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ゆたかな自然に囲まれた地方都市でChatGPTを体験する市民講座を開催してみて思ったこと

高知県須崎市で10代の子どもたちが無料で最先端のテクノロジーに触れられる施設「てくテックすさき」を運営するみんなのコードの牛島です。

つい最近、須崎市の10代の子どもとその保護者を対象にした「ChatGPT市民講座」を開催しました。現在話題の生成型AI「ChatGPT」は、すでにビジネスシーンにおける活用が広まっており、今後も急速にこれらの生成型AIの普及が進んで行きそうです。

さて、てくテックすさきは、人口2万人のゆたかな自然に囲まれた「高知県須崎市」にあります。人口2万人というと、ラベンダーで有名な「北海道・富良野市」と同じくらいの規模です。

そんな「高知県須崎市」で、なぜ最先端のAI技術を体感する市民講座を開催したのか。

今回は、市民講座の企画背景と、実際に参加した子どもたちと保護者の反応についてのお話をさせてください。



人口2万人、高知県須崎市はどんな町?

まず最初に、「高知県 須崎市」についてご紹介をさせてください。

須崎市は、カンパチの養殖などの水産業や、ミョウガ、柑きつ類​​などの農業が盛んなエリアです。実は、ミョウガ栽培では全国No1の販売額です。

最近は須崎の養殖魚が「天然ものより美味しい!」とメディアに取り上げられる機会も増えましたが、そんな養殖魚の品質を支えているのは、IoTを活用した水質・水温などの環境変化の監視システム。環境改善のための餌改良なども行いながら、美味しい魚が全国に届けられています。

※須崎勘八は日本テレビ「満点★青空レストラン」でも取り上げられました。(こちら

一方で、”地方あるある”「人口減少と人口流出」が課題となっており、10代の子どもの数はわずか約1,800人。

また、須崎市のある高知県は「シングル家庭」の割合が高く、18才未満の子どものいる家庭の約4割が「教育や進学に関する悩み」を抱えているといわれてます。そのため、市は教育の質向上とテクノロジー教育の活性化に取り組み、持続可能な社会の実現を目指しています。

そのような背景から、私たちが運営している、子どもたちが無料で最先端のテクノロジーに触れられる施設「てくテックすさき」が開設されました。

新しいテクノロジーを子どもたちへ安心して届けるための対話

よく分からないから怖い。
怖いものにはなるべく子どもを近づけさせたくない。

新しいものに対して「怖い」と感じるのは、ごく自然な反応だと感じます。子どもを未知の危険から守るために、大人がセーフティーネットを構えることは重要なことです。

しかし、新たなテクノロジーがあっと言う間に世の中のスタンダードになって、地域の大人が使う前に子どもたちの間で普及が広まることもあります。そして、一部の望ましくない使用方法によって子どもたちが危険な目に遭う事件が起こってしまうことも。

だからこそ、私たち大人はなるべく早いタイミングで、最新テクノロジーを子どもたちにどのように届けたら良いかを考える対話の機会を持つことが大事だと考えます。

てくテックすさき」を町に根ざしたテクノロジーのハブ拠点としていきたい。私は常日頃から地域の大人にも私たちの施設を訪れてもらいたいと思っていました。

  • どうしたら地域の大人にも開かれた施設にできるだろうか

  • どうしたら最新テクノロジーについての対話の場を作れるだろうか

そんな想いが交差していたので、今世の中を席巻しているChatGPTは幅広い年代の地域の方々を呼ぶ恰好のテーマではないかと閃いたのです。

ChatGPTって何?市民講座の参加者の反応は…


そこで、「ChatGPTという言葉は聞いたことがあるけど、実際どんなものなのか知らない。どうしたら使えるのかも分からない」といった地域の方を対象に、ChatGPTを体験できる市民講座を開催しました。

  • ChatGPT とはどのようなものなのか

  • それによって社会や生活はどう変わるのか

  • 実際にどんな感じで使うのか

…を、みんなのコードの竹谷正明(たけやまさあき)の解説を交えながら実演しました。竹谷は、公立小学校で教員として30年間勤務。プログラミング教育普及のため全国で講演、授業支援などを行っているメンバーです。

※市民講座の様子はこちらの記録用動画でご覧いただけます。
https://x.gd/qltxX

AIとはどういったものなのか、ChatGPTはどんなことができるのか等の説明を聞いてもらった後、参加者からChatGPTへの質問を募りながら最新版のGPT-4モデルをスタッフ介在の上で体験していただきました。

参加した子どもたちからは

「現代版桃太郎の話を考えて」
「夏休みの自由研究のアイデアを教えて」

などの質問が挙がったり、

「須崎市について教えて」

との問いかけに、ChatGPTが自信満々に実際には存在しない「須崎祇園太鼓」というイベントについて紹介し始めて、会場にいる市民の皆さんが総ツッコミをしたりと、大いに盛り上がりました。

また、倫理で有名な「トロッコ問題」について聞いたときには、ChatGPTがそれぞれのメリット、デメリットを紹介した上で、「最終的な判断は人間の皆さんがしてください」と締めくくったので、私を含め参加者の皆さんも考えさせられるところがあったと思います。
そんなやりとりを体験して、参加した子どもたちの中から「ChatGPTはアイデアを出したり、まとめてもらうのは得意だけど、正しい情報を教えるのは苦手なのかもしれない」という意見が出たのが印象に残りました。

このようなことを体験的に考える機会を持つことが、答えのない未知の世界へ進んでいくために、子どもだけでなく大人にとっても貴重な経験に繋がるように思います。

また、講座当日は、みんなのコードが運営する石川県にある「コンピュータークラブハウス加賀」ともオンラインで繋ぎ、子ども同士が遠隔で交流できる場にもなりました。

「オンラインで遠隔地を繋ぐ」ということもテクノロジーの恩恵の一つですから、日常的にはあまりテクノロジーに触れることのない参加者にとっては、これも良い体験の機会に繋がったのではと想像します。

子どもが新しいテクノロジーを創造的に活用していける地域を作りたい

私たちが運営する「てくテックすさき」は10代の子どもに向けた施設ではありますが、利用する子どもの保護者のみなさんや地域の大人の関わりも重要だと考えています。

新しいテクノロジーは人間に大きな価値をもたらすと期待されますが、SNSなどのように「使い方によっては新たな危険性を孕んでいる」ことも少なくありません。

全てのリスクを予見していくことは難しくとも、できるだけ幅広い世代を交えて対話を重ねることで、子どもたちにとって有益な使い方をいろんな角度から議論がすることができます。

公教育の中では、なかなかこのような新しいテクノロジーについての市民対話の機会を設けることができないかもしれませんが、だからこそ、私たちのような団体が積極的に市民に向けて対話の場を開いていく必要があると感じています。

てくテックすさき」は、子どもたちが体験を通してテクノロジーとの向き合い方を学び、ひとりひとりが創造的に地域や社会で活躍できるようにサポートする、そんな施設でありたいです。

この取り組みを全国へ広めていくために、メンバー一同、日々頑張っております。ぜひ今後もみなさんから応援をいただけますと大変ありがたいです。

本日は、最後までお読みくださりありがとうございました!


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