コンクリートのさんぽ ~秋の千葉~

今日は土木の日らしい。というわけでコンクリートでも見に行きましょう。

じゃあ、コンクリートってどこで見ればいいのかっていう話。
安藤忠雄の名建築とか黒部ダムとかのド派手な土木構造物とかを見に行くのもまあいいけど、お金かかるし遠いしめんどくさいじゃないですか。
コンクリートなんてその辺にいくらでもあるんで、街の中のコンクリートを見に行きましょう。

例えばこの画像のうちコンクリートはどこにあるでしょうか。
答え。

目立った構造物のない街の一角でもこれだけ。
何がコンクリートで出来ているかとか、材料は何かとかどうやって劣化していくかとかを知っていると、街並を材料レベルまで分解して知ることができるワケです。

というわけで、コンクリートを見に行きましょう。今回は僕の住んでいる千葉から。

街に隠れているコンクリートを探す前に、もっともわかりやすいコンクリートの姿がこちら。
コンクリートを輪切りにすると、材料の分布がわかります。大小の黒や暗い灰色が「骨材」と呼ばれる石や砂で、白っぽい部分がセメントと水と砂の混ぜ物である「モルタル」という部分。

花見川を下っていきましょう。緑道はアスファルト舗装。
アスファルトとコンクリートの違いはなにかっていうと、接着剤の部分が違います。
アスファルトは石油をつくるときの余りみたいなもので、これに石や砂を加えて高温で混ぜればアスファルトコンクリート。
一般に「コンクリート」と呼ばれるものは、アスファルトの代わりにセメントを使ってます。
細かいところはセメント協会のHPでも見てください。

鉄道の橋が見えてきました。名前もわからない橋。
橋のおなかの部分(桁)が凹んでいたりところどころ出っ張っているのは断面の節約・軽量化と補強のため。

橋を渡ろうとするときに足元をみると、必ず境目があることに気づきます。これだけ長い物を一発で作るのは大変だし、なにより全体が一様に変形したり伸びたり縮んではたまったものではないので、境目をつくって変形を吸収する目地をつくっています。
そうするとそこから雨水が入ったりもするので、その周辺は黒く変色してますね。

当然、そこに入っているのはゴムみたいなやわらかい素材(じゃないと変形を吸収できない)。
花見川をまだ下っていきましょう。

ちょっとしたトンネル。上には道路が走っています。壁面が天井や路面と色が違うのは塗料で補修を行っているからです。

名前を見つけました。43歳の橋だそうです。コンクリートは生まれたときから働き盛りなので、年齢=勤続年数。長年ご苦労様です。感謝。

トンネル断面の形は四角か円ですが、四角いものでも角が完全に直角なことはありません。
理由はめんどくさいので割愛しますが、簡単にいうと四角形っていう形はいろいろな方向からの力に強くないからです。

当然、足元の下の部分にもちょっと角度がついているわけですが、ここの部分は他よりも表面の空隙が多いです。
これは、コンクリートを打つときに上の部分にフタをされている状態になるため、ここに空隙がたまりやすいから。たぶん。

とりあえずひび割れ幅を測っていこう。ちなみにこのひび割れも夏に測るとひび割れ幅が変わることもあります。(温度や湿度による膨張挙動が季節によって異なるため)

すぐ外にあった看板がこれだけサビるような環境なので、そりゃコンクリートもいたみますわな。

川をどんどん下って幕張の近くまできました。手前のトラス橋(金属の棒で構成される橋。棒の引張力・圧縮力=軸力で荷重に抵抗する構造)はパイプライン用のもので、そのすぐ向こうに道路橋がある。橋脚は仲良く共用。

コンクリートは補修や意匠の目的で表面に塗料を塗ることは多くあるけど、当然その辺のラッカースプレーでも容易に落書きできます。ちなみに表面が密実で耐久性に優れるコンクリートほど(表面の粗度が低いので)塗料がくっつきづらいのは合理的なんだか合理的じゃないんだか。

海の方まできました。

テトラポッド(というのは商標で一般名称は消波ブロック)も護岸擁壁も同じコンクリートで出来ているし、環境もほとんど同じなので骨材の露出状況なんかもだいたい似てますね。
摩擦や風雨の作用を受けるとセメントペーストの部分が洗い流されて骨材が露出してきます。

錆びた鉄筋(直径10mm)が露出しています。海沿いの環境は塩害が厳しいのでただでさえ錆びやすい上、この部分はコンクリートの厚さ(かぶり)が設計よりも足りなかったんでしょう。

