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#28 生地胴=ジーンズ論 vol.4

■5 生地胴とは無縁だと思わざるを得なかった頃

革目むき出しの生地胴の風合いは、藍色一色の剣道着・袴・防具の中で何より洒落たものとして強烈な印象を残すこととなり、「色を塗っていない見栄えの度外視の道具」の存在は、想定外の効果をもたらした。しかし筆者にとって生地胴の購入は非現実であり、今後も己の手に生地胴がおさまることは、あり得ないことだと感じていた。インターネットなど影も形もなかった時代においては、地域の剣道具店の吊るしの防具か既成品をカタログから選ぶという選択肢しかなかったからである。今では信じがたく、行動力のなさを疑うような話だが、案外筆者でなくとも同じような状況だった方もいるのではないだろうか。

■6 広告の生地胴が気になる

生地胴を身近に引き寄せたのが、剣道雑誌の裏表紙の広告だった。これも30年程前のことで、思えばその昭和末期から平成初期というのは、ほぼ絶滅寸前だった生地胴が新たな展開を見せていく転換期だったのかもしれない。
私はそこで生地胴が普通の防具と同じように販売されている事実が確かにあり、何よりも安価だということを改めて認識することとなった。ここで最初に定義した生地胴ならではのローコストが大きな意味を持つのであった。しかし、やはり防具(剣道具)は地元で手に入れるもの。地方在住者が生地胴を入手するためのハードルはまだまだ高く、筆者自身が、都心にあるというこのお店に足を運ぶことなど、想像することもなかったのである。(続く)


■今回のあとがき

この連載は、できる限り客観的な視点から書くようにしていましたが、この先しばらくは私の個人的な生地胴とのかかわり方の話が続きます。
比較的世代の近い方には「あるある」
生地胴のことなんて知らない。または最近興味を持つようになったという方には「へええ、そうだったんだ」と思って読んでもらえれば嬉しく思います。

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