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Plenty

(これは2017年9月17日に書いたものです。)


plenty
2004年に結成、2009年にデビューした、スリーピースロックバンドの名前。彼らの曖昧さと逡巡と気怠さに、当時、思春期真っ只中にいた私は、どうしようもなく惹かれました。ためらいや遣る瀬無さ、自分に対するどこから来るのかわからない不安や劣等感を、否定するのでも、消してくれるのでもなく、ただその隣に寄り添って一緒に水の中でブクブクしてるのを許してくれる様な…そんな後ろ向きな安心感が、好きでした。

世間一般で言えば確実に暗いと言われざるを得ないplentyだけど、野外フェスで聴いた彼らの曲は心の底から愛おしくて、両腕をめいいっぱい広げて空をハグしたい!という気持ちにさえなりました。
だって、人との関わりや距離感の不思議や難しさ哀しさを、江沼さんったら、青空のもと、くしゃくしゃの笑顔で心の底から嬉しそうに歌っていたんだもの。「あぁ私はこの人が、この人の音楽が心底好きなんだ」とおもいました。

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そんな彼らが今日、解散しました。

plentyの音楽はもう演奏されることはなく、再生される音楽になってしまった。一太さんは自分らしくドラムを叩くと言い、新田さんは音楽を辞める、江沼さんは今後いつ歌うかわからない、なんて事を言ってる。なんだかわるい夢をみてるみたい。だけど現実。私は全然受け入れられなくて、やだよー辛いよーという気持ちばかりが残っています。
でもバンドの解散というものは、彼らの口から語られる事以外に対して、私達ファンがひそひそ憶測でモノを言っても何も変わらないし影響もできない。と、嫌なくらい素直に思うので、解散は、解散。それが以上でも以下でもない。と、自分に言い聞かせています。


だから私は、私達のコトを言葉にしますね。

plentyはデビューからの8年間、3人から2人になって、また3人になりました。

その間に私は、plentyを同じように大好きな3人の同級生と出会いました。あの頃、plentyが好きな片田舎の女子高生なんて、本当に稀で。それでも私達は、同じものが大好きな者同士のアンテナをぴんっ、と高くたてていたんだね、きっと。…なんて言うとかっこいいんだけど、私がplentyを知るきっかけになったのは、その3人の中の1人からの勧めです。彼女に出会っていなかったら、私はplentyをこんなにもちゃんと聴くことはなかったのかもしれない。そう思うと、感謝してもしきれないよ。私を、plentyと出会わせてくれてありがとう。この曲のこのフレーズが好きだ、みたいな話を制服姿の私達は延々と話していたね。クラスも違う、好きな服も違う、いつも一緒にいる友達も違う、そんな私達が繋がったのは、間違いなく、plentyがいたからだよね。卒業後も、またスリーピースとして再始動したplentyのライブのために渋谷公会堂へ行ったりしてね。こんなこと言うのはありきたりだけど、plentyはまさに、私の青春そのもの。ってやつです。


「必死こいてさ、バカみたいだろ ちっぽけでさ まだまだ」「愛せなくてさ 餓鬼みたいだろ 甘えちゃってさ やだやだ」なんて歌うバンドが私にくれたのは、人との繋がりでした。私は好きなものがある限り、ひとりにはならないでいられる、と本気で思ったのです。それとは反対に、その繋がりの儚さ、脆さ、なくなる事への恐怖なんかからも、目を背けることはできなくて。私にとってplentyの音楽は、人のつながりに対する感性の源でした。そして縁は、円になりました。

私達はもう、あの頃みたいに毎日同じ学校に通っていた女子高生じゃないです。大学生になって、実家暮らしの子もいれば一人暮らしをする子もいて、一般企業に勤めるために就活をする子もいれば、国家試験の勉強をする子もいる。全然違う生活を送っています。SNSでお互い元気に楽しく学生生活を過ごしているな、って確認しながら、ハートボタンを押して、たまにはまた会いたいよね〜、なんてコメントしあって。だから本当に、こんなことでもない限り、わざわざ連絡を取り合って会って…なんて、ここ1年は特にしていなかったんだ。このメンバーで会えることが本当に嬉しくて、だけどより一層、切なかった。皮肉なものですね。3人は頭が良い子達だから皆どこかで思っている事だと思う。だから、あえて勇気を出して言うと、plentyが解散してしまった事で、少なからず私達全員が一緒に会う事は、今後、もっと、ずっと少なくなってしまうんだと思う。
バンドの終止符の後に続いて、私達の青春の終止符が打たれる感じがしているの。



でもね、やっぱりね、私は、さみしい!plentyのライブにまだまだ、30代になったって、結婚したって、子供ができたって更年期になったって(!)、行きたかった。みんなと、ライブという場所で会いたかった。女子高生の頃の自分達と比べて、老けたね〜なんて言って、笑い合いたかった。私達はもう、4人で同じバンドに会いにいく事が出来ない、その事実にやっぱり、さみしい〜って、すごく強く思っちゃうの。だから心のどこかで、期待を捨てられないでいます。また4人で、plentyを追いかけられる事。4人でくだらないお喋りができること。私がこんな滑稽なコトを思っていること、どうか心の片隅に覚えておいてもらえたら、嬉しいな。


そしてやっぱり、こんな不思議な円をくれたplentyへ、8年間の感謝と愛情が溢れて仕方がありません。きっとこれからも、ずっと。

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