモヤとしたものが心にありました。
そのことを友人と話していた時です。
友人「それで、自費出版することにしたんだ」
アベ「まぁ、自分の夢だったし。言ってることは間違ってないから」
友人「ふーん。でも、アベって作家じゃないじゃん」
アベ「……ただの作家志望」
そこで友人に言われたことは、今でも忘れられません。
友人「なら、本とかどうとかの前に……黙って書けばいいんじゃないの?」
どきり、とする一言でした。
それからしばらく何も話せませんでした。
でも、作家志望を代表しての反論があります。
「それは前提なんだよ!」
今現在も、私は書くことはやめていません。毎日、少しづつ書いています。
本を出すための3つのうち、
① 賞をとること
② 作家自身に魅力があること
③ 自費で出版すること
①は前提にして進めています。
③は自分の力ではどうにもできません。
だとしたら……
「自分自身にファンがつく人物になればいい…のか?」
魅力のない(わからない)自分にそんなことができるのか。
どうすれば、ファンなんて獲得できるのか。
本当にそんな方法で夢を叶えられるのか。
もっと言うと、
作家を目指している人間が、作品以外の部分でファンを得ようとすることは邪道じゃないのか。他の人からそう思われても仕方がないのではないか…
わからないこと、不安なことはたくさんありました。
それでも、
「少なくともまだ、自分でできることがある」
という気持ちで、前に進むことにしました。
結局、私は編集者の方にお電話をし、丁重にお断りすることにしました。
編集者「いつでも待ってますので」
最後にそう言われました。
次回更新に続きます
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