【読書ログ】論点思考


書籍情報

タイトル:論点思考
著者:内田和成
ジャンル:問題設定、問題解決、ビジネス
オススメする読者層:問題発見力を鍛えたい方、指示通り仕事をしているのに評価されない方
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解くべき問題を考える「論点」設定の考え方がテーマです。問題解決の最上流であり、的確な問題解決策を提案、又は実行したにも関わらずいまいち成果が上がらない場合はそもそも論点設定がうまくいっていない可能性があります。興味のある方はぜひお読みください。

要約

論点思考とは

【論点思考】
論点とは「解くべき問題」のことであり、その解くべき問題を定義するプロセスを論点思考と呼びます。

問題解決のプロセスはいくつもの論点候補の中から本当の論点を設定し、その論点に対するいくつかの解決策を考えだし、そこから最もよい解決策を選び、実行していくという流れで進みます。つまり、論点思考は問題解決プロセスの最上流にあります。

最初に論点設定を間違えると、間違った問題に取り組むことになるので、その後の問題解決の作業をいくら正しくやったところで意味のある結果は生まれません。したがって、短期間で答えを出すためには最初の論点設定がきわめで重要になります。

【問題解決のカギを握る最上流工程】
論点設定はマネジメントレベルで行われることが多く、それまでは日常業務で必要になる機会は多くないため、学んでも仕方がないと考えるかもしれません。しかし、それは2つの理由で間違いです。

まず第一に、日常の些細に思える仕事の中にも、必ず問題解決のヘソとなる論点は存在します。したがって、この論点を意識して仕事を進めるか進めないかで、仕事の結果に大きな違いが表れます。

上司から言われた通りの仕事をやったのに、なぜか評価されなかったという経験がある方もいるかもしれません。これは論点がずれているせいです。

逆に、上司からいわれたことをやっていないのに、なぜか上司の満足度が高い、一見要領がいいだけに見える方は、実は論点をきちんと押さえているものです。

マネジメントになる前から論点思考を身に付けるべき理由の2つ目は、論点思考の巧拙は実は経験が大きくものをいう点にあります。したがって、若いうちから論点、それも最も重要な大論点を見つけ出す訓練をしておかないと、いざマネジメントになったときに問題解決がうまくできません。

論点思考のステップ

【論点思考の4つのステップ】
論点思考は以下の4つから成り立ちます。
①論点候補を拾い出す
②論点を絞り込む
③論点を確定する
④全体像で確認する
つねにこの4つのステップで行うわけではなく、明確に①~④の順で行うわけでもありません。時と場合に応じて必要なステップのいくつかを使い、順番もいったりきたりします。このうちの①~③が論点を設定する部分であり、④は主に整理あるいは確認する部分です。

【①論点候補を拾い出す】
論点を設定する際に省略できないステップです。「本当の論点がなにか」を探るために、まずどんな論点がありそうかをリストアップする必要があり、これが論点思考の出発点になります。

問題解決が速い人は、本当に解決すべき問題すなわち「真の論点はなにか」と常に考えています。具体的にいえば、「なにが問題なのか」「それは解けるのか」「解けるとどんないいことがあるのか」を考えます。

【②論点を絞り込む】
論点を絞り込む際にポイントが2つあります。1つは「当たりをつける」ことです。当たりを付ける場合には経験や考察もとに仮説を駆使することが有効です。考えられる項目をしらみつぶしに検討しているとタイムアップになってしまうためです。

また、「白黒つけられそうなところからアプローチする」「仕事の依頼者の関心が低い分野を探る」ことも有効なケースがあります。

論点を絞り込む際にポイントのもう1つは「筋の善し悪しを見極めること」です。論点らしきものが目の前に現れたとき、著者は3つのポイントで問題を検討するといいます。
✔ 解決できるか、できないか。
✔ 解決できるとして実行可能(容易)か。
✔ 解決したらどれだけの効果があるか。

