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#15 助言とは自信と安心をもたらすものであること ~昇段審査の都市伝説

全国審査のシーズンがやってきます。
当日に向けて、普段以上に審査への意識が高まっているころだと思います。
合格のために…というやり取りも増えてくることでしょう。

■その助言は本当か

審査直前の稽古や、当日の審査会場でやりとりされる言葉の数々です。

◇相手に打たせちゃダメ。打たれるようでは受からない。
⇒それは打たれて動揺して、そこから普段の剣道ができなくなっていくからです。
「打たれたら不合格になってしまう。どうしよう…」
という動揺させる要素を生み出すアドバイスなら、しない方が良いです。

◇初太刀を外したら不合格
⇒初太刀を大切にする稽古を普段からしていれば、それは審査員にはわかります。
「初太刀を外したらどうしよう。そこで審査が終わってしまう…」
という余計な不安を生み出すアドバイスなら、しない方が良いです。

◇攻めろ。崩せ。溜めろ。
⇒その前に、そのために必要なことがあるはずなので、まずはそっちから教えてあげた方がいいと思います。
「そんなこと言われてもわからないし。打てそうだけど打ったらマイナスなんだっけ??」
という迷いを生じさせるアドバイス、適切でしょうか。

何か抜けていませんか?

◇色胴で受けたらダメだよ。
⇒なぜですか?根拠はありますか?八段審査を色胴で合格されている先生もいます。「ダメ」な理由を的確に説明できますか?

いろいろな助言がありますが、それは剣道の向上のために必要なことであることは確かです。
ただし、合格の必須条件かどうか?は一考してもよいと思います。

■ハウツーに縛られないで

審査合格のためのハウツーはあちこちに溢れています。
Youtubeなどには合格者の動画が並んでいますし、自らの立ち合いやお仲間の合格した立ち合いを細かく分析されているものもあります。

当然、合格した立ち合いの動画ですから、どれも素晴らしいのは間違いないでしょう。でも、あなたがそれと同じ剣道をできるとは限りません。
限りませんが、できなくてもいいんです。
自分自身の剣道が審査の場でできることが最も大事なのですから。

それを見る人は、これから昇段審査に挑戦しようとする人であり、「どのような立ち合いをすれば合格できるのか?」の基準を知ろうとしているというケースが多そうです。

私はこのnoteに
「○○をやったらその時点で不合格になる」
「●●ができれば合格できる」
といったような事象が審査の中で出るかどうかのみで合否は決まらないのだということを書いてきました。

書いていることは私自身の経験に基づいたものですが、それだけではありません。
たくさんの立ち合いを見て「どのような人が合格するのか?」という傾向を理解し、また何人かのトンネルにハマってしまっていた友人知人にこの「昇段審査の都市伝説」を紹介し、成果があったことを書いてきています。

ハウツーから学ぶものはたくさんありますし、私自身も見ることはあります。決して否定はしません。

ただ、トンネルにはまっている場合、そこから離れてみた方がよい場合もあるのです。


今これを書いている4月上旬―あと数週間で全国審査が始まる時期です。
毎回の稽古で立礼の時点から「誰よりも立派だ」と自分で言い切れる立ち姿を意識し、気迫十分に臨むこと。
そして常に初太刀を取ることを心掛け、最後まで自分の剣道を貫くことが大事なのではないかな、と私は思います。

そして当日は、直前までに実践してきた自分の剣道をそのまま出すことを考えれば、十分に合格という目標に達することができるはずです。

もしそれで合格できなかったら…
それは初太刀を外したからでもなければ、相手に打たれたからでもありません。

自分自身の剣道がまだ目標とする段位に求められる剣道に届いていなかったというだけのことです。

■そもそも悩んでいる人を追い込む言葉は「助言」ではない

助言とは「剣道ってこういうものだよ」「審査ってのはこうすれば合格するんだよ」というフレームのようなものがあったとすれば、そこから学ぼうとする人が前向きになるものであるべきだとは考えています。
フレーム…決まりごとは時にその中に上手く収まることができない人を悩ませます。
「初太刀を取り、相手に打たせないように」それが必要条件になってしまっては、木を見て森を見ずという状態に陥ってしまいます。

すでにその段位に合格している人の助言は、有益なこともあれば、助言する側の思いとは逆に作用する場合も少なくありません。
助言する側も、される側もそのことに意識しておくのがよいと思っていますが、なかなかそこまで言及されるケースも多くないのが実際です。

「昇段審査の都市伝説」は、何度も審査の壁にぶつかり、トンネルに入ってしまっているような人に特に知ってもらいたいという思いから書いています。

トンネルに入っている人が一番安心できる助言は―
「普段どおりにできれば大丈夫だよ」という言葉ではないでしょうか。

普段どおり―その普段に何をしているか?
「普段の剣道=自分の剣道」を見てもらうこと。
それだけです。審査するのは一緒に会場に来た友人でも、自分の先生でもありません。ましてや自分自身でもないのです。

だったら、審査で何をするか?よりも「普段の自分を見てもらおう!」と考えた方が、結果的にはよい審査になるのではないかなと思います。

■制約ではなく、解放されること

審査用の剣道という言葉にも感じられるように、昇段審査には「制約」があるというイメージを持っている人が多いと思います。
しかし実際はその逆で「解放」にカギがあるということに私は気づきました。

解放され、伸びやかさを感じる剣道は目立ちます。
目立たなくては合格しません。そもそも私は審査用の剣道も試合用の剣道もないと思っています。
その辺のことはまたの機会にするとして、とりあえず今日はこの辺で。

🔽関連のnoteです。
これ以外にもたくさん書いていますので、お時間のあるときにお読みいただければ嬉しいです。

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