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【子育て中ママのキャリアを応援】株式会社ケイリーパートナーズ 鷲谷恭子さんインタビュー


こんばんは!一般社団法人グロウイングクラウドインターンシップ生の、坂本綾乃です!


子育て中のママが「一日2時間から」働くという取り組みをされている、株式会社ケイリーパートナーズの鷲谷恭子さんに、起業に至った経緯や事業内容、そして事業への想いについてお話をお伺いしました。


子育てと両立ができる働き方とは
ー鷲谷さんは現在ケイリーパートナーズや2hoursを経営されているということで、起業に至った経緯を教えて下さい。

鷲谷さん:私は東京の大学卒業後に、JRに就職して28歳で長女を出産するまで働いていました。実は高校生の時に母親を亡くしていて、自分の中で母親とこんなことしたかった、あんなことして欲しかったという思いが胸の奥にずっとありました。それを意識しないように生活してきましたが、いざ娘を妊娠するとその時の感情が蘇って、母親としてたくさんのことをしてあげたいという気持ちになりました。産休に入った時は、また会社に戻ってくるという気持ちでいましたが、子育てが始まると母親としての思いが出てきて、葛藤しました。当時は、男女雇用均等法の本格施行の時で、差別なく長時間働くことにやりがいを感じていたのですが、求められている働き方と私がやろうとしてる母親としての働き方はどうやってもバランスが取れないと思いました。そして、家族と相談して職から一旦離れるという決断をしました。

 そのあと、郡山にUターンして、専業主婦としての生活を始めました。下の子がちょうど一歳になった時に震災が起こって、まずは子どもたちを守らなければならないと思い、郡山でもがきながら1、2年過ごしていました。上の子は当時幼稚園の年長だったのですが、再開したときにはクラスの3分の1にまで人数が減っていました。ニュースで原発いじめが問題になりましたが、まだ幼かった長女が「こんなんじゃ私は福島から出られないんじゃないか」って泣いたんです。その姿を見た時に、他の子どもたちも、見えない制約の中で悩んでいるんじゃないかと感じました。そして家庭から一歩外に出て、子どもたちのためになる活動をしようと思って、2013年からボランティア活動を始めました。これが、再び社会の中で活動をするきっかけになりました。その時、上の子は小学校低学年で14時頃には家に帰ってきて、下の子は幼稚園に入っていなかったので家にずっといて、その中で家事をして上の子が家に帰ってくるまでに捻出できる時間というのが、2時間でした。でもその2時間で家庭の外に出て自分が役立てる存在意義を再確認して、たくさんの人と出会って交友が広がりました。これが2hoursの原体験になりました。

 交友関係の繋がりの中で、小学校、幼稚園に義援金を届けるボランティア活動や、幼稚園での放射線を正しく学ぼうという出前講座をコーディネートさせてもらったり、福島に住む親子を集めて料理教室を開いたりしました。その中で出会ったのが、福島地域通訳案内士の方です。その方に、正しい福島を発信したいなら資格をとってみたらいいのではと言われて、資格を取りました。その後福島大学に来ている留学生と一緒に第一原発を視察するツアーに参加したりして、私以上に原発について勉強している学生さんもいて、正しい福島をみて学んで自国に持って帰ってもらえることは、ものすごい発信力があるのではないかと感じました。

 その頃、2016年に香奈さんと出会って、一母親としての目線やボランティア活動をした経験をもとに、郡山グランドデザインプロジェクトに参加しませんかというお誘いがありました。こういうステップを踏んできて、ボランティアだからこそ、まちづくりの活動に参加したからこそ出会えた人、見られた世界があって、一方で働くことで得られる新しい出会いがあって、母親として守りたい軸もあって、それらの調和が取れた中で働いて、生活できたらいいなと思うようになりました。そうすると、朝から夜までずっと働くことはできない。人生100年時代、母親になった後の人生の方が長いので、その人たちが希望を持てる働き方が地域の中に作れたら、きっともっと豊かな社会になると考えました。多くの時間を割かなくても自分を生かせる働き方が地域にあることは、子育て世代の方やシニア世代の方、時間に制約がある方はもちろん、たくさんの仕事を持って働きたい方にとっても希望になると思います。

 会社の経営者の方とお話する機会も増えましたが、会社の経営改善のためにもっと生産性を上げたい、そのためには利益に直結するコア業務に注力したいとの声を多く耳にしました。それならば、企業活動に不可欠ながら、定型的で高度な判断が不要なノンコア業務を受託し、短時間で働くことに価値を置く人たちのワークシェアリングで担うことができたなら、会社の成長を後押しできると同時に、地域の労働参加率向上に繋げられるはず。そうして浮かんだのが2hoursのビジネスモデルです。