筋のよい人の思考は長期的、大局的、広域的です。逆に筋の悪い思考パターンは、短期的、局所的、近視眼的、場当たり的です。上記の項目に照らして、筋の善い論点に絞り込みましょう。

【③論点を確定する】
論点を確定するために、「これが論点ではないか」という仮説を立てる方法には次の三つがあります。
✔ 質問して相手の話を聞く
✔ 仮説をぶつけて反応を見る
✔ 現場を見る

いずれにしても、大切なのは与えられた問題点を鵜呑みにせず「本当の論点はなにか」と考える態度です。

また、論点を確定するために上記と並行・又は続けて行う手順として、「依頼主の真意を探る」「引き出しを参照する」「論点を構造化する」ことなどが紹介されています。

【④全体像で確認する】
論点が少しずつ浮かび上がってきたら、論点の構造化を行います。構造化の方法に正解はありませんが、紙に書いて論点を整理・構造化する方法が多いといいます。

例えば、ノートに論点候補を思い付くままに箇条書きにし、そこからグルーピングを行い、論点候補を絞り込んでいく方法や、論点を思われるものを平面にちりばめて書き、その中から相互に関連するものを線で結んでいく方法などがあります。

論点の構造化の際には、上位概念の論点を考えることも重要です。これにより、横にある論点が浮かび上がることがあります。例えば、新規顧客開拓を考えるよう指示された場合、その上位概念の論点が「売上アップ」か「業績不振から来る利益減少を補う手段」かにより、並列して考える論点の候補が異なってきます。

論点思考力を高めるために

【問題意識をもって仕事をする】
論点思考を的確に行う能力を身につけるには、日ごろから「本当の課題はなにか」と、とことん考える姿勢を通じて、経験を積む必要があります。こういう姿勢があるかどうかで、ものの見方、考え方がまるで違ってきます。

既に幹部や上司が設定した課題や論点が与えられ、自分が作業を進めるにしても、上位の課題・論点というところまでさかのぼって自分の問題として考えようとするかで、自分の仕事に対するオーナーシップや、目の前の仕事に取り組む上での視野の広さ、視座の高さに大きな差がでます。

問いの設定こそが重要であり、与えられた問題が「真の問題であるか?」と疑ってみることが重要です。それが論点思考の第一歩となります。

【視点・視野・視座】
著者は論点思考力を高めるうえで、視点・視野・視座の三要素を大事にしており、このうちの視野と視座はすぐにでも訓練できて成果もあげやすいといいます。

「視野が広い」とは、自分の眼をいつも見ている方向だけではなく、360度の視野でものを見ることができる人のことをいいます。論点思考で大事なことは、つねに広い視野でものを見ることで、これまで過ごしていたものに注意を払うことです。

視座とは、物事を見る姿勢や立場のことをいいます。2つ上のポジションに就いているつもりで仕事をすることが重要です。1つ上ではなく、平社員なら係長ではなく課長、課長ならば部長ではなく本部長、平の取締役であれば、常務ではなく社長の立場でものを考えます。

1つだけ上のポジションから見ようとすると、自分自身のことと関連付けて物事を見てしまったり、どうしても自分の利害が絡みがちです。2つ上から見ようとすると、自分の立場を離れて考えることができます。

2つの上の立場でものを考えることで、大論点が見えやすくなるほか、自分自身の将来像が描きやすくなるメリットがあります。毎日の仕事の繰り返しの延長線上には、あなたの遠い将来は浮かび上がってきません。一方で将来なれるかわからない社長を想定して、自分のキャリアプランをつくるのも無理があります。

2段階上のポジションを想定して、それに向かって自分に足りないスキルや経験はなにかを考えたり、あるいは自分がその立場になったら、どんな風に仕事をやれそうか、変えてみたいかを考えることならさほど難しくありません。

