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東京の木・多摩産材エコツアーに参加して、分かったこと

この度の能登半島沖地震において被災された皆様、
ならびにそのご家族の皆様に心よりお見舞い申し上げます。

被災地の皆様のご無事と一日も早い復旧と復興を心よりお祈り申し上げます。


こんにちは。CODESIGN TOKYOの福永です。
3月に入り、桜の開花が待ち遠しい季節になりました。
小学生の息子が、6年生を送る会で森山直太朗さんの「さくら」を歌うので、家でもよく歌っています。分かれや出会いの季節なんだと実感します。

今年もnoteを読んでいただいていることに感謝しながら、
「一緒につくるぼくたちのまち」「子どもたちが育つ未来のために」
をテーマに私たちなりの視点で調べ、学び、体験したことを発信していきたいと思います。

昨年から「日本の森林のこと」「東京の木」についての、「cocomoku-子どもたちの未来のために-」シリーズとして記事を更新しています。
前回の記事はこちら

エコツアーで実際に山に登ってみて

東京の木・多摩産材エコツアーに参加し、実際に山を登りました。
山は、狭く急斜面であり、足元には風で折れた木や落ち葉がたくさん落ちていました。また、雨の降った翌日だった為、とても滑りやすく不安定な足場でした。そんな山で森林の多面的機能を発揮させるために森林整備(間伐など)を林業家の方たちが行っている現状を知りました。

森の現状、多摩産材の現状を知る

私たちが登った東京都の檜原村(ひのはらむら)グリーンサンタの森という山の森の現状を教えていただきました。
森林の成長に応じて、一部の木を伐採する間伐とい作業があります。そして、私たちが登った山は針葉樹の間伐は行っていますが、広葉樹の間伐は30年ほどしていないそうです。
その理由は、広葉樹の間伐を行わないと、どのような状況になるのか目で見て分かるようにするためです。

今まで私は、
木材として利用するものはスギやヒノキの針葉樹です。なので、スギやヒノキは苗木を植え育て、間伐などを行い木材になるまで管理する。
そして、広葉樹は針葉樹と違い切っても萌芽するので、枝打ちや間伐せずに自然のまま手を付けないと思っていました。
しかし今回、広葉樹も間伐をしていることを知りました。

広葉樹の間伐を行わないと、どのようになるのか

広葉樹も間伐を行わないと、いくつもの木の葉っぱがいっぱいになり、日が森林の中まで入らず、地面まで光が届きません。また、下草がたくさん生えるとそこに動物たちが隠れ、土が固まらず土砂崩れのような状態になり、いずれは山が崩れてしまうそうです。
木材として利用しない広葉樹も森林の多面的機能を発揮するためには、人の手をかけないといけないことが分かりました。

森林の多面的機能
3.土砂災害防止機能/土壌保全機能:樹木が根を張ることによって土砂の崩壊を防ぐ

林野丁 HP 森林の有する多面的機能より

多摩産材になるまでの現状

次に、実際に1本1本の木を見ながら、多摩産材の木材にするための選定方法や、作業する際の具体的な話を聞かせてもらいました。

  • 日当たり、傾斜、栄養土で太さが変わってくること

  • 台風や雪で木が二股になり、二股になったら売れないこと

  • 木の上の部分は細くて売れないこと

  • 木の高さが25メートルほどあっても、16メートル売れればよいこと

  • 木の上の方は売らないので、枝打ちしなくてもよいこと

  • 作業中に、斜めになっている木が倒れてくる危険性があること

  • 夏はとても暑く、塩を舐めながら作業すること

  • 暗くなると作業できないので、朝早くから行うこと

木一本一本何年もかけて丁寧に作業し、管理し育てていても、自然現象で二股になってしまった時点で売れないという厳しい現状を知りました。

山の土はミミズが柔らかくしてくれている

登った山道は前日に雨が降った後なので、すこしぬかるんでいました。ぬかるむと歩きずらく、移動や作業が困難になると感じました。
しかし、山に雨が降るのはとても大切なことです。
その理由は、森林には「水源涵養機能」があるからです。

水源涵養機能とは…
水資源の貯留、洪水の緩和、水質の浄化といった機能からなり、雨水の川への流出量を平準化(へいじゅんか) ※したり、あるいは、おいしい水を作り出すといった森林の働きです。
※平らにすること。でこぼこをなくすこと。

