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#06 昇段審査は不公平!?


もうン10年前の高校時代、友人に「お前はいつも単純なことを難しく考える」と言われたことがあります。
そんな私は「なぜ他責しようとしてしまうのか」という、もう一歩ややこしいところに踏み込んで考えてみたことがあります。
その結果「他責できてしまうから」という極めて単純な原因にたどり着きました。

当たり前すぎて「何言ってるんだ??」という書きっぷりから始めましたが、落ち着いて進めていきますのでお付き合いください。
また、審査制度の批判では断じてないということを申し上げておきます。

■審査は本当に公平か

昇段審査は公平に行われているのでしょうか?
アンケートを取ったりするつもりはありませんが、「公平ではない」という声も結構出てくると思います。

私は審査員でもないので、正解は出せませんが、恐らく審査の視点ーー審査員が何を見て合否を判断するかという視点が公平か否かと言えばそれは「公平」だと思います。

一方で、受審の条件はどうでしょうか。
審査で当たる相手はほぼ同年代です。それに全国審査では同じ地域の連盟の仲間と当たるということも極力ないように組み合わせがなされ、できる限りの公平性が担保されます。

なお余談ですが、六段以上の全国審査の東京会場では、東京都所属同士で当たる場合もあります。人口的な面で止むを得ない事情だと思われます。また、旧知の仲間でも引っ越しして違う連盟に移れば、その人と当たることもあるでしょう。実際、私は六段、七段とも「友人」と審査で当たったことが複数回あります。

しかし、基本的に審査は相手を選べないため「工作」もできません。それもまた公平性の保持のためと言えます。

相手を選べないということは「やりやすい相手」と当たることもあれば「合わない相手」とも当たります。
全国レベルの大会で受賞歴がある受審者と町の愛好家が当たることもあるでしょう。
ええ、私はありました。

そういう細かいところに目を向けていけば、審査のシステムは「不公平」だとも言えます。人によって条件が変わるわけですので。

そもそも、技量的にはほぼ互角だったとしても、技の出す機会やその技の軌道なども同じ人はひとりもいません。
「特定の元立ちのような人がいて、その人と対戦し、技の出てくるパターンも全員同じ」でもない限りは、絶対に公平ではないのです。
この仕組み自体はどうすることもできないものであり、誰かに文句を言っても解決はまずできないものと言えましょう。

まとめると
「審査自体は公平な視点で行われる」
「審査を受ける条件は公平ではない」

ということになります。

■不公平な条件を打ち消すために

ハッキリ申し上げますと「審査って不公平なんだ」と思った方が気がラクになります。皆さんは基本的に真面目なので、審査は公平だとなんとか信じようとしているフシがないでしょうか?

審査における不公平に直面し、受審者は何をすべきなのでしょうか。
私は「いつもどんな相手に対しても自分の剣道ができること」が大事であり、
自分の剣道を普段の稽古で合格のレベルに引き上げておくことが肝要だと考えました。

「蹲踞から立ち上がってまずはこう攻め入って初太刀をどのように打ち込んで、次は下の技を使ってそれから相手の技をいなして…云々」
このようなセオリーをなぞろうとしても、それはいわゆる「無理ゲー」です。
だって相手がどんな剣道をするかもわからないんです。思い通りに展開する可能性は極めて低いのが至極当然なのです。

■審査対策は本当に必要か。

そこで多くの受審者は「対策」を考えます。人によっては「作戦」と言い換えても良いかもしれません。
昇段審査対策が専門誌で特集されたり、Youtubeでは「これができれば審査は大丈夫!!」みたいな動画が並びます。
スロー解説なんてのもあります。
合格した立ち合いのひとつ一つの場面の攻めや相手の反応を分析しているものも見たことがあります。

そういうものが役にたつ側面はあるでしょう。
ただ、あくまでも個人的にはあまり意味を感じません。あくまでも個人的に、ですが。

批判を覚悟で言えば、トンネルに入っているという自覚のある人には、そういうものはあまりオススメしていません。

ほんの1分から1分半程度の時間で「対策の結果」を存分に発揮することなんて、果たしてできるのでしょうか?

私が今後連載しようとしている文章は「対策が問題なくできたし、それこそが審査の全てなんだ」と考える方には縁のない話かもしれません。
どちらかといえば「対策不要」という内容だからです。

■たった数分で審査は成立するか

六段審査は立礼の時点から1分の立ち合いを2回。つまり1回あたり実質50秒程度。そして七段審査は立礼から1分30秒を2回という極めて短い時間です。

しかも各会場の序盤のグループに入ると、準備体操はおろか心の準備すらできないままに審査が始まってしまいます。
これも不公平だといえばそうかもしれませんが、全員同時というわけにもいきませんし、剣道の審査に限ったことではありません。

「自分はスロースターターだから不利」
「こんな短い時間で審査員は何がわかるのか。もっと時間を長く取るか、立ち合いの回数を増やすべきだ」
こんな声も聞いたことがあります。私も思ったことがありました。

でも、審査員の先生方は「プロ」です。1分もあれば充分に力量を見抜くことはできるでしょう。
それこそ順番を待つ立ち姿でボーダー以上の実力があるかどうかは、この私にもわかることがあるくらいです。

■いきなり力が出せるのも合格の条件

「どこでいつ審査が始まったとしても自分の剣道を貫くことができること」も合格の条件に含まれているという解釈が必要だと思います。

もちろんケガには気をつける必要はありますが、そのためにも日頃の稽古で地力を高めておき、あとは審査に臨むだけ…と考えたことも私なりの結論のひとつでした。
いつでも力が出せるようにと日頃意識してきた内容は、私自身いまでも色々と心がけていますが、それはまたの機会に譲ることとします。

■惑わされなければ大丈夫。

私がnoteで1人でも多くの人に伝えたいのは「昇段審査の都市伝説に惑わされないで」ということですので「日頃の稽古を全力で取り組めば済む話」で完結させるつもりはありません。
私も過去に「全力で稽古すればいいだけのことだ」というアドバイスを複数の先生からいただいたことがあります。
しかしそれだけでは「都市伝説からの脱却」には結びつかない人が大半だと思います。
ここまで数回に渡り色々と書いては来ましたが、その具体にはまだ触れていません。
「まだなのかい…」というツッコミは甘受し、そろそろ具体に触れていきたいと思いますが、「審査を受審する条件は不公平だ」と受け入れて「不公平さを打ち破ることのできる地力を日頃から養う」ということを理解しておくのが良いと思います。

とりあえず、今日はこの辺で。

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