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日常から物流を学ぶ〜寿司屋で学ぶトヨタ生産方式②「ジャスト・イン・タイム(JIT)」

はじめに

「物流」は、日常的なことからイメージして理解を深めると良いとお伝えしてきました。
前回のトヨタ生産方式の「自働化」に引き続き、トヨタ生産方式の「ジャスト・イン・タイム(JIT)」について説明していきます。
物流業界では『JIT物流』とい言葉が多く聞かれるかと思います。
生産関連物流に携わっていない方にも具体的なイメージを持ちながら、理解がしやすいように寿司屋を題材にして説明をしていきます。

トヨタ生産方式の2つの考え方

トヨタ生産方式とは

「異常が発生したら機械が直ちに停止して、不良品を作らない」という自働化の考え方と、「必要なものだけを流れるように停滞なく生産する」考え方であるジャスト・イン・タイムの2つの考え方が柱になっています。

「ジャスト・イン・タイム」(JIT)

〜必要なものを、必要な時に、必要なだけ作る〜

ムダ・ムラ・ムリを徹底的になくし、良いものを効率的に作ります。
ムダは「在庫」「作業」「動作」「不良」「手待ち」などが絡み合い
さらに大きなムダを生み出します。
不良をつくらず、ムダをなくすことにより効率を高めます。
また、工程を流れ化し、ピッチをきめ、後工程引き取りをするなどが
必要な要素となります。

寿司屋のタイプ

まず寿司屋には、大きく以下のようなタイプがあります。
老舗のカウンター越しの寿司
握られた寿司が回る回転寿司
職人がみえるハイブリットな回転寿司
完全オーダー性の回転寿司?

寿司は名職人の手仕事を味わうものと、機械・設備で効率的にリーズナブルに味わえるものがあり、それぞれに付加価値があります。

寿司屋を見てみる(JIT)

老舗のカウンター越しの寿司屋

カウンターに座って、大将を目の前に食べたいネタをお願いしたら
その場で握りたてを美味しく頂ける。
短いリードタイムで『今、食べたいネタを、食べたい分だけ、すぐ食べられる」つまり「必要なものを、必要な時に、必要なだけ」食べられる。
お客様が食べる分だけを握るので、作りおきはありません。

回転寿司店

あらかじめ見込みで握られた寿司が、皿に乗ってレーンの上を回っている。
食べたいものが、なかなか回ってこない。(長いリードタイム)
食べたくないものが、ずっと回っている。(滞留在庫)
回っている間に乾燥して、食べたいと思わない。
ジャスト・イン・タイムの考え方視点では
レーン上にムダな在庫があり、
不要なネタを握るムダな作業があり、
取られることがないまま、レーンは回り続けるムダな設備稼働があり、
回っている間に鮮度は落ち、品質は劣化して不良在庫となる。
これでは作業効率を高めてもムダが膨らみ、経営自体が圧迫する。

最近の回転しない回転寿司店

食べたいものを画面で選べて、注文を受けて握り、目の前に握りたてが届く
お客様のニーズに合わせて質の良いものを短いリードタイムで提供できる。
ジャスト・イン・タイムの考え方視点では
在庫が減ることで、コスパ良く提供ができる。
また、タブレットの注文データから必要数を生産し、
基準在庫から後工程(お客様)によって、ひかれた在庫分(ネタ)の在庫補充計画や発注計画、生産計画につなげ、適正在庫(鮮度よく回転できる)の維持をしています。
タブレットを電子カンバン方式とイメージすれば良いかと思います。

寿司屋、回転寿司店から学ぶ

寿司屋、回転寿司店にいった時には、少し視点を変えてネタ、コンベア上、オーダーから食べるまでのプロセスなどの物事を見てみるのも良いかなと思います。
ムダ・ムラ・ムリを徹底的になくし、良いものを効率的に作る。という考え方を「目で見て」理解していけると思います。
以前の回転寿司店はどうだったかな?と振り返ってみるのも進化の過程が理解できて良いかもしれません。

物流での活かし方

物流では、「必要なのもを、必要な時に、必要な分だけ配送する」ということになります。
「出荷する分を、ピッキングして、短いリードタイムで出荷する」
「出荷に当てられた分だけ、速やかに補充する」
ということを多頻度の小口出荷と小口補充していくことで最適化します。
これにより在庫を最小限に抑えられます。

物流センターでの「ジャスト・イン・タイム」の活用

出荷に合わせた仕事

安心のために先の出荷予定のものを準備しておくなど、今やらなくて良いことをしてしまうと、準備品のスペースも必要になり、変更や修正が加われば、やり直しのムダが発生します。

在庫の低減

在庫の最小化によって、物流センターでは保管スペースが小さくなり、在庫を管理する工数も低減します。
棚卸しや管理台帳管理、ロケ移動なども大幅に低減できるので全体のコスト低減につながります。

資材管理の適用

梱包資材がありますが、使用量と納入リードタイム、納入ロットから梱包に使用した分だけをカンバン方式などで発注し、最小在庫で回転すれば、必要以上の資材を持つことなく、資材の保管スペースは最小化し、作業スペースへの有効活用につながります。

在庫とは資産

在庫が多いと、急なオーダーにも対応できるという安心感はありますが、売り上げにつながっていない資産ですから、そこまでの人、時間、材料などに必要とした費用は回収できていないものです。
「安心」という感覚で、在庫を持ちすぎるとオーダーが追加された時には対応できますが、オーダーが下がれば長期滞留在庫になります。
食品などはもちろんですが、自動車部品などでも3ヶ月も滞留すれば品質に不安のあるものとして扱われます。不良資産になるということです。
その不良資産の管理のために多くの管理コストがムダになっているということです。

物流センターは人の知恵の活用で成長する。

今回は、トヨタ生産方式の2つの考え方についてふれてきました。
考え方を理解するには、しくみをイメージしてみます。
それを自分の物流センターのアイテムにあてはめてみます。
それによって問題や課題、メリット、デメリットなどが具体的に描けるようになってきます。
システムや設備機能の元となっているものは作業者の手作業であり、知恵、ノウハウを活かして開発されています。
しくみを理解して、システム運用をしていくと新たな知恵が生まれてきます。それを開発に活かして下さい。
現場の気づきを吸い上げて、カタチにしていくのも「しくみ」です。
物流の仕事は、「しくみ」づくりとその運用だと思っています。
物流現場の培ってきた知恵を活かして、さらに工夫を加えて、それを「しくみ」として仕事につなげます。
「しくみ化」する事で、サプライチェーンの物流拠点機能が円滑に動きます。

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