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2023年MLBの「ディビジョン格差」の要因

 2023年のMLBのこれまでの特徴の1つは、以下の成績表で見て取れる。時点は現地時間5月21日終了時点だ。

 公式をはじめとする各種HPやAT BATアプリでは上からAL東、AL中、AL西、NL東、NL中、NL西の順に表記されることが多いのだが、上の方の2つのディビジョンを切り取ってみても面白い。
 まとめると、以下の通り。
 ・AL東の全チームが勝率5割を超えている。
 ・AL中の首位MINとAL東の最下位TORの勝敗が同じ
 ・真ん中を取り払って「10チームの1つのディビジョン」としても、
  立派に勝敗表の体をなしている。

要は、特にAL中と比較した、AL東のレベルの高さが際立っているわけだ。

 今回は、ディビジョン間の勝敗を中心に、現在のディビジョン間の格差の要因についてみてみよう。

ディビジョン間の対戦成績の比較


 現地時間5月21日終了時点の、AL、NLの間の対戦の成績をチャートにしてみた。矢印上ないしは矢印付近には、矢印の根元のディビジョンがその先のディビジョンに勝った数字を記載している。ALチームの勝利の数字は赤、NLチームの勝利の数字は青で示している。

2023年MLBディビジョン間の対戦成績比較(現地時間5月21日終了時点)

 ごちゃごちゃしているので、勝ち越し数、すなわち「貯金」の数でシンプルにしてみた。矢印の根元は勝ちこしている方のディビジョン、数字はその勝ち越し数で、ALのディビジョンの勝ち越し数は赤、NLのそれは青にしている。勝敗がタイの場合は、矢印にはせず、数字は黒で「0」と表記した。各ディビジョンの欄には、異なるディビジョンとの対戦での勝ち越し数ないしは負け越し数を示した。

2023年MLBディビジョン間の勝ち越し/負け越し比較(現地時間5月21日終了時点)

特徴は以下のとおり。
・他ディビジョンとの勝ち越し数はAL東が52と一番多く、NL東(8)がこれに続く。NL西(1)も勝ち越している。他は負け越しで、AL中は△37と負け越し数が一番多い。
・AL東は、AL中との対戦で計27の勝ち越しをしている。これは他ディビジョンとの勝ち越し数の過半数にあたる。AL東は、AL西にも11勝ち越すなど、すべてのディビジョンに対して勝ち越している。
・AL中は、インターリーグでのNL東との対戦でも負け越しが多いが、NL西、NL中との対戦はほぼ互角である。
・NL西は、同リーグ他ディビジョンには勝ちこしているが、ALの各ディビジョンには負け越している。
・リーグ全体ではALが+7、NLが△7、1チームあたりの平均の絶対値は0.47で、リーグ間の差は大きいとは言えない。

2022年シーズン終了時との比較

 2022年のシーズン終了時の、ディビジョン別の勝ち越し/負け越しの数、すなわち貯金/借金の数字と比較する。ディビジョン内の数字はゼロだから、この数字がそのまま他ディビジョンとの対戦成績になる。

ディビジョン別の勝ち越し/負け越しの数の比較

 昨年のシーズン終了時と今年の現時点(5月21日終了時、試合消化率は28~30%程度)では、勝ち越し/負け越しのディビジョンに変わりはない。2023年上記時点の勝ち越し/負け越し数は、2022年終了時と比較して、NLは2.8~37.5%と試合消化率を下回るか若干上回る程度なのに対し、ALは50.0%~80.4%と、試合消化率を大きく上回っている。ALの場合、東地区と中地区の対戦成績の差が、そのままこの数字に反映されている。

リーグ別の勝ち越し/負け越し数の分布傾向

 5月21日終了時点で勝ち越しているチーム数は、AL9・NL7。全体では半分以上が勝ち越し、ALでは6割のチームが勝ち越している。逆に言えば、ALでは大きく負け越しているチームが存在することの裏返しだ。

以下に、5月21日終了時点におけるリーグ別の勝ち越し/負け越しの数を示した。緑が東地区、赤が中地区、青が西地区のチームになる。

2023年AL各チームの勝ち越し/負け越し数(現地時間5月21日終了時)
2023年NL各チームの勝ち越し/負け越し数(現地時間5月21日終了時)

 NLは負け越し数が10以上のチームがないのに対し、ALではOAK、KC、CWSが10以上の負け越しを記録し、ばらつきが大きい。勝ち越し/負け越し数の標準偏差をリーグ別にみるとAL12.8、NL6.6と、ALはNLの2倍近くにもなっている。

まとめ

 現在のMLBのディビジョンの成績をみると、AL東がAL中に大きく勝ち越していることがディビジョン格差の最大の要因になっていると言える。NLでも、一番負け越しの大きいディビジョンは中地区になっている。
 なぜか?東地区は大都市を多く抱え、西地区も西海岸を中心に大都市や経済力のある都市を擁するため、両地区のマーケットが大きくなるから、というのも1つだろう。AL東にはレイズのようなスモールマーケットのチームがあり、直前まで弱かったが昨年急に力をつけてきたオリオールズもある。マーケットで全部を説明しきれるわけではない。ブルージェイズも近年は安定した力がついている。ヤンキース、レッドソックスといった伝統あるチームがいる同地区は、全てのチームの切磋琢磨の意識が高まり、その結果レベルが高まったような気がしてならない。

 なお、単純に試合のフォーマットから、最終的にはディビジョン間格差は高まる可能性が高い。今季2023年から、MLBはインターリーグで全チームと対戦するフォーマットになった。現在のフォーマットは以下のとおり。
 ○同一ディビジョンと52試合(13試合×4)
 ○同一リーグ他ディビジョンと64試合(3~4試合×10)
 ○インターリーグ46試合
 ・他リーグの同一ディビジョン内ライバルチームと4試合
 ・他リーグのその他のチームと42試合(3試合×14)
 前年までは以下の通りだった。
 ○同一ディビジョンと76試合(19試合×4)
 ○同一リーグ他ディビジョンと64試合(3~4試合×10)
 ○インターリーグ20試合
 ・他リーグの位置関係が同一のディビジョン内ライバルチームと4試合
 ・他リーグの位置関係が異なる1ディビジョンのチームと16試合
  (3~4試合×5)
 ないしは、
 ・他リーグの位置関係が同一のディビジョン内ライバルチームと6試合
 ・他リーグの位置関係が同一のディビジョン内その他のチームと14試合
 (3~4試合×4)

 同一ディビジョン内の試合が76→52と3割以上も減り、それ以外の試合が増える結果、ディビジョン間のアンバランスがその分大きく出る可能性があるということだ。

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