1ヶ月間の自宅療養

<2020.02.19.投稿>

妊娠6週に入った頃から、つわりらしき症状が出てきた。
寝起きの空腹感が恐ろしく気持ち悪い。ムカムカする。
妊娠してない時の「お腹空きすぎて気持ち悪いー」とはレベルが違う。ガチでただただ「気持ち悪い」。気持ち悪すぎて、もはや食べて良いのか迷うレベル。

そんな中、2週間ぶりに産婦人科へ行った。妊娠7週と3日。
ここ最近の胸のムカつきを訴えると「つわりが出てるってことは、今日赤ちゃんの心拍が聞けるかもねー」と言われた。

ここ1週間の耐えがたいムカムカは、赤ちゃんが生きてる証だったんだと知り、あの苦しさが急に愛おしく感じた。なら許す!って思った。

診察を受けてみると、実際、胎児の心拍が聞こえた。
トットットットッ…
時計の秒針の2倍くらいのスピードだった。

一緒に診察室にいた旦那さんと2人で顔を見合わせ、小さな感動を共有した。

しかし感動もそこそこに、すぐに
「あー、でもちょっと…まずいね」とドクター。
急に深刻なムードが漂い始めた。

どうやら子宮内で出血があり、それが血腫になっているようだった。
絨毛膜下血腫と言うらしい。

胎嚢2.2cm、対して血腫は2cm。ほぼ同じ大きさだった。
「ちょっと(出血が)多いねぇ。このまま出血が続いたら、切迫流産ってのになっちゃうの」

血腫のせいで胎児に栄養が届かず、そのまま死んでしまう可能性がある。これを切迫流産という。
この言葉自体は、ネットで何度も目にしていた。妊娠初期の流産は妊婦の15〜25%に起こる、と言われているらしく、まったく他人事じゃない数字に驚いた。

他人事じゃないとは思っていたが、やはり目の前でそのワードを聞くとなかなかの衝撃だった。

衝撃と、『ほんとにあるんだ』と妙に冷静な部分とが、混ぜこぜになっていた。


「まずは薬で出血を止めましょう」

「この薬を飲んで、血腫はどうなるの?出てくるの?」

「血腫自体はなくならないけど、それ以外のところから赤ちゃんに栄養が届いてる。「それ以外のところ」がどんどん増えていってくれると、血腫の影響が減っていく。胎児自体が大きくなって血腫を押しつぶすこともあるよ。周りがどんどん大きくなって、次第に血腫に発言権がなくなっていくってイメージ」

なるほどね。


そもそもこの絨毛膜下血腫の原因は、身体が胎児を「何これ!こんなの見たことない!異物異物!」と反応して、子宮を収縮させて排出しようとするかららしい。
子宮内が収縮し、でも子宮自体はそんな簡単には収縮せず、そこのあいだでズレが生じて出血。血の塊になる、という流れである。

この説明を聞いて、身体ってアホだなーって思った。正直すぎるだろー、空気読めよー。

まぁでもこれは、私の身体が正常に反応したという証でもある、と言える(赤ちゃんには悪いが)。

私は「1か月の自宅療養」を言い渡された。仕事ももちろんお休みだ。仕事どころか「トイレと歯磨き以外は寝て過ごすように」となかなか難しい課題を与えられた。

もちろんこの文章もベッドの中でスマホをシュッシュッってしながら書いている。
実はここ数日はそれさえも億劫だった。身体がやけに疲れやすくなっていて、それでも洗濯に掃除にと動いていたから、スマホで文字を打つなんて行為にまでエネルギーが回らなかった。頭が全然回らなかった。

無理をしようと思えば全然出来てしまう。多少しんどかろうが、家事も出来るし、買い物だって行ける。確かに身体は正直で、疲れは感じていたけれど、それでもいくらでも誤魔化せた。

でもそれが、今回の絨毛膜下血腫を生んでしまったようだ。

今は文字通り、ずっとベッドで横になっている。正直な身体に、正直に反応してみることにした。
こんなこと、今まで怖くて出来なかった。元々ズボラな私が無理をしないでいると、どこまでも怠惰になっていきそうだったから。

毎日仕事へ行く旦那さんには申し訳ない以外の感情が起こらない。
「無理をしない」「ゆっくり休む」は罪悪感との戦いでもあるように感じる。
簡単なようで、案外難しい。

この1か月の自宅療養は、こんな私を支えてくれる有難い人間関係に、有難い環境に、単純に「ありがてぇ〜」と言えるような、身体くらい正直で素直な心を育てる期間なのかもしれない。

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