感想

上流工程へ遡る

以前にこちらで要約したコンサルが「最初の3年間」で学ぶコトという本の中で、仕事のお作法として暗記すべきものとして以下が紹介されています。

論点 → サブ論点 → TASK → スケジュール → 作業 → アウトプット

一旦タスク・作業が割り当てられたとしても、必ず論点、及びそれを分解したサブ論点に割り戻すことを忘れるなという教えです。

問題解決するためには具体的なタスクや成果物も当然必要ですが、そもそも解くべき問題を間違えていたり、解決しても成果の出にくい問題を対象にしてしまっていると、どれだけリソースを投入したり素晴らしい人員や能力が割り当てられても無駄に終わってしまいます。

そのためには本書でいう論点設定が極めて重要になりますが、論点へ遡ると、基本的に抽象度が上がり、今までの関係者のみへの働きかけでは解決できない問題になったりします。すると必然的に「今まで通り」ではなかなかうまくいかないことになります。

少し脱線しますが、座右の一冊に細谷功さんの「具体と抽象」という本があります。とっつきづらい「抽象」というものの意味を捉え直して、より効果的に考えたりコミュニケーション力を上げたりするのにとても有効です。読書ログも投稿しているので興味があればぜひお読みください。
https://note.com/clsade/n/n4535785eb463

ずっと同じポジションで仕事を続けるわけにもいかず、昇進にせよ転職にせよ、いずれ環境が変われば取り組む問題の性質も変わっていきます。そんな時に、目の前のタスクをそのままこなすだけでなく、論点へ遡ることが基本動作になっていれば、きっと困難にも立ち向かいやすくなり、仕事も楽しくなるのではないかと思います。

色々な視座を経験してみる

担当者の視座で仕事をしていると、自分の担当範囲への影響が出る事に抵抗を感じてしまいがちですが、担当にしても部署にしても会社にしても、基本的に物事はほぼ必ず何かしら別のことと繋がっているものです。

視座を上げれば、この「繋がり」を捉えやすくなるように思います。より多くの変数が視界に入るようになることから、考えることも芋づる式に増えてしまい大変にはなりますが、より大きな問題を解決するには避けて通れません。

視座は必ずしも高いほど良い、低いのが悪いというわけではないかと思いますが、低すぎると目線が自分だけに集中しがちで、そんな状態で本気を出すと自分勝手な振る舞いが増えてしまいがちのように思います。

また、視座を上げてより大きな問題の解決に成功できれば、それに付随する小さな問題もまとめて片付いたりもします。視座を高くして前向きに行動していれば共感してくれる仲間も増えやすいかもしれません。

もともと自分があまり視座の高い人間ではないがゆえですが、少しだけ視座を高くすることを試してみるのも悪くないように思います。

何を問うか

要約では触れませんでしたが、本書の中で「シャチについての4つの問い」というものが出てきます。
①シャチは魚か?(=仮説に基づいた質問)
②シャチは魚か哺乳類か?(=白か黒かをはっきりさせる論点)
③シャチは何類か?(=オープンな論点)
④シャチはどんな生物か?(=ただの質問)

まず、④の質問は回答の候補が果てしなく広く(大きい、海に住んでいる、獰猛であるなど)、収拾がつかなくなりがちなため辞めた方が無難です。

逆に①は論点を絞り込みすぎていて、他にある論点を見落としたり、あるいは考えようとしなくなるリスクがあります。また、指示を受けた担当者が論点を考えようとしなくなるリスクもあります。

ゆえに本書では②と③を使うべきといいます。このように、どのような問いを持つかは非常に重要な論点と思います。常に効果的な問いを出せるよう訓練したいところです。

論点思考は仮説思考とセットで使うことでより威力を発揮します。興味ある方は仮説思考の読書ログをお読みいただけたら幸いです。
https://note.com/clsade/n/ne0b8eaf6d7dc

最後までお読みくださりありがとうございます!

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