見出し画像

感受性という土壌を耕す

レイチェル・カーソンという女性に出会ったのは、1980年代後半のこと。

『沈黙の春』

という衝撃的な報告書とでもいえる著書を通じての出会いでした。


それは、この本が1962年に出版されてから25年以上も経ってからのことでしたが、わたしは、農薬や殺虫剤の毒性、生態系への影響の仕方について系統立てて知り、震撼させられました。

自然界では、ひとつだけ離れて存在するものはない。

『沈黙の春』


と述べられているように、人間や動物、植物などなど、地球上のすべての命と環境のつながりを捉えた見方は、わたしの価値観を大きく変えるきっかけになったのです。


こうしてわたしは、科学者としてのカーソンさんを知ったのですが、ほんの数年前、偶然の巡り合いから、カーソンさんのドイツ語版エッセイを手にしました。

"Magie des Staunens"
邦題:『センス・オブ・ワンダー』


慈しみや敬意をもって自然と対話するカーソンさんの美しいことばからは、気高さも感じられ、彼女の世界に魅了されました。

読みながら、

はぁ~

と感嘆のため息が出てくるのも、しばしばでした。


余談ですが、英語からドイツ語への翻訳者(Jonathan Franzenさん)は、
両言語のほかに、鳥のことばも話されるそう。

お話しが始まる前から、

はぁ~

ってなりました。


『センス・オブ・ワンダー』ドイツ語版より


この本の中で、今でもとても心に響くところをここに記してみます。

・・・・「知る」ことは「感じる」ことの半分も重要ではないと固く信じています。

子どもたちがであう事実のひとつひとつが、やがて知識や智慧を生み出す種子だとしたら、さまざまな情緒やゆたかな感受性は、この種子をはぐくむ肥沃な土壌です。
幼い子ども時代は、この土壌を耕すときです。

『センス・オブ・ワンダー』上遠 恵子 訳


美しいものを美しいと感じるとき
可哀そうにという感情が湧いてくるとき
などなど

わたし達は、その時々の感情に向かい合いながら、自分自身とつながっていくのではないでしょうか。


自分とのつながりがあってはじめて、感情と知識や経験値が結びつき、自分なりの考えをまとめることができる。

その思考をもとに行動がうまれ、「わたし」という人間を世に出していけるのでは、と思えるのです。


ですから、豊かな感受性は、子どもにとってだけでなく、大人にとっても、なくてはならないもの と言えるでしょう。


このことについて、カーソンさんは語ります。

もしもわたしが、すべての子どもの成長を見守る善良な妖精に話しかける力をもっているとしたら、世界中の子どもに、生涯消えることのない

「センス・オブ・ワンダー = 神秘さや不思議さに目を見はる感性」

を授けてほしいとたのむでしょう。

同上


『センス・オブ・ワンダー』ドイツ語版より



今年もnoteのみなさまの記事を拝読し、わたし自身、感受性という土壌を耕す機会に恵まれました。
心を打たれ、よい刺激をいただき、感性がたくさんの栄養をとりこむことができたからです。

ありがとうございました。

新しい年も、みなさまが、
善良な妖精に守られてゆきますよう
お祈りいたします。


よいお年をお迎えくださいませ。


Reiko


追記:
タイトルの画像も
『センス・オブ・ワンダー』ドイツ語版
から借りています。
イラストレーターは、
Johann Brandstetterさん。







この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?