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刀とともに春の訪れを【石田正宗・石田貞宗】

人生で初めて、同じ展示に三回足を運ぶという経験をしました。


その展示というのは、東京国立博物館の総合文化展(1/17~4/9)。私のお目当ては『日本刀』です。

きっかけは、ツイッターのタイムラインに流れてきた一枚の写真。もうそれがすっごくかっこよくて。一瞬で心奪われました。これはなんとしてもこの目で観なければ、そう思ってすぐに東京国立博物館へと向かいました。

その刀が「刀 相州正宗(石田正宗)」です。


刀 相州正宗(石田正宗)

刀剣の展示室に入るとすぐに石田正宗が視界に飛び込んできました。東京国立博物館のホームページに「おすすめ」と記載されていることもあり、トップバッターの位置に鎮座しています。

刀 相州正宗(石田正宗)
切り込み傷

石田三成が所持していたとされるこの刀。見所は何と言っても、この切り込み傷です。私がツイッターで見た写真というのも、まさにこの傷の部分でした。

この傷見たさにやってきた私ですが、刀を前にしてまず感じたのは、その迫力。なんて堂々とした雰囲気を持つ刀なんだろう、と圧倒されました。刃文(刃取り?)の存在感もありますが、やはりこの切り込み傷がそういった「強さ」を観ている側に感じさせるような気がします。
この傷がついたのは、きっと戦闘中ですよね。棟で刃を受けたということだと思うので、けっこうピンチな状況だったのではないでしょうか(あくまでも素人の想像です)。
実際に刀によって命を奪ったり奪われたりしたのだということ。今、刀を観てそう感じることは私はあまりありません。それは刀が単なる武器というだけでなく、信仰や美術品といった様々な側面を持ち合わせているからだと思います。
ですから余計に、この傷がとても恐ろしく生々しく見えました。死が差し迫ってくる、そんな恐怖感。でも、だからこそ当時の「生きることに対しての必死さ」みたいな強い感情がそこにあるような気がするのです。
私にとって石田正宗はそんなことを考えさせてくれる刀でした。


私はこれまで切り込み傷がついた刀を観たことがなかったのですが、他にもあるんでしょうか。ぜひ観てみたいです。
(そもそも、刀同士で斬り合ってあんな風に傷ができるものなんですね。驚きました。刀って私が思っているよりもずっと斬れるのかもしれない……。)

他に展示されていた刀もとても良かったので、特に印象に残ったものを書いていきたいと思います!

脇指 相州貞宗(石田貞宗)

脇指 相州貞宗(石田貞宗)


そして石田正宗のお隣に展示されていた石田貞宗。ここのスペースは石田三成所持コーナーになっていました。これはニコイチ確定ですね(ニコイチのオタク)。

こちらも本当に素敵な刀だなぁ、と惚れ惚れしてしまいました。

まず肌の模様がすごい。こういうのを肌が立つというのでしょうか。彫り物もあって、よく見ると刃文にも色々な模様が。こういう刀は観ていてすっごく楽しいです!
物体としては限られた空間なんですけど、たくさんの風景が果てしなく広がっていて、なんだか海を眺めているような気分にさえなります。

初めは短刀かと思ってしまいましたが、石田貞宗は小さめサイズの脇指です。脇指はサイズの振り幅が大きいですね。
その小さい姿の中に見所をこれでもかと詰め込んだような刀。だんだんと可愛いくも見えてきて、愛嬌のある刀だなぁ、なんて思っちゃいました。


短刀 青江次直

短刀 青江次直

こちらは仙台藩伊達家に伝来したという短刀。丁字という刃文が斜めに倒れている「逆丁字」です。これを観て、そういえば以前観た逆丁字の刀も青江派だったなぁ、と思い出しました。(それは今年の1月の話なのですが、その時はまだ逆丁字の意味すら知らなかったんです。こうやって少しずつ知識が増えていく感覚が楽しくて面白くてたまらないですね!)

私はこの展示に三度足を運んだのですが、この刀ははじめと最後で何故か印象が変わった唯一の刀でした。
初めて観たときは優しい刃文に感じたんです。でも、三度目はとても激しい印象を持ちました。まるで炎が揺れているように見えたのです。これはどうしてだろうと考えてみると、結局は自分の状態が反映されていたような気がします。
一度目、二度目の時にくらべて、三度目は私ちょっと身体が疲れ気味だったんです。それでも刀見たさに出掛けていたわけですが……。今回の印象の変化はそのせいかもしれません。
でも、これはこれで良い体験をしたなー!と思っています。前述の通り、同じ展示に複数回行くというのは今回が初めてだったので、自分の状態によって刀から受ける印象が変化するという経験も今回が初めてでした。

刀って無駄なものがそぎ落とされて、良い意味でシンプルですよね。だから、そこから何を感じるかは私たちひとりひとりに委ねられていて、何をどう感じるのかが制限されない。そういうところも刀を鑑賞する楽しさなのかなと思います。
人によっても印象が変わるし、自分の状態によっても印象が変わるなんて面白い……!それを身をもって感じることができた良い機会でした。

刀 津田助広

こちら何故か写真を撮り忘れてました(泣)。銘の文字がかわいいという感想をよく見かける津田助広。噂に聞いていたとおりの可愛い丸文字!
でも丸字のような曲線って、角張った字よりも彫るの難しそうな気がするんですがどうなんでしょう……。

津田助広は濤瀾刃(とうらんば)といわれる刃文が特徴のようです。キャプションに『寄せては返す大波のような刃文』とありました。……かっこいい!写真が無いので刀剣ワールドさんのサイトを貼っておきます。

今回展示されていた津田助広の刀には、濤瀾刃の山の部分(棟に向かって盛り上がっているところ)から白いもやのようなものが吹き出すように現われている所がありました。刃取りから吹き出すような、と言ったほうが正しいのかな……。(いまだに刃文と刃取りがごっちゃになってしまい……むずかしい……)
ともかく、その白くふんわりした部分が私はとてもお気に入りです。癒やされます。この部分は写真を撮ろうとして、でも上手く映らなくて諦めたんですよね。また観たいなぁ。


太刀 豊後行平

太刀 豊後行平
(ガラスに私自身が写り込んでしまったため
加工で消しています)


こちらは平安~鎌倉時代の太刀。細身で綺麗……!鋒も小さくて上品な感じがしますね。刃文や肌も落ち着いた雰囲気で、静かな刀だなぁと思いました。

焼き落とし部分

腰元で刃文が焼き落としされているのが行平の特長のみたいです。(焼き落としとは、茎手前の部分に刃文を入れないこと。)
ここで、少し前に永青文庫で行平の太刀(古今伝授の太刀)を観たことを思い出しました。その時に買った『季刊 永青文庫』に載っている写真を確認すると、古今伝授の太刀もたしかに刃文が焼き落としされています!こんな風に別々に行った先で、点と点がつながることがあるとすごく嬉しくなりますね。またひとつ知識が増えました!


おわりに

こちらの展示に行くうちに、いつの間にか季節は冬から春になっていました。早い。

家族に「記録用にブログでも書いてみたら?」と言われて挑戦してみたのですが、刀を観て感じたことを言葉にするのはなかなか難しい……。でも楽しかったです。復習にもなるので、これからものんびり続けてみようかと思います。
そして今年は初めて東京国立博物館の年間パスポートも購入しました!仕事の合間を縫って、たくさん通いたいです。次の展示も楽しみにしてます^^


ところで、石田正宗と石田貞宗、刀剣乱舞にこないかな。待ってます……!





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