 企業としての悩みは会社員時代の経験から共感できて、専業主婦としての想いはまさに自分ごと。そんな私が間に立ち、両者を結びつけて事業化できないかと思いました。これが、2hoursの事業化のきっかけです。そして去年1月に行われた福島県主催のベンチャーアワードに応募しました。すでに起業して事業をスタートされている方ばかりの中で優秀賞を頂き、評価していただいたことで、地域にとって必要だと思って下さったんだなと思いました。翌月に参加した郡山地域クラウド交流会では、たくさんの方の応援により優勝することができました。これが、起業する覚悟が決まった瞬間でした。そして去年の5月に2hoursを開業しました。



経理事務を請け負う責任
ー2hoursからケイリーパートナーズへの経緯を教えてください。

鷲谷さん:まずは自分ごとである子育て中のママが希望を持てる働き方を提案したいと思いました。第一弾として、三部会計事務所にパートナー企業になって頂き、0⇒1経理スペシャリストというプロジェクトをスタートさせました。経理事務の仕事は、子育てで離職した方が再出発する際に、背骨になるだろうと思いました。起業と同時に、新聞で呼びかけたのですが、ありがたいことに多くの反応があって締め切り前に募集定員が集まりました。6月26日にキックオフをして、勉強会からスタートしました。当初は三部会計事務所とのパートナーシップで進んでいたのですが、持続可能な事業運営を考えたとき、法人化することがより良い選択であるとの決断に至りました。そして、三部会計事務所と2hoursのジョイントベンチャーとして、去年の10月に株式会社ケイリーパートナーズを設立しました。



ー2hoursとケイリーパートナーズは同時進行なのですか?

鷲谷さん:2hoursは個人事業として、キャリア支援や企業の組織改善サポート等を行っています。2hoursとケイリーの相乗効果が生まれるように、いろんな可能性を模索している状況です。乞うご期待です(笑)



子育て中のママの魅力と前職のキャリアを生かした仕事
ーケイリーパートナーズの事業内容を教えてください。

鷲谷さん:事業の柱として、経理事務、バックオフィス、SNSマーケティング支援が育っています。元々経理事務を大きな柱として始めたのですが、お客様にお困り事を聞いていくと、帳票類のデータ化や文字起こしなど多様なニーズがありました。また飲食店などでは本業が忙しいため、SNSでの情報発信をする余裕がありません。私たちは、現状の一歩先をご提案しながら、お客様のサポート役としてお仕事をさせていただいています。どの業務にも共通していることは、寄り添い型の仕事だということです。ケイリーパートナーズに集まっているのは主に子育て中のママなので、コミュニケーションスキルや場を和ませるような佇まいといった特有の魅力があります。そのため、お困りごとに対する親身な寄り添い方が自然にできるんですよね。彼女たちは経理事務については学びながら一歩一歩スキルアップし、前職のキャリアを生かした仕事もできます。現在19名のメンバーがいますが、彼女たちの個性を活かした多様なキャリア形成の可能性を感じています。



個人の価値観と仕事の調和
ー女性の結婚、妊娠、出産、子育てというライフステージの中での、女性の働き方がどんな風に変わっていって欲しいですか?

鷲谷さん:起業する際に一番私の背中を押してくれたのは、当時インターンシップの学生さんでした。彼女が、「結婚するのかな、子ども産むのかなって考えた瞬間に靄がかかってその先を描きづらい」って言いました。また、「自分の軸を大切にしながら笑顔で生き生きと働いている子育て中の女性の背中をたくさん見られたら、私たちも希望を持って社会に出てキャリアを歩める気がする」と何人かの女性が私に言ってくれました。彼女たちが結婚して子育てするとき、そして私の娘たちが大きくなった時に躊躇なく結婚、出産、子育てという選択肢を選べて、男女問わずそれぞれが大切にしている価値観と仕事の調和を大切にして100年生きられる時代にしたいです。それが結果的に女性にとっての希望になると考えています。そのために今できることを一歩一歩逃げずにやっていくことを自分に言い聞かせています。

 先日中学生に対してキャリア教育の講演をさせていただきました。職業キャリアがすぐ目の前にある大学生と違って、まだ想像しにくい中学生に話が伝わるか不安もありましたが、皆さんから前向きな感想をいただけました。大人が子どもたちに希望を与えられる存在であることの重要性を実感しました。これからキャリアを描いていく若い世代の人にとって希望を与えられる事業をして行きたいです。





約1時間のインタビューの中で、鷲谷さんの母親として、そして社会に出て働く大人としての二つの側面の調和への想いが強く伝わってきました。女性だからこそ、これまでのキャリアを諦めざるを得ない状況がありますが、前職のキャリアを生かせる場そしてキャリアアップの場を設けている鷲谷さんの活動は、幅広い年齢層の女性にとって希望であると思います。鷲谷さん、お忙しい中本当にありがとうございました!今後のご活躍をお祈り申し上げます。




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