見出し画像

原点回帰《Club with Sの日 第6回レポ》

7月28日朝。
出勤前。
今日はClub with Sの日だなぁ。待ちに待ったファッション特集だなぁ。何を話そうかなぁ。
などと考えている。
アイスコーヒーを飲んで目を覚ましながら、Twitterを開く。
タイムラインを眺めていると、突然iPhoneを持つ手が硬直した。
そこに記されていた「カミングアウトしてしまいました」の文字。
ギョギョ!!
カフェインよりも強い作用で目がシャキッとする。
こ、れ、は……

カミングアウトはマイノリティにとって悩みの種のひとつ。
調和を尊重する世界では、様々な偏見が付いて回るから。
身の安全のために自分を偽ったり、隠れて過ごす人もいるだろう。
自分のセクシュアリティやジェンダーをオープンにするのはとても勇気のいることだ。
自分はカミングアウトした人を心から祝福したいし、全力で肯定したい。
そして、同じくらい強調したいことがある。
それは、カミングアウトは本人の自由だ、ってこと。
カミングアウトしたから偉い、とか、カミングアウトできない人は情けない、なんて絶対に思わない。
なぜなら、その人にはその人だけが背負っている背景があるから。
生活している環境、所属しているコミュニティ、関わっている人々、それらすべてと接触してきた時間etc……
本人の意思ではどうにもできないいくつもの要因が、決断に影響する。
相手のバックグラウンドを完全に把握することはできないし、勝手にあれこれ推測したくもない。
ただ、自分とは違う人生を歩んできた、ということは理解できる。
だから、自分が本当に尊重したいのは、一瞬の行為としてのカミングアウトではなく、その人がジェンダーやセクシュアリティについて向き合ってきた時間すべてなんだ。
……って、あれ、いったい何の話をしていたんだっけ?

そうだ、で、今、自分になにができる?

そんなことを考えていたら出勤の時刻が迫ってきていて、慌ててごはんを胃に詰め込み、仕事場へ。

夕方。
予想通り。
仕事中も、頭の中はカミングアウトのことでいっぱい。
本人の様子が気になって仕方がない。
さて、どうしたものかな。
……って、自分はいったいどの立場なんだ?

夜。
Club with Sのミーティング前の打ち合わせ。
いつもなら「今回はこんなテーマだから、こういうことについて掘り下げてみたくて……」なんて話しているけど、今日はそれどころじゃない。
と思っているのは、自分だけではなかった。
運営メンバーの相方も同じことを考えていたらしく、二人で一緒にソワソワしていた。
今、カミングアウトと向き合っている本人よりドキドキしている。
もう、他人じゃないんだ。
つい最近まで全く知らない人だったけど、コミュニティで出会って、時間を共有した。
仲間であり、兄弟であり、この難しい社会を共に生きる大切な存在。
無視するわけにはいかないんだ。
Club with Sの本領発揮ってとこかな。

21:30 Zoom開始。
「みなさん、本日もお疲れ様でした!! えっと、今日は少人数なのかな?」
ミーティングが始まってから言う、
「じゃあ今回はフリートークでいこうか(笑)」
このゆるさが好きだ。

少ない、と言ってしまったけど、違う。
今までが多すぎたんだ。
6回目になって、良くも悪くも慣れが出てきた頃だった。
このコミュニティは、誰もいないところから、“たったひとり”に向けて生まれた空間。
立ち上げた当初は、誰も来ないかもしれん……と不安だったし、求めている人に確実に届けられない、発信力の弱さが不甲斐なかった。
だけど、メンバーが次々に集まってくれて、応募フォームの回答が追加されるたびに胸が弾んだ。
今まで開催したオンラインミーティング、参加者ゼロだったことがない。
これって本当に本当にすごいこと。
そして、どんなにメンバーが増えても、一人ひとりに寄り添うことを大切にしたい。

カミングアウトした人。
カミングアウトしない人。
カミングアウトしたいけどできない人。
カミングアウトするかどうか迷っている人。
ジェンダー・アイデンティティが不確定で、誰かに伝える言葉を持ち合わせていない人。

全員を、待っています。
全員を、受け入れます。

答えのない問いに挑む意思を、“わからない”ものを素直に“わからない”と表現できる安心を、僕らは守り続けていきたい。

……って、そういえば、ファッションの話はどこへ行った?
いやいや、したよ、ちゃんとしたよ(笑)
ストリート・ファッションとか、バギースタイルとか。
それに、ファッションはいくらでも広げられるテーマだし、一回で語り尽くせるとは思っていなかったからさ。
焦らず、のんびりやっていくつもり。

では次回、ファッションとジェンダーについて、とことんお話しましょう。



読んでくださってありがとうございます。いただいたサポートは【Club with S】運営メンバーがジェンダー論を学ぶ学費(主に書籍代)に使わせていただきます。