青い瞳を持つ竜は、未だ霧の中に眠っている。
こんにちは。
津軽山野です。
拝啓。
北東北の2000m級の山々も山開きとなる今日この頃、皆さまいかがお過ごしでしょうか。
私はおろしたての登山靴を履いて山々を爆走する日々を過ごしております。
本日は、そんな津軽山野がこの前見に行った
"とある場所"について、紹介します。
たった数週間しか見られない青
そんな"とある場所"とは、
八幡平国立公園が誇る絶景『ドラゴンアイ』
皆さん、ドラゴンアイ、ご存知ですか?
登山がお好きな方や北東北在住の方なら、知っている人も多いのでは。
「なんのこっちゃ?」な皆さん、ドラゴンアイ、想像してみてください。
竜の目と呼ばれる絶景ですよ。
なんかめっちゃイカつい感じしますよね。
いかちー。
はい!
じゃん!
こちらです!
いや、写真じゃないんかーい!
と突っ込まれた皆さん、すみません。
実は今年(2022年)の5/28、見に行ったのですが、めっっちゃガスってました(涙)
(脚注:ガスる 登山用語でよく使われます。曇っている・霧がかっていると大体同じ意味)
ちなみに撮った写真はこんな感じ。
どうしてこんな風景が見られるかというと、
なんだとか。
(へぇぇ〜。また一つ知見を得ました)
ちなみに、注目され始めたのは今から数年前。
海外からいらっしゃった登山者(観光者)の方が発見されたそう。以後、たった2週間しか現れない絶景を見に、県内外問わず多くの方々が訪れています。
そう、たった2週間の絶景です。
積雪量や気温、天候などに大きく左右され、5月中旬から6月中旬まで姿を現しますが、完全に開眼した様子を見ることができるのはおそらく1週間ほどではないでしょうか。
もちろん、その年の気温変化によって溶け方が変わるため、まさに完全な姿を見るためにはかなりの強運が必要かも。
そんな『ドラゴンアイ』ですが、この名は通称。
正式名称は『鏡沼』
八幡平山頂にはガマ沼や八幡沼など、大小さまざまな湖沼が存在します。これらはおよそ六千年前にできた火口群。とてつもなく長い長い時間をかけて水が溜まり、今の形となりました。
ちなみにここでの『八幡平』とは、八幡平地域を指します。
八幡平は岩手山や秋田駒ケ岳など、40座の火山でできており、日本有数の火山地帯でもあります。
そのため数多くの湯治場があり、山登りで疲れた足を癒すことができ、風情豊かな文化に魅了されます。
また、広大なブナ林やアオモリトドマツの原生林でもあり、自然観察にはもってこいの場所。
そんな八幡平、平安の時代に坂上田村麻呂が朝廷から遣わされてここへ来た際、その絶景に感動し、八幡大菩薩に感謝を込めてその名を付けたのが由来とか。
場所はこちらから☟
(岩手県のホームページですが、ドラゴンアイがあるのは秋田県です。八幡平はちょうど県境)
アクセス的には↓
東京方面からだと、
東京駅-盛岡駅を新幹線で3時間。さらに盛岡駅-八幡平山頂まで岩手県北バスで2時間。
八幡平山頂からドラゴンアイ(鏡沼)まではおよそ500m。徒歩5〜6分ほどです。
さて、本題に戻りますがドラゴンアイ、
撮る場所を変えて、少しパシャパシャ📸
完全開眼🧿とはいきませんでしたが、霧の中の幻想的なドラゴンアイを見ることができました。
霧の中、ただ己の足音だけを聴いて
そして、ここに来たからには!
八幡平山頂まで行ってみよう!!
ということで、
以下は八幡平山頂や八幡沼などについてだらだらと記録したものになります。
先ほどもちらっと紹介した八幡平。
その名がついた八幡平山頂までは登山入り口からおよそ30分ほど歩きます。
まだ5月下旬ではお花などはあまり見ることができませんが、6月下旬くらいからは色鮮やかなお花たちがたくさん!
