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どんはれ、エロ雑誌に面接に行く〜女子の生き様〜

タイトルを読んで、ギョッとした方もおられると思うが、真面目な話なので最後まで読んでほしいと思う。

なんでもいいから、文章を書く仕事がしたいというか、私がまともに働いたのは文章を書く仕事しかないので、インターネットでライターの仕事を探した。そして、ある求人を見つけた。
なんかおかしいなとは薄々感じていたが、何がなんでも仕事を見つけなければと切羽詰まっていた私はエロ雑誌とはわからず面接を受けに行ってしまった。

ビルの中に入ると雑然としてはいたが普通のよくある雰囲気の会社だった。

しかし、待っている間に目の前に出された雑誌を見て、私は深いため息をついた。噂には聞いていたがこういうことってあるんだなと思った。

その雑誌は、風俗で働くことを希望する若い女性向けの求人雑誌だった。マスコミ関係の仕事ではいわゆる「エロ」を商品として扱っている怪しいところがあるのはなんとなく話には聞いていた。

裸の女性が掲載されている雑誌のキャッチコピーを読んで、一瞬頭に「?」が浮かび、そして、意味がわかって私はなんか馬鹿にされたような気持ちになった。

「〇〇なしの簡単なお仕事です」(〇〇のところにはドエロワードが入ります。記事の品位を保つためここには書きません)

まるで「残業なしの簡単なお仕事です」みたいなキャッチコピーつけやがって、ふざけていると憤りを感じたのは面接後しばらく経ってからだった。

面接を受けている間、私は仕事を得るために必死だったのでそんなことを感じる余裕がなかった。履歴書をきちんと書き、リクルートスーツをちゃんと着て、面接に臨んだのだ。

そんな私を見て、面接官は「はー」と呆れているようだった。でも、たまにいるんだよね、こういう人って感じで慣れているらしく、項垂れている私に

「ここは女性も働いているけど、あなたそんなタイプじゃないでしょ。履歴書はちゃんとお返しするからもう一度よく考えて、それでもここで働きたいと思ったらまた来てください」と言われた。

圧迫面接ならぬ、諭され面接された。

多分、この会社が扱っているのは「エロ」かもしれないけど、会社としてはまともに機能している感じがした。なので、勘違いしてきた私にもそれなりに誠実な対応をしてくれたのだと思う。

だから、ここでもいいかと思って働いてみようかと一瞬思った。

しかし、母のことを考えたら申し訳ない気持ちになり、「わかりました」と返事をして帰った。

自分が体売るわけではないのだからと思ったが、同じ女性として、女性が性搾取されるための手伝いをしていいものなのかとも思った。

そこを割り切ってできるほど、私は捌けた人間ではない。

女性の最古の職業は売春婦だと言われている。
需要があれば供給があるのだろう。それで、商売が成立するのも確かにある。

性産業そのものを全部否定する気にはなれないが、肯定する気もなれない。

それは、イエスかノーでは割り切れない、私が最も苦手とする、グレーな世界である。そこには本音と建前が入り乱れている。

ある芸能人がラジオ番組で女性の貧困を性搾取でいじって、炎上させていたが、その芸能人も自分を商品として売って、企業側や、製作者に選ばれることで生計を立てているので、そのような商品価値がある女性が自らを売ってお金を得ることに抵抗がなかったのかもしれない。一般の人より、感覚がズレていたのだろうと思う。

女性は男性に選ばれる性である。受動的な性であり、ときにモノのように扱われるのだ。それが、どれほど無神経なことなのか、そこまで想像できなかったのだろう。

この面接の話を女性の知り合いに話したら、笑ってくれるのかと思ったら真剣な顔で「そういうことってあるよね」と同情してくれた。
その知り合いも就職氷河期世代で、就職にはとても苦労した人だった。
私は、その反応を見て、自分が傷ついていたことを初めて自覚したのだった。

女性として選ばれるための努力もときには必要だと思う。しかし、女性が自らの才能や能力を活かして、能動的に職種を選択し、働いてはいけないのだろうか。
家事や育児や介護だけが女性の仕事ではあるまい。

男性が適しているとされている仕事が得意な女性も多くいるはずだ。
十分な情報や、教育が与えられず、男性の下働きみたいな仕事ばかりさせられ、洗練されたスキルが身に付かず、悔しい思いをしている女性たちはたくさんいる。

そして、女性の貧困を性搾取の問題にすり替えられ、性の問題にしてしまうとショッキングなため、そこばかりが目につきやすくなる。そうすると、気づけば、女性の貧困の問題がうやむやにされているのだった。
女性の貧困が真剣に議論されないことに私は怒りを感じる。


↓こちらでも記事を書いています。興味のある方は読んでみてください。






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