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星の出ているうちに帰っておいで*手放し*she said epi45

 ユウが私のこと本当に嫌いになって、なんでカコなんかの事好きだったのか?ってなってるんじゃないかと思ってた。

 ユウとはもう終わったかもしれないという寂しさを感じていたけれど、それは自分の中だけの思い込みだった。やっぱり自分をいじめる思考はそう簡単に治るもんじゃないなって、ユウの声を聞いて笑ってしまった。

 ユウは再会してからも、「俺が離婚を早めようと思ったのは、カコがいるからだ」って言っていた。私はそれはずっと違うと思っていた。私が居なかったら離婚しないなら、その方がいい。私のせいで家族を崩壊させてしまううなんて嬉しくもなんともない。けど、そうしないとユウと一緒に暮らせない…。ずっと複雑な思いがありながらも、ユウを焚きつけていたと思う。

 離婚が進まないのはユウの怠慢だなんて…。私のことを大事に思っていないからだなんて。人の家庭のことにまで自分の意見を言っては大喧嘩になっていた。

 ユウが私を遠ざけたり嫌いになった方がいい。ユウと一緒になりたいと思いながら実はユウと一緒になることが怖かったんじゃないかという気がしている。

 でも、私はそんなに心優しく慈愛に溢れる女じゃない。私が死ぬ時は、ユウに隣に居て欲しい。それまで、今ならあと長くても30年じゃない?少しでも長く一緒に暮らしたい。少しでも若い私で一緒になりたい。だから、早く私のところに来てよ。醜く、どす黒い気持ちがあるのも私。どっちも私…。

 でも、とりあえず私にどうこうできることではない。ぐちゃぐちゃな気持ちに一喜一憂していた私は、小さくなっていた。

 ユウと年末の挨拶も出来た。明けましておめでとうも言い合えた。今年もみんな元気に笑って新しい一年を迎える事ができて嬉しい。

 年始にユウと少し会うことができた。その後、電話もしていたけれどまた小さなことで言い合いをしてしまう。それから、また完全サイレント…。

 手放しては戻りを繰り返す。繰り返す度に、心は穏やかになっている。あれだけ、恨んだり嫉妬したり、執着していたのに、寂しさまでもフラットになっていた。苦しさも過去のものになっていて、ユウを信じるとか待つとかも思わなくなっていた。

 ユウのことを心で大切に想いながらも、頭の中を占める事はなくなっていた。ユウのことは嫌いになることはない。好きな気持ちはそのまま。この思いはきっと繋がっている。そんな気がしていた。

 ユウが傍にいなくても、会えなくても、声を聞けなくても、なんか大丈夫。意味も答えもない。私は今この瞬間に幸せを感じて“為すべきこと”をしながら、自分に丁寧に生きようと思っていた。

 

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