ベガルタ仙台の懲罰についての私見

今年6月に起きた2件の不祥事に対してのベガルタ仙台への懲罰が決まった。磐田戦のサポーターの不祥事で500万、元社員の着服・横領を長年見逃していた件で500万、総額1000万円の罰金、Jリーグのリリースを読む限り概ね妥当と言わざるを得ない。

今季断続的に続いていたサポーターの不祥事。クラブとサポーターの長年続いてきた「馴れ合い」と言っても良い関係性に一石を投じる結果となった。「ベガルタ仙台サポーターの熱さ」という言葉で美化されてきたが、長年蓄積されたマナーを守れない良くない部分が一気に表面化し、リーグ側からNOを突きつけられたことは重く受け止めなければならない。

着服・横領の件も、クラブの信頼を大きく損ねるものだった。この2つの件は罰金も痛いが、クラブの信頼を大きく損ねているのが本当に痛い。

この期に及んで、磐田の選手に対しての恨み言をSNSに書いている者がいたが、自分たちが今、どう見られているのか、ちゃんと知らねばならないと思う。それは「内向きの論理」であり、外の世界には理解されない。

これは監督がコロコロ変わり、サッカーの確固たるスタイルが無いことにもつながっているのだが、今のベガルタ仙台は外に胸を張って発信できるものが少ない。私は2016年からJ3福島ユナイテッドFCの取材も始めて、外のクラブもいろいろ見てきた。そんな中、外にいろんなことを発信しようというクラブが多いことを感じた。

例えば福島には「福島ユナイテッドFC農業部」というものがあり、選手が農作業を手伝い、風評被害払拭のためさまざまな農産物や加工品を販売し、他クラブのイベントブースなどでも販売を行い、好評を得ている。外に発信できるものがあることはクラブの強みである。

また、東北のJ2クラブに目を移すと、どこもサッカーにスタイルがある。いわきFCやブラウブリッツ秋田がフィジカル、球際の部分の強さを前面に出したスタイルを打ち出しているし、ライバルのモンテディオ山形は長年ポジショナルプレーの指導者を呼んできて、今の時代のサッカーに対応しようと懸命である。

そんな中、ベガルタ仙台は何を外に発信できているのだろうか、と考えるようになった。サッカーのスタイルはここ数年毎年監督が替わり、方向性が定まっていない。そして今回の不祥事。「熱いサポーター」は仙台の誇りとして発信できるものだったかもしれないが、この状況ではルールを守れない集団という見方をされ、ユアテックスタジアム仙台は安心・安全ではないという見方をされる。

外に発信しようとしていかなければ、いろんなことが内向きで決まっていく。内向きの論理でいろんなことを決めようとするとさまざまな歪みが出る。

外に発信しようとすれば、多くの人の理解を得るために、といろんなことがきちんと整備される。内向きの発想をやめて、外に向けて発信する。このクラブはこんな確固たるスタイルがある、と宣言するのも発信だ。サポーター組織も他のクラブや、サッカーに興味の無い一般市民にも誇れる応援をする形に変わってほしい。

発信できるものをつくるには時間がかかるし、簡単ではない。時には我慢しながら、歯を食いしばりながら、少しずつ地道につくり上げなければいけない。

それでもJリーグからきついお灸を据えられ、多くの人の信頼を失っている以上、クラブもサポーターも変わらなければいけない。全国の人たち、ひいては世界の人たちに誇れる、外に発信できるベガルタ仙台であってほしい。

私は長年ベガルタ仙台を取材してきたが、こうしたメディアの一員としての責任も感じる。目の前のサッカーについて書いていれば良い、とクラブのさまざまな問題について良い発信ができなかった。自らのこれまでの活動も反省しなければならない。ベガルタ仙台が良くなるための発信を第一に考え、自分を戒めて活動していきたい。

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