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クラウン*ベスのアメリカ体験記④

前回までのあらすじ:エリザベスは日本でスティーブ・ロウと出会いコンビを結成しました。やがてついに木下サーカスと契約を結び、サーカス団の一員となったのです。


木下サーカスでのパフォーマンス

木下サーカスは、ワンリングショーです。
ワンリングショーの良いところは、規模は小さいけど観客のフォーカスがより得られること。ステージショーに近い雰囲気です。
RBBBCサーカスのような巨大なスリーリングよりも近距離なのでアットホーム感があり、観客もパフォーマンスのエネルギーを間近で感じることができます。

私にとってクラウニングは、観客をどうやってサプライズしようかというワクワク感です。
サーカステント内の観客のリアクションが直に伝わってくる中でのクラウニングにどんどん夢中になっていきました。

当時木下サーカスでクラウンの出番は、一回の公演で平均8回くらい。幕間担当でのチャレンジは沢山ありました。まず時間が短い事。オープニングギャグは3分、2部最初の猛獣ショー後の幕間は4分。それ以外は30秒から2分以内のものがほとんど。もう少し時間をかけてギャグをビルドアップして最後にブローオフ(落ち)でサプライズできたらいいな、と思っていました。

また、照明はオープニングギャグ以外は暗転中スポットライトが2つのみ。2つのスポットライトのみでギャグの全体を照らせないギャグは、内容をちゃんと伝えるのに苦労しました。
猛獣ショーの後は、何人ものクルーがステージリングを昔ながらの竹ぼうきで掃除するので埃やおがくずまみれの中のギャグ。

木下サーカスのスケジュールは約2ヶ月公演で2週間オフ。楽しかったのはこの2週間の間に次の公演でやる新しいギャグを作ること。毎場所、次のドレスリハーサルに間に合うようにいくつも新しいギャグを披露しました。すごくバカバカしいものや意味がイマイチわからないようなギャグも沢山あったけど、作ってお披露目するのが楽しかったんです。

オフの時にいろいろ試したメイク

ウスイさんのこと

木下サーカスの団員さん達と一緒にショーができた事は貴重な体験になりました。

入団したとき動物の世話をしていたかわいらしいおじいちゃん、実は1955年より本場のRBBBCでワイヤーウォーキングの花形芸人として活躍していたウスイさんというすごい人でした。(勿論木下サーカスでも花形芸人でした。)
「RBBBCサーカスにいた時はすごくよくもてなしてもらった」といつも言っていました。
そして数年後私が本場アメリカのRBBBCサーカスで働いている時、オフの日に何気なく入ったアンティーク店の中に昔のサーカスの本が置いてありペラペラめくるといたんです、ウスイさんが! 小柄でクールでとても若々しい凛としたウスイさんの白黒の写真を見ていて木下サーカスのおじいちゃんの顔がオーバーラップして、ウスイさんは本当に素晴らしい芸人さんだったんだと改めて感じました。

サーカスの本の中のウスイさん

ライフ・ウィズ・ドックス

もう一つ木下サーカスでの忘れられない思い出は、犬を飼った事です。子供の頃からの夢はアメリカ映画のように犬と一緒に生活をしてみたい、という事。クラウンになってからは一緒にクラウンとしてギャグをやってみたいと思うようになったのは私にとってはごく自然な事。ジム・キャリー主演の映画「マスク」を見た時に出演していた犬に惚れてしまい、アメリカのブリーダーからの同じ種類の子犬を2匹飼う事にしました。
木下サーカスで犬達はパフォーマンスをしなかったけど、調教について猛獣ショーのパフォーマーに色々聞いたり本を読んだり頭の中は犬の芸でいっぱい。何より可愛いワンちゃん達といつも一緒。あこがれの「Life with dogs」で毎日がハッピーでした。

木下サーカスのコンテナハウスで

ミッシング・アメリカ

当時はインターネットやスマートフォンがない時代。世界のサーカスやクラウンの情報源は「サーカスレポート」という小さい冊子のみでした。レポートが届くと隅から隅まで読んで知り合いのクラウン達がどのような活躍をしているのか想像しました。

アメリカの友人は誰も訪ねてこない島国の日本で、クラウニングが好きだからずっとパフォーマンスをしていたスティーブは、木下サーカスで丸3年働いた頃、次第にアメリカが恋しくなってきます。
花博からすでに7年間日本でのクラウニング。
アメリカへ帰って少し充電してから、今度はアメリカでクラウンをしようと決心しました。

そしていよいよアメリカへいくことになります。

続く・・・


書いたのは、

エリザベス

1990年CCJ2期卒業生。7年間日本でクラウンパフォーマンス後渡米。アメリカ、カナダで10年間クラウニングを続行。その後10年間マクドナルドのクラウン、ロナルドのアシスタントを務める。

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