見出し画像

キタナイ大人になりたくない。

「キタナイ大人になりたくない。」

17歳の私から32歳の私へのメッセージが、唐突に目に飛び込んできた。

先日、実家にある荷物を断捨離しようと決心。おそるおそる思い出の品が入った段ボールを開いた。
何故か無性に気になったクリアファイルに手を伸ばすと、中に入っていたプリントに、

「キタナイ大人になりたくない。自分に素直な純粋な大人でいたい。」

そう記されていた。

ギリギリ読めるレベルのめちゃくちゃなギャル字で殴り書きされたその言葉。

これは、

Q. 15年後の活躍している自分を想像し、15年後のありたい姿を記入してください。

という問いに対する17歳の私の回答だった。

当時、高校に居場所を失くし、自分を見失った私が絞り出すように書いた答えだった。周りの生徒たちは、「弁護士になりたい。」とか「2人の子供を育てる母親。」とかそんなことを書いていた記憶がある。

なるべくありきたりな普通のことを書こうと思ったけれど、自分に嘘をつくこともできず葛藤した末に記した、17歳の私の唯一の本音だった。

奇しくも、私は今32歳。15年後の私を生きている。
あまりの偶然に時が止まったようだった。

15年時が経った32歳の現在、私はまだ何者にもなれていないし、まだ色んなことが上手にできない。自分を見失いかけたこともあるし、私の「自分に素直」な生き方は、世間や常識からはかけ離れていて、そこに苦しんだり傷ついたことが沢山あった。けれど、自分に素直に生きることを捨て去ることだけはしなかった。

だから、当時の私に伝えたいことがある。

「私は、キタナイ大人にはなっていない。ちゃんと、バカみたいに自分に素直に生きているよ。」

それだけは、胸を張って言えると思う。

17歳の自分の唯一の願いを叶えてあげられた。それを少しだ誇らしく感じながら、静かにプリント用紙をゴミ袋へと移した。





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?