しかし貴重な高山植物。抜き取ったり折ったりするのは厳禁です。
このような案内板がちょこちょこあるので、すごく助かりますね。
このように、この時期はまだまだ雪が残ってます。
長靴や、できることなら登山靴だと安心です。
何気に道迷いしやすいのが、こんな感じで開けている場所!雪も結構固まっているので、足跡を頼りに......ということも難しい。目印のピンクテープを見逃さないことはもちろん、出来る限り地図やアプリを使って現在地を把握するのがいいですね。
顔に髪の毛が張り付きます。
風が強くてフードが持っていかれそう。
写真では分かりづらいですが、結構な高さ。
息が切れるような傾斜ではありませんが、少し足を取られるような雪。風の音とリュックに付けている熊鈴の音、自分の呼吸音、足音だけが聞こえます。
この天気なので、土曜日でしたが人影はちらほら。
ちなみにこのシーズン、土日の晴天時は激混み!
駐車場がいっぱいになり、道中も渋滞するのだとか。
つ、着いた〜〜!!!
登山!!って感じの疲労感はないけど、標識を見るとやはり達成感。そして、八幡平山頂には展望台があるので、登ってみる。
なんも見えねえ〜〜〜!!!(笑)
本当はかなり見晴らしが良いはずなのですが、
残念!その眺望を目の当たりにすることはできませんでした。でもこれはこれで神秘的かも。
息を大きく吸い込むと肺まで潤いそうな湿度感。
顔はお風呂上がりにパックした時よりしっとり。
まつ毛についた水滴がぼんやり見える。
まだまだ行きますよぅ!!
ここから下りながら、八幡沼方面を目指します。
ここも火口群のひとつ。
んん〜〜!!漂うサイレントヒル感!!良!!
木道の先にある感じも良いですね。
ここは避難小屋『陵雲荘』もちろん無料。
重く、深みのある音がします。
登山シーズンには、陵雲荘に近づくとよくこの音がします。みんな、鳴らしちゃうよね。
撮り忘れちゃいましたが、中はかなり広いです。
数名が寝転がれそう。
山の避難小屋って独特の匂いがしますよね。
木の香りなのかな。
外はかなりの雨風なので、つい長居してしまいそうになりますが、山登りでは冷えは禁物!
まだ体が温まっているうちに、チョコ(補給)を食べて下ります。八幡平山頂は本当ならハイキングくらいの疲労感ですが、油断せず行きましょう。
ちなみに雪渓にビビりすぎて、なおかつ雪を踏み抜きそうで、足元に集中していたら、八幡沼の写真を撮り忘れてしまいました。
7月下旬あたりから八幡沼周辺はニッコウキスゲの美しいお花畑になります。その頃また来るさ。うん。
八幡沼を過ぎると、見返峠と源太森の分岐へ差し掛かります。時期になれば、ミズバショウやチングルマ、ワタスゲなどの高山植物を見ることができますが、今日は見返峠に戻ります。
(見返峠って日本に結構ありますが、なんか切なさを感じる言葉じゃないですか??それぞれの由来を知りたい。知ってる方、教えて下さい......)
そういえば、上の写真みたいに、木の周りの雪って早く溶けてますよね。なぜなんだ......と思い調べてみたのですが、どうやら木の暖かさに要因があるそう。木は地面から水を吸い上げているのですが、その水が外気よりも暖かいため、木の表面温度が高くなり、周辺の雪が溶けるのだとか。自然のパワー!(cv.きんに君)ですね。
そして、この記事を書いているのは6月6日なのですが、どうやら八幡平山頂周辺もかなり雪解けが進んでいるようです。美しい湿地帯を満喫できる日も近い!
足元の雪は溶けていますが、雨で濡れてツルツル!
