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なんか変なフェロモン的なもの

フルーツ大福なるものを一度は食べたいぞと
私と嫁は街へ繰り出した。徒歩で。

横断歩道で信号待ちをしている私たちに
髪を二つ縛りにした小学校低学年の女の子が
両手でやさしくなにかを包み込んだまま
トテトテと近寄ってくる。

嫁の前に来るなりニコっと笑顔で両手を開くと
そこには小さな可愛らしい虫が一匹。

どうやら、自分で捕まえたものを
誰かに見せたくなって近づいてきたようだ。

・・・でも、なんで初対面の嫁に見せにくる?

「嫁ちゃんさぁ、前々から思ってたけど
なんか変なフェロモン的なもの出してない?」

謎の少女と手を振ってバイバイしてすぐに
嫁に問いかける私。
この一件だけでなく、嫁は初対面の人から
かなりいろいろと声をかけられる。

・旅行先でお年寄りから道を聞かれる
・駅で待ち時間に妙齢の女性から尋ねられる
・散歩中肝っ玉母さん的な人から世間話をされる

私が一緒に居るときでもたくさんあるし
嫁が一人で行動してるときはもっとある。
話を聞くとウォーターサーバーやら
ソーラーパネルなんかの呼び込み営業なんかも
当たり前のように捕まえられてしまうらしい。

世の中にはたしかに、声をかけやすい人がいる。
嫁もきっとそのタイプなのであろう。

でも、声をかけやすいタイプって何だ?
見た目が優しそうってことなのだろうか?
それともやはりフェロモン的なものなのか?

初対面の人から声を掛けられるのを横目で見る度
(どうしてなんだろう?)と思っていたが
ある日ふと気が付いた。
嫁はいつも笑顔なのである。

ニューヨークのデパートでは過去に
こんな広告を出して話題になったようだ。

元手がいらない、しかも利益は莫大。
与えても減らず与えられた人は豊かに。
一瞬の間見せればその記憶は永久に続く。
どんな金持ちもこれなしでは暮らせない。
どんな貧乏人もこれによって豊かになる。
家庭に幸福を、商売に善意をもたらす
友情の合言葉。
疲れた人に休養を、失意の人に光明を
悲しむ人に太陽を、悩める人に解毒を
笑顔とは、買うことも強要することも
借りることも盗むこともできない。
無償で与えてはじめて値打ちが出る。


なるほど。
変なフェロモンどころではなかった。
どうやら笑顔を標準装備している人は
相当素晴らしい存在らしい。


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