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日本画に使われる『岩絵の具』ってどんなもの?

日本画に使用される絵具といえば『岩絵具(いわえのぐ)』です。
馴染みのない方は「なにそれ?」と思うでしょうね。
絵具の中でも広く知られているものは、小・中学校の授業で一度は手に触れたことがあるような、水彩絵具やアクリル絵具ではないでしょうか。

岩絵具の粉末

岩絵の具とは

岩絵具は、一般的に思い描くような絵具の印象とは異なります。
ペースト状の見た目ではなく、鉱石を砕いた粒子状の見た目をしているのがわかると思います。
もちろんこれだけでは接着性は無いため、膠液(にかわえき)という接着剤のようなものと混ぜて使用します。

膠(にかわ) 武蔵野美術大学造形ファイルより

岩絵の具の種類

岩絵具には、天然鉱物でつくられた「天然岩絵具」、人工的につくられた「新岩絵具」や「合成岩絵具」があります。

【天然岩絵具】
天然の鉱石を砕いて作られた岩絵具。
希少で色数が少なく高価となりますが、膠液と馴染みやすく独特の深みのある色が特徴です。
熱を加えて炭化させることで色を変化させることも可能です。

【新岩絵具】
ガラス体質と金属酸化物を混合し化学的にできた岩状の塊を砕いた絵具。
変色しない特性があるため耐久性に優れています。
人工的に色を作り出せるため、色数が多いというのも特徴です。

【合成岩絵具】
水晶や方解を砕いた粉末に、染料で特殊着色してつくられた岩絵具。
発色が非常に鮮やかなのが特徴で、中間色や蛍光色などの色もあります。
絵具の比重が同じなため、合成岩絵具同士であれば簡単に色を混ぜて使うことができるのも特徴です。

岩絵の具の混色

岩絵具の混色(色を混ぜる)を行う場合は、粒子番号の同じ絵具か粒子番号の近い絵の具を用います。
岩絵具は石の結晶・粒子のため、粒子番号や材質の異なる岩絵具同士を混色すると、比重の違いによりどちらかが浮いてしまったり沈殿したりなど、混色の効果が失われてしまいます。

材質や粒子番号の異なる岩絵具

岩絵の具の魅力

岩絵具は、チューブから出してすぐに使えるような水彩絵の具とは違い、扱いが難しいのが難点です。
しかし、光の当たり方による結晶の輝きや独特の深みのある色味などは、他の絵具では表現できない美しさです。
扱いが難しいのは、良いように捉えると『他者との違いが出せる、表現の幅が広い』と言えるのかもしれません。
油絵や洋画を専門にしていた画家の中にも、岩絵具の面白さに魅了されて日本画へ転向した方もいるくらいです。
扱いが繊細で難しいからこそ追及したいという、プロの探求心を刺激するような面白さと魅力が、岩絵具にはあるのかもしれませんね。


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