辻仁成

私的ラジオスーパースター烈伝⑨辻仁成

今回は1987年10月5日から1989年10月2日まで、オールナイトニッポン月曜二部を担当されていた辻仁成さんのご紹介です。

「辻仁成のオールナイトニッポン」では、構成しているのはリスナーのカードとそれをつなげる辻さんである、と言う考えから放送作家は特に居なかったそうです。そして番組内には特にこれといったコーナーは設けられていませんでした。

リスナーからのカードに対し、辻さんは「この曲の登場です!」と言って曲で返す、というリスナーとのコミュニケーションの方法を取っていました。ここでいうカードとは、この番組でいうハガキ、お便りのことです。

これは辻さん自身がもともとミュージシャンである事から、自分としてはトークではなく曲でメッセージを送る、という考えからきていたものだそうです。

オープニングではエアロスミスの「Walk This Way」にのせて、「Hello Hello This is Power Rock station。こんばんはDJの辻仁成です。真夜中のサンダーロード、今夜も抑えきれないエネルギーを探し続けているストリートの上のロックンライダー。夜更けの固い小さなベッドの上で愛を待ち続けている sweet little sixteen。愛されたいと願っているパパも 融通の利かないママも、そして今にも諦めてしまいそうな君にも、今夜はとびっきりご機嫌なrock'n roll musicを届けよう。アンテナをのばし、周波数をあわせシステムの中に組み込まれてしまう前に、僕が送るHot Number をキャッチしておくれ。愛を 愛を 愛を 今夜も オールナイトニッポン!!」という辻さんの前口上で番組はスタートします。

この特徴的なオープニングは当時オールナイトニッポン月曜一部を担当されていたデーモン小暮閣下や、金曜1部の鴻上尚史さんらに、よくパロディにされていました。

この語り口調は当時でもやや異質に感じるくらいのものでしたが、今思うと不思議と耳に残っているんですよね。こうしたある意味型破りな放送は、私が知る限りその後もなかったと思います。

意外なところでは、オールナイトニッポンを始める前の伊集院光さんが、辻さんのオールナイトニッポンを参考として見学に来られています。この番組スタイルに感心したものの自分には向いていないと悟った伊集院さんは、辻さんとは全く芸風の異なるラジオパーソナリティに成長していくのですから、いかに唯一無二だったかがわかろうというものです。

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ただ、伊集院さんも「真夜中のサンダーロード」など、オープニングのフレーズを引用しており、これはTBSに移ってからもままありました。

まさかこのラジオを聞いていた時代には、のちに第13回すばる文学賞を受賞して、辻さんが小説家になるとは夢にも思っていませんでした。そしてその後に芥川賞まで受賞してしまうんですから、すごいことですよねえ。


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両親2人の介護を一人でやってます。プロレスブログ「せかぷろ」&YouTube「チャンネルせかぷろ」主宰。現在ステージ2の悪性リンパ腫と格闘中。