Zero
研修医の同期で、研究者もしてる子がいる。
私は彼女と話してるとなんだかとても楽しくて、そしておそらく彼女も私と話すのが嫌いじゃないみたいで、ふらふらと病院内を歩いてると目ざとく見つかって話し相手をさせてもらえる。
その日は(その日も)遺伝子の転写因子について、もはや講義なんじゃないかってくらいの濃さと親切さで解説されてたとき、
ふと何も考えずこう呟いた。
「その研究結果がわかったら...がんとか遺伝子異常でなる病気の人達が救われるよな」
「....」
その子の目つきが変わった。地雷を踏んだのか。
「....あんな、研究ってもんは、自分の知りたいことを知る為にやるねん!」
「お、おう」
「世の中や人の為になるかどうかってのは、後付けや!」
「そ、そうか」
「知りたいことを知るためにやんねん!」
「わかった、わかったから!」
社会人1年目にして既に研究者としてもアイデンティティが確立していて、しかも初期研修医としても上手に社会適応していて...
そんなスマートで超然とした彼女が、珍しくめっちゃ凄んでたこの瞬間が、忘れられない。
彼女がずっと居心地よく研究できてたらないいなぁ。そしてこれからもっと仲良くなれたら楽しいだろうなぁ。
そんなことを思いながらも、院内で見つからないようにして日々過ごしている。
thank you as always for coming here!:)