林野庁HP「水を育む森林のはなし」より

私たちが登った山にはミミズがいるそうです。幼い頃、「ミミズはきれいな所にいる」という話を聞いたことがあります。山がきれいな証拠だと思いました。そのミミズは、土を柔らかくし、土が水を吸収しやすいようにしてくれているそうです。ぬかるんで移動が大変でしたが、ミミズが柔らかくしてくれた土にたくさんの水が吸収されることで、いつかおいしい水が作り出されると思うと、山に感謝することができました。

原木市場(げんぼくいちば)へ

山を降り、車に乗って原木市場へ移動しました。建物があり、その中でお昼休憩をしたあと、原木市場の見学をしました。
正式名称は、原木市売市場(げんぼくいちうりしじょう)と言います。
私たちが訪れた日は市場が開かれた数日後だったこともあり、木の本数がいつもより少ないとの事でした。それでも積み重なっているいくつもの木の山を見ると、迫力がすごかったです。

原木市場とは、何をする場所なのか

市場という言葉が入っているので、木を売る場所なのは想像できました。
では、実際どんなことを行っているのでしょうか。

原木市場で主に行っている事

  1. 伐った木を運んでくる

  2. 伐ってきた山林、樹種、会社、用途ごとによって仕分ける

  3. 仕分けたものを販売

三角のピラミッド型につまれている原木のかたまりを一つの山といいます。その山は、太さで分かれており、市場内の奥側が細いもので手前にどんどん太くなるように並べられています。
並べた後の原木の管理は、どこの会社のものかわかるように伝票を使います。

市場の流れとしては

  1. 一回のせりの前に、約700立方メートルの量の原木がここに運びこまれる

  2. 30社ほどの製材所がせりを行う

  3. せりが終わり次第、原木をそれぞれもって帰る

市場が終わっても売れ残りがあることはないそうです。基本的に1山で販売します。太いものは、1~3本で売ることができるそうです。
1~3本で売る場合、1本の単価ではなく㎥(立米:りゅうべい)です。
㎥の単価は、1m×1m×1mの立方体の体積であり、
例えば、直径30㎝長さ4mの木の場合は、0.3×0.3×4という計算になります。

原木を実際に近くで見ると分かる事

原木の山が近くで見れる場所で見学させてもらいました。
まずは、スギです。スギは樹液が溜まって真ん中がとても赤く見えます。これを赤身(あかみ)というそうです。周りの白い部分だけ欲しいという業者もおり、白い部分は白太(しらた)と言います。

せりで選ばれやすい原木は

  • 伐った小口ができるだけ正円なもの
    効率よく板や柱がとれるため

  • 節が外に出ていないもの
    無節・節なし木材がとれるため

  • あまり赤みが黒くないもの
    伐り旬(きりしゅん:あまり水を吸っていない時期)の木材の方がよいため

そのような原木を買うために、せりが行われる何日か前に製材所の方は下見にきます。デザイナーの方やプランナーの方はせりで原木を買う権利がないので、製材所の方と一緒に下見に来た段階で、「この原木を買ってほしい」とお願いし、購入するといった流れになります。

原木の小口を見て分かる事

写真の左側の原木は、小口を見ると枝があった形跡があり、外側に枝が出ていないので、枝打ちされたことが分かります
年輪をきれいにするためには、色々な方角から木に太陽光が当たるのが理想です。したがって、間伐はとても重要な事が分かります。

右側の写真の「多」の文字は、多摩産材マークです。また、58と書かれた紙は、購入した人が誰かわかるようにするためのものです。緑色の数字の8は、サイズを表しています。

「多摩産材」・「認証材」とは
東京都内の多摩地域で生育し、生産された木材を一般的に「多摩産材」と呼びます。
そのうち、多摩地域の適正に管理された森林から生産されたことが「多摩産材認証協議会」によって産地証明されたものが「認証材」となります。
「認証材」は、森林所有者から製材業者までの流通過程が登録した事業者によって行われるため、多摩産材の産地が確実に証明されます。

東京都森林事務局HP 東京の木多摩産材より

現状を知るためには話を聞く必要がある

林業の方がどのような仕事をしているかは、事前に調べることができます。しかし、多摩産材になるまでの木の現状や広葉樹の間伐の話は、私は知りませんでした。原木の管理方法や、せりで選ばれやすいもの、小口に多摩産材のマークが刻印されていることも話を聞いて知ることができました。

他にも、リアルな現場での話や、製材所の話もあるので、続きの記事をまた更新したいと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。

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