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人生の決算

 ネットサーフィン中に職業適性テストを受けてみた。どんな職業にも向き不向きがあるから、その人の性格と各職種の職能要件を照らし合わせ適正職業を導き出すものだ。
 
 かつての私の部下に経理担当の32歳の女性がいたが、彼女のファイリングを見た瞬間に「あぁ、この人にならある程度仕事を任せられる」と確信した。A4の紙をリングファイルに綴じるだけだと、ファイリングを侮るなかれ、この単純作業が如実にその人の性格を表す。彼女はとにかく几帳面にコツコツと仕事をこなし、業務のボリュームには不平を言わないがルールを逸脱した案件、原価意識のない管理者に対しては顔をしかめた。私生活においても、ひと月の収支をノートにつけ無駄な買い物は極力省く徹底ぶり。その堅実さは結婚観にも現れ、独身時代と結婚後の自分の暮らしを綿密に試算、比較し結婚は「損失」を招くという結果に至った。

 そんな彼女に一回り年上のMさんはやや冷やかに言う。「10年後に預金通帳の残高を見せてよ。私は計算なんてして来なかったし、計画だって立てず何も考えずに結婚したわ~。人生ってそんなもんでしょ?」と最後のフレーズは私に同意を求めた。ちなみに私も簿記を持っているが、計算が甘かったようでタイ人と結婚した。経理マンとしては失格かもしれない・・・。
 「結婚生活に決算など必要はない。結婚はね、足し算引き算だけでは計れないんだから!」これも件のMさんの言葉だ。


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