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〔88〕白頭狸の時務随想

〔88〕白頭狸の時務随想
 梅雨明けがハッキリせず、何となく嫌な予感がしていましたら、やはり当たりましたなあ。例の「日韓為替スワップ」のことです。
 直近のドル円為替は1ドル144円です。つまり1円は7セントをやや下回りますが、過去には1円が14セントの時期もありました。
 これに対して直近のドル・ウォン相場は1ドル1320ウオンですから、ドルを介して1円は10・9ウォンに相当します。つまりウォンは目下9・2銭の価値しかないのですが、このほど日韓両政府の合意で100億ドルを限度に通貨スワップを行うことを内定したようです。
 現時点では時価による等価交換ですが、今後両通貨の対ドル価値の相対的な変化が予想されます。ウォンに対して円が高くなれば日本の損、逆ならば韓国の損になりますが、わが憂国の士が憤慨するのは、為替変動による損得よりも国民感情です。相手の韓国が国家社会を挙げて日本に敵対感情を有しており、当分これを改めないことが眼に見えているからです。
 これに加えて、韓国経済の惨状です。
 世界の最重要工業資材である半導体の生産において、昭和末期に全世界の55%に達した日本が、シリコンバレーを擁するアメリカ合衆国との摩擦を回避するために立てたのが、一般的半導体の生産を近隣諸国に譲与する戦略です。この戦略は表立って宣言することはなく、経済競争で自然に負けた形となっていますから、経産省に確かめても「その通り!」と答える訳はありません。戦略とはつねにそのようなもので、聞かれた時はトボケるのが当路者の重大任務です。
 そこで、わが国の当路者たち(誰なのか白頭狸には具体的な特定はできません)は量産品の生産を近隣諸国に譲り、きわめて重要な品種の半導体および半導体製造に関する機密だけは日本が死守したのです。
 近隣諸国とは主として韓国・中華人民共和国・台湾で、これら諸国に半導体の生産シェアを意図的に譲与したのは平成に入ってすぐの頃です。これを受けて全世界における半導体生産の中心が東南アジアに遷ったことは御高承の通りです。
 要するに、韓国産業界が好況を謳歌したのは、日本が対米依存脱却と自立政策の一環として秘かに実行した近隣富裕化政策の反射的利益を受けたものですが、これを覚る具眼の士が官民合わせて中韓にどれだけいたのか、正確なところは白頭狸も知りませんが、中共の国家主席習近平がよく知っていることは間違いないのです。これ最も肝心にして不可忘。
 ともかく、このように日本の対米政策の反射的利益によって繁栄を謳歌してきた韓国経済界は、あたかもベニヤ板で囲った仮設建築をきらびやかな電飾で飾った露店のようなものですから、今日の通貨ウォンの価値もすなわち「これと一般」(明治大正に流行した言い回しでご存じの方は少ないでしょうな!)なのです。
 かくのごとき国を相手に、進んで通貨スワップ協定を結ぶがごときは、国益を損する事これに勝るものは少なきに非ずや?
 この日韓スワップが実はいかなる國體戦略を籠めておるのか、取りあえずは彌勒の啓示を待つだけの白頭狸ですが、本日はここ迄といたします。
 
さて白頭狸が一隅を借りる南光院は先日来、夏安居(げあんご)に入りました。庵主爾應法師が外出を控え托鉢も慎んでおりますので。白頭狸は空腹に耐えつつ彌勒、毘沙門、弁天、文殊の真言を唱えております。
諸善子よ、今こそは彌勒を迎える千載一遇の機なり。
進んで喜捨したまえ。

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