瓜に爪あり、爪に爪なし。3
前回の続き。
私は人の死を受け止めるという経験をしたことがほとんどなかった。だから、先生の死をなかなか受け止めきれずにいた。
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高校2年生の6月
先生のおくやみから約1か月後
6月は中間考査の後すぐに体育大会があった。先生は、この体育大会を楽しみにしていた。去年も「体育大会は我が校の良さが見えますからね。一番楽しみな行事です。」と言っていた。今年も体育大会が楽しみだと4月から既に言っていた。
先生のいない体育大会
これ以上にない快晴に見舞われた。綺麗な青空だった。先生のおかげで晴れたのかな?と思いながら靴ひもを結んだ。
そして、顔を上げると
一筋のひこうき雲がくっきりと見えた。
あのひこうき雲は・・・先生かもしれない。
私はひこうき雲に笑いかけて、グラウンドを駆け抜けた。
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以降、私はひこうき雲を見る度に先生に見守られている気がするようになった。ひこうき雲のおかげで私は、人の死を受け入れることができた。
時は流れて高校3年生。
土日は友達と受験勉強をしていた。毎回と言って良いほど必ず、「もし今でも先生から数学を教わっていたら…」と言う話をしていた。こんなに先生の話を毎週しているけど、そういえば先生は私のこと認識してくれてたっけ?120人の生徒受け持ってたら私のことなんて知らないよね。
高校3年生の浪人が決まった春休み。
部屋の片付けをしていた。浪人生になるにあたってもう一度勉強道具の整理をした。
すると、青いoctopusのハンコ(再提出)や赤いOKのハンコ(再提出なし・合格)が表紙に押された『二次関数』のワークを見つけた。懐かしいな〜と思いながら、パラパラめくっているとメモが挟まっていた。
ワークを持った手が震えた。
『遅れてすみません ノムラ』
と書いたメモの下には、
『勉強も部活も生徒会も大事だよね。』と
青いあの筆跡で書かれていた。
先生、私のこと知っててくれてたんだ。
生徒会をしてたことも。部活をしてたことも。
文面から明らかに課題を出さないことを怒られているのだが、嬉しかった。
そして、先生の遺した教訓の元、トイレの綺麗な予備校を選んだ。
最後に
私は先生にもう一度会ったら言いたい。
「先生!今までありがとうございました!!
私の大学のトイレは綺麗ですよ!」
瓜に爪あり爪に爪なし
終わり.
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