ラブストーリー 下
「結局、夏祭りには行きませんでした。僕と彼女の間にその話題が出ることはなかったのです。しかし、お互いわかっていました。蝉が儚さであるように、青空が青春であるように」
茜に晒された彼は、私にそう話した。私に言い聞かせるように、あるいは彼自身に言い聞かせるように。
「けれども、一度だけ、青春が零れ落ちたことがありました。夏休みが始まる前日、つまり終業式の日ですね、大掃除の後、全校集会が始まるまで時間があるので、皆は思い思いに喋っていました。私は、そのときあまり勉強する気も起きなく