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YOU & I VS. THE WORLD《Club with Sの日 第11回レポ》

9月1日。
この文章はClub with Sの日のミーティング前に書いている。
その証拠に、ミーティング終了後すぐに投稿されるはずだ。
Club with SでのZoom開催後も考えは揺るがないと確信して、書いている。
だから、これはレポじゃない。

the elephant in the room

高3の時。
卒業間近という頃。
最後の生物の授業中。
突然、先生が奇妙な話を始めた。

「自殺の問題について……」

体がビクッと反応した。
聞き慣れない単語に拒絶反応に近いものが現れた。
だって、そんな話、先生の口から出ることなんて違和感しかない。
だけど、耳を傾ける。

「僕ら教師は生徒に向かって『交通事故に気を付けましょう』と何度も言う。全校集会のたびに交通安全ルールについて話す。でも実際は交通事故よりも自殺で亡くなっている若者のほうがずっと多い。なのになぜ自殺問題について誰も語ろうとしないんだ?」

目の前の数十人の生徒に語りかけながら、どこか先生自身に問いかけているようにも感じられた。
静かに話を聴きながら、少しずつ気持ちを落ち着かせる。
わかる。
今、先生はどんな知識よりも大切なことを伝えようとしているのだ、と。

その時、なにか具体的に自殺対策について教えられたわけじゃない。
精神的に追い込まれた時、乗り越えるためのアドバイスを与えられたわけでもない。
それでも、嬉しかった。
当時、いじめられていたり自殺願望があったわけじゃないけど、嬉しかった。
自分の命のことを本気で考えて、言葉にしようとしてくれている大人がいることに。
それだけで、生きていけるような気がした。
もしこれから自殺を考えたとき、自分はきっとこの時間のことを思い出す。

僕たち若者が大人たちに求めているのは、問題の解決ではなく、問題について向き合うことだ。

wish you were queer

2020年の小中高生の自殺者数は479名。
2019年と比べて41%増加。
学校にも家庭にも居場所がない人のことを考える。
不安定な社会状況が大きな原因のひとつであることは想像に難くない。

自殺未遂の割合はシスジェンダー・ヘテロセクシュアルの人と比較して、レズビアン・ゲイ・バイセクシャルが約6倍、トランスジェンダーが約10倍。
LGBTQ+に対する社会の認知度、理解度の現状を考えれば、容易に想像できてしまうことが悲しい。
また、亡くなったその人が性的マイノリティ当事者であったかどうか明らかでない場合もあるから、実際はもっと多いのだろう。

問題の重要性≠数字の大きさ
とわかっている。
だけど、こうしてはっきりとデータが出ているにも関わらず、問題をうやむやにし続けることに納得がいかない。
力や声の大きな大人の方へ。
あなたが変わり者だったなら。
あなたが周りと違っていたなら。
あなたがクィアだったなら。
同じ態度をとっていましたか?

そして、Club with Sのメンバーのみなさん。
ジェンダー・マイノリティ当事者であり、かつ若者。
二重でリスクを背負っている。
無視するなんてできない。
だから、今日、“9月1日問題”に向き合う。
夏休み明けの9月1日、一年で最も子どもの自殺が多い日に、『不登校生徒集会 in Club with S』を開催する。

コミュニティでお話したくらいじゃ何の救いにもならない。
そんなことはわかっている。
僕らは無力だ。
PCの画面越しで君に語りかけることしかできない。
だけど、これはただの自己満足かもしれないけど、「救いたい」と思っている人がこの世界にいるという事実を伝えたい。
かつて、僕らを無視した大人には、自分が一番なりたくなかった存在には、絶対になりたくない。

love yourself first

9月1日のミーティング終了後、Club with Sはしばらくお休みに入る。
毎週のZoomタイムを一時休止するだけで、コミュニティ自体がなくなるわけではないから安心してほしい。
運営メンバーための遅れてきた夏休み、くらいに捉えてもらえたら。

休止期間について
・週一開催のZoomでのオンラインビデオ通話タイムを休止します。
・何か相談がありましたら、Club with SのTwitterアカウントへDMをください。ミーティングを開催できない分、メッセージのやりとりでお話をお聴きします。(休止期間についての質問も受け付けます。)
・すでにClub with Sのメンバーである方は今後もずっとメンバーであり、再開後もそのままミーティングに参加できます。
・ミーティング再開の日程は未定ですが、決定次第、Club with SのnoteとTwitterでお知らせします。

突然の連絡で驚いた方もいるはず。
事前に告知をしなかったのは、最後の回までコミュニティに対して変な遠慮や気遣いをせずに、自由に過ごしてほしかったから。
そして、直前まで参加メンバーの応募を受け付けていたのも、できるだけ多くの人に機会を届けることを望んでいたから。
様々な意見があると思うし、不快になった方の気持ちも全くその通りだと感じている。
本当に申し訳ないです。

『不登校生徒集会 in Club with S』は特別な回であると同時に、リスクを伴うものだった。
かつて、いじめや不登校を経験した運営メンバーには、当事者だからこそ伝えたいメッセージがある反面、精神的な負担がかかることが予想された。
過去の傷と対峙し、平常心でいられる自信はなかった。
むしろ、ここで余裕がある人のほうが珍しいと思う。
自分たちには、休む時間、考える時間、そしてエネルギーを蓄える時間が必要だ。
休むことが苦手だからこそ、自分に休息というものを教えるくらいの気持ちで過ごしたい。
それに普段、周りには「無理しないでね」「自分のペースで大丈夫だよ」と繰り返しているのに、自分自身が実践できていなかったら説得力ないな、と(笑)

最後に、これは本当に大切なことなんだけど、今回の休止は参加してくださるメンバーのせいでは決してないということ。
その証拠に、これはミーティング前に書いたものとして投稿される。
メンバーのみなさんには心から感謝している。
Club with Sを信頼して参加してくれたことをはじめ、ミーティングでは知性や社会に対する意識の高さに毎回驚かされ、人の気持ちや隠された背景を想像できる優しさに何度も感銘を受けた。
もしかしたら本人は「自分がマイノリティだからそういう視点を持つことができただけ」と考えているかもしれない。
だけど、ここにいるメンバーの魅力は短時間の努力や小手先のテクニックで手に入るものではないことを、自分は知っている。
ジェンダー・マイノリティであってもなくても、あるいはこれからセクシュアリティが揺らぐことがあっても、君は、絶対に、素晴らしい。

再開後、また会いたい。
だからこそ、あの時に先生が言ってくれた言葉を、今届けたい。

「どうか、自殺をしないでください。生きていてください」

生死の選択は最終的には本人の自由だ。
相手に生を強要することはできない。
それでも、君の生きている時空を生きたい。
そう願っている。

悪意に満ちた世界で、不条理な社会を戦い抜いた先、もう一度、僕らの存在について語り合おう。

it's not the end of the story





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