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Raspberry Pi 5レビュー

昨年10月末にRaspberry Piの最新モデル、Raspberry Pi 5が発売されました。SoCなどの性能が向上した以外にも、色々と機能アップしています。

以下ではRaspberry Piを略してRasPiと表記します。

2024年2月現在、技適は取得したようですが技適マークの表示があるRasPi5はないため、国内では市販されていません。しかしPimoroniThe Pi Hut, Adafruit等の海外通販を利用して入手することは可能です。

2024/02/11追記: 日本語化の記事へのリンクを追加しました。

2024/02/13追記: 国内でも技適マークの付いたRasPi5が発売されました。注意点の項に技適の特例制度について記載していますが、この記事の作成に利用したRasPi5には技適マークがありませんので、この記述は残しておきます。


スペック

まず最初に、一つ前の世代のRasPi4とスペックを比較します。

CPU・メモリ

CPUはBroadcomの4コア 64bitは同じですが、Coretex-A72 1.8GHzからCortex-A76 2.4GHzに性能アップしています。

メモリもLPDDR4-3200からLPDDR4X-4267になり、クロック周波数やデータ転送速度など向上しています。

ネットワーク・入出力

Wi-FiはRasPi4と同じく11ac対応、Bluetoothは5.0/BLE、有線LANも同様にGbE対応ということで、表面的なスペックに変更はありません。PoE HATを追加すればLANケーブルから受電できます。

USBはRasPi4と同じく3.0対応が2ポート、2.0対応が2ポートです。2ポートあるmicroHDMIも4k@60Hzに対応しています。GPIOは昔から変わらず40ピンが備わっています。

RasPi5で新たに、ファンコネクタ、電源ボタン (後述)、PCIe (後述)、RTC、UARTデバッグポートが追加されています。ファンコネクタに接続する公式アクティブクーラはヒートシンクと一体化し、静音性の点でもRasPi4のファンより大幅に改善されています。

電源

5V 5Aを供給できるUSB-C電源が必要です。USB等の外部機器を接続しない場合は3Aでも動作するようですが、画面上に警告メッセージが表示されます。心の平穏のために、公式のACアダプタなどを利用しましょう。

RasPi5は本体に電源ボタンが追加されました。ただし、電源のon/offを入れ替えるスイッチというよりは、電源をoffする時や、電源off (通電状態) から電源を入れ直す時に使うボタンであることに注意。公式ケースなら、本体を格納した状態でボタンを押せます。

電源スイッチの付いたUSB-Cケーブルですが、市販品だと信号線が繋がっていないために通電しなかったり、5A対応を謳っていても使ってみると警告メッセージが表示されたりで、現時点では問題なく利用できるものがないようです。

ケース・フォームファクタ

USBとLANポートの並びが逆になりました。つまりRasPi4用のケースはRasPi5には流用できません。RasPi4と同フォームファクタのRock5Aなどとの差別化なのかは分かりませんが、ユーザとしてはちょっと困りますね。

価格

8GBモデルで比較すると、RasPi5が$80、RasPi4が$75。かなりの割安感があります。RasPi4は世界的な半導体不足で入手困難でしたが、RasPi5は少なくとも現時点では比較的安定して供給され続けています。

RasPi4にあった低価格帯の1GBモデルと2GBモデルは、RasPi5では廃止されています。RasPi5は4GBモデルと8GBモデルのみです。Rock5Aのように16GBモデルの登場が望まれます。


SSDによる高速化

記事が長くなってしまいましたので別の記事に切り出しました。

tips


日本語化

RasPi5の日本語化については新規に記事を作成しました。


高速化後のレビュー

日常用PCとして

ストレージ高速化を行った8GBモデルは、一昔前のデスクトップPC並かそれ以上のパフォーマンスを発揮してくれます。FireFoxやChromiumでウェブ閲覧、Thunderbird等でメールの読み書き、LibreOfficeでドキュメント編集、といったで日常的な利用あれば何の問題もありません。どうしてもMicrosoftのOfficeアプリを使いたい場合は、ブラウザ版のMicrosoft 365が利用できます。

Chromiumでウェブ閲覧

3.5mmヘッドホン端子の他に、HDMI経由でモニター内蔵のスピーカーを鳴らすこともでき、YouTubeなどの動画コンテンツも問題なく閲覧できます。

かな漢字変換も、Google日本語入力のオープンソース版であるMozcのお蔭で、他環境と比べても遜色のないものになっています。

学習用PCとして

プログラミング言語を学習する目的であれば、Linuxデスクトップを利用できるRasPiは最適と言えます。ターミナルが利用できますので、雰囲気としては (brewを使った) Macの開発環境に近いのではないでしょうか。Windowsよりは環境構築は楽だと思います。

Raspberry Pi OSの標準セットアップで、汎用の軽量IDEであるGeanyとPython IDEのThonnyがインストールされます。また、当然のようにpython3インタプリタやC/C++コンパイラのgccも標準的にインストールされています。即、これらの言語の勉強に着手できます。

開発や学習に必要なツールは基本的にaptコマンドでインストールできます。例えば、人気のエディタであるVSCodeは標準ではインストールされませんが、sudo apt update; sudo apt -y install codeでかんたんに導入できます。元々軽量なVSCodeですが、高速化されたRasPi5であればサクサクとストレスなく動作します。

arm64版VSCode

その他に、JetBrains IntelliJ等のIDEは64bit ARM版も提供されています。これらを手動でインストールすれば、高速化されたRasPi上で高機能なIDEを使って快適に開発や学習に取り組むことができます。ただし、メモリは推奨されるRAM容量の8GBギリギリなので、コンパイル等の重いタスクを並列実行していたりするとカクつく場合もあります。

aarch64版 IntelliJ

なお、UnityAndroid IDE 2など、RasPi (64bit ARM版Linux) に対応していない開発環境もあります。これらの言語・ツールを使いたい場合は、他の環境を利用しましょう。

開発用PCとして

仕事用の開発PCとして利用するには、スペックが正直足りません。メモリは16GBは欲しいですし、支障なくマルチタスクをこなすにはCPUコアがもう少し欲しいです。上述のように、RasPiに対応していない開発環境も少なからず存在しています。

費用対効果

子ども向けプログラミング教育用PCという側面から見ると、現状のRasPiをストレスなく使えるようにするには追加費用が必要で、コスパがいいかと言われたら正直微妙です。

  • RasPi5 8GB: 12,000円

  • ケース: 1,500円

  • アクティブクーラー: 750円

  • ACアダプタ: 2,000円

  • Geekworm X1003: 1,500円

  • NVMe SSD 256GB: 6,000円

  • 計24,000円 (送料別)

コスパだけに着目すると、2~3万円出してintel N100・メモリ16GB・500GB SSDのミニPCを買ってきて、DebianかUbuntuを入れた方がいいのではないでしょうか。

しかしこの掌サイズで中身を自分で手に取って触ることができる、プラスチックのケースに入ったちょっとチープなDIY感こそがRasPiならではの「子どものためのコンピュータ」としての存在価値だと感じています。

注意点

技適について

2024年2月現在、RasPi5は技適を取得したようですが技適マークの表示のあるRasPi5は未発売です。技適マークのない無線機器を国内で使うことは電波法に違反しますので、電波暗室・電波暗箱内で利用するか、技適の特例制度を利用する必要があります。今回は後者の技適の特例制度を利用しています。

この無線設備は、電波法に定める技術基準への適合が確認されておらず、法に定める特別な条件の下でのみ使用が認められています。この条件に違反して無線設備を使用することは、法に定める罰則その他の措置の対象となります。


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