滑る!そして薮が風でものすごい揺れてました。熊がいても気づかないな、これは。
八幡平山頂付近は1600mほど。
厳寒期は雪に埋もれます。そのため植物は地面に押し付けられ、さらには強い風により、背の高い木はありません。森林限界の世界です。
ちなみにアオモリトドマツは樹液からすーっとした匂いがします。八幡平山頂付近ではあまり香りませんが......。
道中展望台があり、親切な看板も。
天気が良ければなんと早池峰山まで見渡せるとか!
こんなんでしたけどね!!!(もはや困惑)
逆に高所恐怖症の私にとってはありがたかったのか?
晴れていればはるか下の駐車場が見えます。絶対落ちないと分かっていてもやっぱり怖い。
途中、ショウジョウバカマが咲いていました。
猩々袴と書きます。花が架空の生物『猩猩』に似ているのだとか。もののけ姫に出てきますね。
オラウータンの別名でもあるらしい。
風が吹いている。下界へ行く。
そんなこんなでやっと下山。
こんな天気にも関わらず、駐車場には車がいっぱいになってました。観光バスも数台。やはりこの時期は激混みなんですね。早い時間に来て良かった(この日、現場着AM8:00)
これから登る方々を横目に、駐車場までてくてく歩き、本日の八幡平登山は終わりました。
車でアスピーテラインを下ります。
少し下るとこんな感じ。
突如開ける展望。
ちなみに植物の陰で分かりづらいですが、結構な高さです。ここを下るの緊張する。落石注意の看板も多いので慎重に。
さらに下ると、地熱発電所に辿り着きます。
ちなみに近くにトイレと自販機もあるので、ここでちょっとひと息。
松尾八幡平地熱発電所。
年間発電量は一般家庭1万5千世帯分とか。
規模が大きすぎて分けわからんです。
横に見える鳥居は赤沼神社。
小さな祠があります。
トイレに向かおうとすると、松尾鉱山についてのパネルがありました。
このほかにも数枚のパネルがあります。
それぞれ古い写真と共に、この松尾鉱山の歴史が記されています。
松尾鉱山は19世紀末から1969年まで稼働していた鉱山です。主に硫黄の採掘が行われ、松尾鉱山周辺は映画館や繁華街などもあり、かなり栄えていたそう。現在の岩手県の県庁所在地である盛岡市よりも先に映画が封切られるほどだったとか。まさに空中の楽園都市でした。しかし、硫黄の需要が減り、さらには鉱毒問題などもあり、1972年に閉山しました。
現在も鉱毒水は流れ続けており、鉱山跡地周辺には中和施設が建てられ、現在も365日休むことなく稼働しています。
少し物悲しさを感じる景色。
雪深い地域ならでは。
道を少し下ると右側に道があったので、
なんだろうと思って入ってみると、
今はもうみる影もない、かつての栄華。
その跡地でした。
今にも崩れ落ちそうな建物たち。今からおよそ70年ほど前は炭鉱夫とその家族たちが暮らし、銀幕スターも訪れた夢の街。もう誰も訪れることのないアパート群。
どうやらあまり入ってはいけない道だったようで、
注意書きがされている看板を見て慌ててUターン。
突如現れた廃墟の迫力に、ちょっとゾッとした帰り道でした。
アスピーテラインを下り終わると、
八幡平の野菜や工芸品を取り扱う物産館アスピーテがあります。隣には松尾八幡平ビジターセンター。
ようやく人の世界に戻ってきた実感を得られました。
外ではホットコーヒーなどの販売もあり、冷えた体に沁みます。
ちなみに、アスピーテラインは冬期は封鎖され、八幡平山頂周辺はまさに人が近寄らない世界となります。
我々が入ることが許されたわずかな期間のみ、八幡平は様々な絶景を見せてくれます。
ひと夏では回りきることのできない、全て知ることができない自然。だからこそ人は何度もこの場所を訪れ、その度に自然の美しさを目に刻みつけ、さらにはそれ以上の畏怖を感じるのかもしれません。
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