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薬剤師さん

「たくさん待たされて、大変でしたね」

白衣を羽織った薬剤師さんが言った。

「そうなんです、けっこう待たされまして」

ぼくは答えた後に、おや、と思った。

・・・はて。
どうしてこの薬剤師さんは
ぼくが一時間以上も診察を待たされたことを
知っているのだろう。

・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・

ぼくは待つのが嫌いではない。

kindleがあれば時間なんて過ぎ去るし
目を瞑って瞑想(妄想)に耽るのもいい。

しかし、予約して病院に行ったはずなのに
一時間以上も待たされるのはどうなのだろう。
病院のシステム的に破綻していないだろうか。
もうちょっとなんとかならないだろうか、と
病院で待たされるたびに思ってしまう。

そんな思いを抱えながら薬局に入ると
会計時薬剤師さんが気づかってくれた。

「たくさん待たされて、大変でしたね。
最新のシステムを導入した病院は早いのですが
この辺の病院はどこも同じくらいかかるんです」

へえ、そうなのか。早い病院も存在するんだね。
っていうか、この薬剤師さんは、どうしてまた
親切にねぎらいの言葉をかけてくれるんだろう。
一時間以上待たされたのを知っているんだろう。

不思議だ。
でもまあ、悪い気はしない。
この薬剤師さんからは親しみを感じる。

そういえば、ここの薬局は以前来た時にも
若い女性の薬剤師さんが世間話をしてきたな。

悪い気はしないけど、どうしてだろう。
よくあるコンビニの、レジ係みたいに
「はいお薬です。お大事にどうぞ」で
即終了が一般的なんじゃなかったっけ。

非合理的だ。
それだけにおもしろい。
もしかしていい薬局、いい薬剤師さんなのかな。

・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・

「ふぅん。病院が処方箋を出したら
自動的に薬局と情報共有するシステム…とか?」

仕事が終わって合流した嫁ちゃんに話してみると
なるほど。確かにありそうなシステムだ。
でも、待ち時間の情報までは伝わらないだろう。

これ以上は話が伸びず、別の話題にシフトした。

まあ、無理に結論を出すものでもない。
それにぼくは被害を被ったわけでもない。
ただ、薬剤師さんの優しさを受けただけだ。

ぼくが考えるのは
こんなごちゃごちゃしたことではなくて
「ありがたい」と思うことなのかもしれない。

ありがとう。優しい薬剤師さん。

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