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【作家志望】リバーシ方式『変な家』を読了後、ふと、「あとがき」が必要だったかを考えたくなる。

こんばんは、アベヒサノジョウです。
最近、ベストセラーになっている「変な家」※1を遅ればせながら読ませていただきました。非常にミステリアスで面白く、文体も会話を基本としており、読みやすかった印象です。
「なるほど、大人だけではなく子供からの人気も出るわけだ」と、しみじみ思いつつ文庫本に寄せられたあとがき※2を読み、ふと、思うところがありました。

この「あとがき」は話題にしたい…!

そう、思ったので書かせていただく次第です。

(※1 内容に関するネタバレはありませんが、文章にする都合上、登場人物名などは書かせていただいています。ご注意ください)

(※2 この「あとがき」は文庫本のために加筆されたものです)

タイトル:変な家
著者:雨穴



【はじめに】

まずはじめに、私は雨穴さん(著者)の作品が大好きです。Youtubeの映像作品やドラマなど以前より楽しませていただいておりました。

なぜ、雨穴さんの作品が好きなのかというと、

リバーシ方式

で小説や映像を作るからです。
(ちなみにリバーシ方式というのはアベヒサノジョウが命名したものなので、他の言い方があれば教えてください…)


【『リバーシ方式』とは】

私はこのように定義しています。

リバーシ方式
・あえて不完全な情報や矛盾を作り出し、終盤で「本当にそうか?」「このように解釈できないか?」と問いかけることで物語の印象を変えてしまうこと。(白色に見えた人物が、黒色に見えたりするので「リバーシ方式」と呼んでいます)

アベヒサノジョウ

つまり、雨穴さんはこの方法を多用して物語を作るため、他の作品でも「フゥ、一件落着だ」と、思わせてから「でも、こんな風にも考えられない?」と読者に問いかけることで「恐怖感」を煽るという流れを利用しています。

そして、私もこの流れが大好きです。ホラーの定石だとさえ思っているのですが、この話をすると多くの方から

「それって映画とかで『どんでん返し』って言われるやつじゃないの?」

と、映画や物語ではよくある展開と思われがちですが少し異なります。


【『どんでん返し』と『リバーシ方式』は違う】

どんでん返しとの違いは「どこにひっくり返すポイントがあるか?」です。

どんでん返し
→ 終盤に向けて物語を構成し、真実が明かされる場面で全てを否定したりこれまでの流れを狂わせたりする。よって、この一点に物語の情報が収束する。

リバーシ方式
→ 終盤に向けて物語を構成し、真実が明かされる場面で多面的な情報の見方を提示する。よって「ひっくり返ったり戻ったり、ひっくり返ったり…」というのを繰り返す。

アベヒサノジョウ

となります。リバーシ方式では物語の真実を確定させないため、最後は読者に解釈を任せるということもしばしばです。


【「変な家」の「あとがきリバーシ」は必要か】

リバーシに関する説明を終えたところで、「変な家」という作品に戻っていきたいと思います。

そもそも、私は読者の想像を阻害する情報は不必要だと思う派です。
(決して作品を否定するわけではなく「自分で想像するのが楽しい!」と感じるタイプであるということです。そうではない方がいることも重々承知です)

なので、わかる人にはわかるかもしれませんが、ホラー作品として話題である「近畿地方のある場所について」も、非常に楽しく読ませていただきましたが書籍にある『袋とじ』は、いらなかったな…という感想を抱きました。
(作者様は何も悪くないと思っていますし、あるからこそ怖いと思える方もいるとは分かりますが…私はダメでした…。)

タイトル:近畿地方のある場所について
著者:背筋

「変な家」では文庫本のあとがきにて、主人公の相談役であった「栗原さん」という人物が「主人公には言わなかったんだけど…実は…」という形であとがきされています。
コメントの寄稿という形で、書かれているためこれはこれで面白いのですが、私がこれを読んで感じた第一印象は、

じゃあ、もう一体何が正しいんだ…

ということでした。ここまで数ある情報を否定されると、
「それもまたひっくり返るんじゃない?」
と、疑心暗鬼になってしまうのです。


【作品を否定したいわけではなく、ただそのポイントを知りたい】

結局、私としての結論は「程度の問題」に、落ち着いてしまいます。
(「好みの問題」にしてしまうと結論が出ないので…)
このリバーシ方式は、私も大好きですし、私が小説を書くときも多用しています。
以前、私が制作した『ホラーASMR』でもこの方式です。

また、小説だけではなくこの方式は多くのところで利用されており、私が知る限りでは「さよなら絶望先生」などがあります。

さよなら絶望先生(漫画)
ラストは「どこまで読むか(話数)」で物語の印象が変わるように構成されています。

byアベヒサノジョウの感想

雨穴さんの作品は、ホラーとミステリーの良いところを最大限融合し、読者に解釈を任せつつも、きちんと物語をまとめ上げています。

このバランスを私も知りたいと思いつつ、試行錯誤する日々です。答えは出ていません…。

今回は雨穴さんの「変な家」を取り上げさせていただき、リバーシ方式について問題提起しましたが皆さんはどのようにお考えでしょうか。また、同じような作品をご存知でしたらぜひ教えてください!

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