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夜と愛と哀

「この夜は一体いつまで続くのだろうか」と感じる夜もあれば、「ずっと明けなければいいのに」と思う夜もある。我ながらなんて都合がいいんだと思いなが、ただ暗いベランダを遠目で見て、勝手に枕へと伝う涙に気づきながら、自分のもう少し奥行きのありそうな感情を無視をする。

愛されたかった。
いや、その人なりの愛を注いでもらっていたんだろうと思う。
でももっとわかりやすく、愛されたかった。
意見の違いを「向き合う」という大義名分で理詰めにしたり、酔っ払った勢いを利用して「大切だから感情をぶつけられている」という疑似愛的な思想で叩いたり殴ったりせず、ただ言葉は少なくてもいいから愛していると言われたかったし、なんなら一度でいいから顔をくしゃくしゃにして笑って欲しかった。私との時間を、楽しいものとして私自身に見せつけて欲しかった。私にとっての愛とはそういうものなのだと思う。愛されたかった。

母もそうだった。父もそうだった。愛しているからちゃんと育てたいとよく言われていた。でもだったら無視したり、怒鳴りつけたり、ご飯を抜いたり、叩いたりしないで褒めて欲しかった。愛しているという事実を言い訳にせず、ただ愛して欲しかった。

いくつになっても満たされないこの穴を、私は情けなく思うのだが、もう情けないという気持ちでいつか満たすことができる日を待ち侘びるのはやめようと思う。

夜は長いものであって、明けないことはないものなのだ。それが私にとって受け入れ難いことであったとしても。

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