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『チョコレート・バイブル』人生を変える1枚と出会いたい【読書】

今回の読書 『チョコレート・バイブル』著 クロエ・ドゥートレ・ルーセル

これはチョコレートを扱った物語や宗教的な内容ではなく、至高の1枚を追い求めた筆者の、究極的なチョコレート愛とその布教の1冊です。
真に美味しいチョコレート、あなたは口にしたことがあるでしょうか??そもそもチョコレートに違いがあるのか…という方もいるでしょうし、『ゴディバは最高だ!!』と言う方も会ったことがあります。もちろん、高いということはそれなりの手間がかかっているので、市販品よりは美味しく思えるでしょう。しかし、その美味しさは『テイスティング』した上での評価でしょうか??
この本では、作者が徹底したチョコレートのテイスティング方法を紹介しています。それは、自らが『サバイバル・バッグ』に入れたくなるような、素敵な出会いをするため。チョコレート製造の多くの場に居合わせ、世界各地のチョコレートを食べ比べた作者ならではのそのラインナップとテイスティング方法は、今後のチョコレートライフに大きな影響を与えるでしょう。
一口にチョコレートと言っても、その歴史や定義、産業や企業努力はなかなか知られていません。作者が憂いている「チョコレートの全体的な品質低下」なども、これらを踏まえると差し迫った現実であるとわかるでしょう。
これは、本当に良いチョコレートを愛したい方への、運命の出会いとなるでしょう。

🕊🕊🕊読書感想文&思索🕊🕊🕊
多くの「嗜好品に関する本」では、安っぽくて幼稚なものはまっさきに排除されてしまいます。本当にいいものが分かるならばいらないだろうとばかりに。しかし、クロエは小さな頃に食べたチョコレートお菓子を、彼女の『サバイバル・バッグ』に未だに入れています。この『サバイバル・バッグ』とは、無人島に持っていきたいチョコレートを詰めたもののこと。冒頭で茂木さんと著者との対談が乗っているのですが、そこで「売れるんじゃないか」という言及のあった通り、素敵なアイデアだと思います。その、彼女の究極チョコレートを詰めたであろう『サバイバル・バッグ』には、品質的にはかなり劣るであろうそのチョコレートお菓子が今でも入っている。それは、チョコレートが「思い出を呼び起こすもの」でもあるから、だそうです。チョコレートが持つ意味、嗜好品が持つ意味全てに通じるものだと思います。記憶と通じているという点では、嗜好品に貴賤はないのですね。(後に著者は、適切なテイスティングで素晴らしいチョコレートを知ってしまうと、今までのチョコレートが食べられなくなる恐れがある…とも言っていますが、その際に「その覚悟があるか」と問われているので、馴染みのチョコレートに対する気持ちにとても寄り添った一文だと思います。)
この本、句読点のように『チョコレート』の文字が溢れているのですが、テイスティングの際に語られる風味や豆の種類や舌触りの話からか、むせるような感覚は全くなく自然とチョコレートが食べたくなりました。ただし、これは人によるかと思います。文中で度々触れられている通り、市販のチョコレートというのは大体がバニラエッセンス、大量のお砂糖、それにカカオマスではなく植物性油脂が使われており、理想のチョコレートとは程遠いものであるとされているためです。豆の種類も生産しやすい量産型の豆が多いと指摘されており、豆産業を支える農家の状況も憂いているため、市販に手を出すのが少し億劫になる人もいるかもしれません。著者は、まずはどんなチョコレートでもいいからテイスティングを重ねて善し悪しを計るように、としていたので、あまり気にしなくてもいいのかもしれません。
作者が紹介しているテイスティング、これは他の嗜好品だけでなく日々の生活で「善し悪しを計る」ときには欠かせない手順なのではないかと少し思ったり。まずは集中しやすいタイミングを探し、そのタイミングで混ざらないよう注意しつつ吟味。その後、気に入ったものや気に入らない部分を書き留める…と言ったことは、ワインでも日本酒でも、それこそ本でも情報でも言える話だと思いました。チョコレートには興味無いなぁ、という人でも、何か熱中するものがあり、更にその道を深く開拓したい方だったらとても相性のいい方法かもしれません。

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