風のテラスで

テラスに出て風を浴びた。

風が梳くように髪を揺るがせていく。

両の腕を抱くようにして掌で包めば温もりがそこにある。

今ここで死に絶えても同じようにきっとこの髪を風は梳いていくだろう。

そう思って髪を見れば、生きてる事の意味も夢も希望も罪も、揺らぐ毛先が幸せだった思い出だけを連れてくる。

生きているから涙もあたたかい。

棺の中では涙さえ流せない。

あの時終わっていればよかったのだろうか。

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