こちらは等間隔に茶色い変色が並んでいます。「錆汁」というもので、内部の鉄筋やボルトが錆びて、その腐食生成物がコンクリート中の水の移動と一緒に表面に現れて付着したものです。見た目は悪いけど構造的にはそこまで問題じゃないです。

白いのは「エフロレッセンス(白華)」と呼ばれる現象です。よーく見るとひび割れに沿うように出ています。
これはコンクリートの中の水溶性物質、例えば水酸化カルシウムなどがひび割れ中で水分と一緒に移動し、これが表面に現れて大気と反応し、炭酸カルシウムなどの白色物質になって固着する現象です。
そんなに問題ではないんですけど、逆にいうとひび割れや水分の移動があるということなので、水密性が求められるところだとNGです。

海沿いを渡って千葉市街地方面へ行きましょう。

市街地、とくに人が歩くところで一番表面積が多いコンクリートは舗装に使われるもの。
写真のこれは「インターロッキングブロック」というもので、コンクリートの製品です。
ちなみに厚さは10cmもないくらいで、この下には敷砂、路盤材、路床があります。地表までは意外と深いです。
冒頭で述べた橋と同じ理屈で、小さいブロックを並べると単体の変形がブロック間の境目で吸収されるので、ブロックの中にひび割れが入ることはあまりないです。
でも、路面のように表面積の多い部分はコンクリートが本来もっとも割れやすい環境です。乾燥の影響をモロに受けるので。

たとえばこんなふうに。白いのはひび割れの補修後ですが、逆にいうとひび割れがある場所のマーカーです。
マンホールを中心として亀甲状のひび割れが出ていますが、こんなふうに乾燥によるひび割れは(拘束がなければ)ランダムに現れます。

石っぽい擁壁だけど、こんなデカい一枚岩を千葉の市街地にもってくるわけもなく、表面をよくみるとコンクリート。
作るときに型枠に凹凸の詰め物をして(たぶんスチレンか何か)、表面に凹凸のテクスチャをつくっています。

とかやってたら千葉駅周辺の市街地中心部まできた。モノレールの鉄骨がかっこいい(基本的にコンクリートより鋼構造の方が好き)。

でもケーブルのアンカーはコンクリートで定着。重量・体積をマッシブに安く確保したいときにコンクリートに敵う材料はありません。

千葉市中央図書館の玄関前の庇(ひさし)。おもしろい形。

コンクリートの階段は、手前の方が骨材が露出しがちだし、角もとれて丸みを帯びています。
人が足をかけるし交通量が多いから当然で、あんまりひどいとこんな風に鉄筋が出ちゃう。

コンクリートの電柱。錆汁や雨だれや張り紙のよごれがひどいですね。
ちなみにコンクリートの電柱などのポールは、作るときに回転させて遠心力を使ってコンクリートを型枠に押し付けるので強い。

コンクリートはたぶん灰色とか黒のイメージが強いと思うけど、作り立ては白いです。
左側が新しいコンクリートブロックで、右側が古いもの。風雨や排気ガスによる汚れを受けると変色し、僕らが目にするコンクリートはだいたい古いから白い色のイメージは少ないんだと思います。

コンクリートの打ち放し面がかっこいいと思う人は一定数いるけど(ちなみに僕はぜんぜん思わない)、多湿なこの国だとどう頑張ってもこんな風に変色してしまうのは避けられません。塗料がないとね。

開口部はコンクリートの弱点で、最もひび割れが見つけやすい場所。

こんな風に、四隅からは放射状のひび割れが発生しがち。(構造的には大した問題ではないけど)

これもコンクリートでよく見る丸い凹みですが、「Pコン」と呼ばれるもの。
これは、コンクリートを造るときの型枠を支えるためのボルト(セパレーター)が通っていた場所の痕です。
開口部でもPコンもなんでも、当方性の中の異質な部分が弱点になりやすいのはどんな構造物でも同じですね。

これも型枠に由来するもの。型枠の境目の部分で骨材が出て少し粗くなっていますが、これはコンクリートの中で流動性の高いペーストの部分が型枠の境目から流れ出てしまい、流動性の少ないボソボソの部分が残ってしまったものです。
「砂すじ」とか「ジャンカ」とか呼ばれます。

おしまい。次回は未定。


おまけ。愛機のGIOS MISTRALくん。今日もよく走ってくれました。(散歩ではなかった)

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