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風の香りを感じる物語――アセアンそよかぜさん「常夏の朝の大地を駆け抜けて」評

こちらのnoteは小説「透明批評会」の11月、アセアンそよかぜさん作「常夏の朝の大地を駆け抜けて」への批評noteとなります。対象作品はこちら。

物語に通底する、「風の香り」を感じました。それはタイという国の持つ雰囲気、生活している人々の呼吸、ビジネスマンである主人公の物語を通じた成長などを通じて感じられたものかもしれません。タイには実はまだ私は行ったことがないのですが、友人はいて、その友人を思い出しました。彼はバンコクで働いています。主人公・黒田とその友人を重ねて読ませてもらいました。ビジネスマンというリアリティの中に、丁寧な描写のおかげで読み手の想像をかきたてる力を文章に感じました。

一方で、描写がやや解説文的に感じる部分もありました。国や地方の説明、主人公の置かれている立場などです。ここは大事な部分なので、せっかくならば比喩などを多く使って装飾すると、より魅力的な文章になると思います。それと、せっかく編まれた文章なので、三点リーダ「…」は2つずつ使う、とか文中途の「!」「?」のあとは全角スペースを入れるなど、細かいのですが、そういう小説執筆上のルールが守られると、さらに作品が引き締まると思います。

会話に改行がないのは、こだわりでしょうか。少し読みづらいかもしれませんが、それはこだわりがあるのならこのままでもいいかもしれないですね。

文中に出てくる、タイの風景やお料理(ガイヤーン、大好きなんです)、行商の人々の描写は、とてもいいと思います。なんだかパクチーが食べたくなりました。あと、電車が私は好きなので(特にローカル列車)、列車がタイの街を走るくだりはとてもワクワクして読みました。新しい駅名が出てくるたびにときめいたりして。

列車の走る疾走感や、タイを包み込むような風。これらが表現されることで物語に彩りを添えているように感じます。タイという国をもっと知りたくなりました。

アセアンそよかぜさんの作品、今後も楽しみにしています。ありがとうございました。

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