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書けない日記

この間、書きかけて、書けなくて、そのままになっていた。
こういうものは、書かなくていいんだろうと思う。生涯言葉にせず、ただ時々思い出して笑ったり、しずかな心でギターを弾けばいいんだと思う。

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2月2日(土)

急遽、尾道へ行けることになって、ハライソ珈琲へチラシを受け取りに行った。
せっかくの尾道へ行ける機会、ハライソに行く前にトウヤマさんのお宅へ、お借りしていたCDを返しに行こうと思った。

トウヤマさんは窓ガラスの向こうの音楽室に立っておられた。すぐにこちらに気付かれて、おっ、というように、手をあげて合図して下さった。窓の下に赤い魚が泳いでいた。

次の瞬間、わたしのうしろでドアが開いた。振り向くと、奥様のなおみさんが、作業場のドアの向こうで笑っていた。

その次の瞬間には玄関のドアも開いて、今度はトウヤマさんが笑っていた。2人して、にこにこ。
わたしはもじもじ、CDをお返しして、すぐに辞去した。


トウヤマさんのおうちから、坂を少し上がって、このへんにあると聞いた友だちの家を探した。ブルーシートがかかっている工事中の家の隣、と聞いた気がして、ブルーシートを探した。

ブルーシート、ないな、そろそろ諦めよう、と、階段を降り始めた時、道の脇には梅が咲いていて、ぽかぽかと春みたいにあたたかかった。
その時、さっき見たトウヤマさんご夫妻を思い出した。

晴れた日の土曜日に、別々の作業場で、別々に、下を向いて作業をしているお2人の姿。
きっとこんな日は、部屋の中まで日が射して、くっきり陰を作ったり、埃に反射してきらきら光っている。
遠く、遠く、しずかで、あたたかくて、強烈にしあわせな光景に感じた。

トウヤマさんご夫妻は、わたしのことを「オカダくん」と呼ぶ。このお2人だけが、なぜかそう呼ぶ。それをふとまた思い出して、なんだかとてもうれしくなった。

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それから、
ぽかぽかした道を、ハライソ珈琲へ向かった。

これが前半だけど、
後半は書けないだろうな…

大切な、何時間かの出来事。

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